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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
三話「外れた者の生きる道」

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 周介が発電を続けて約一時間程度して、組織全体の電灯が少しずつではあるが光を放ち始めていた。

 その光は検査を終え、各計器のチェックを終えてから拠点内に安定した電力が供給され始めたことを示している。


 今まで薄暗かった廊下も、暗かったこの部屋も光に満ちて明るくなっていく。


「うわ、明るい。ってかこんな部屋だったんだ」


 今まで暗い部屋や暗い廊下しか見ていなかった瞳からすれば、こうして明るくなった拠点内というのは非常に違和感を覚えるものだったのだろう。


 周介も今まで薄暗いところしか見ていなかったために、こうして明るい場所というのを見るのは実に久しぶりだった。


「よかったよかった。ちゃんと発電できてるみたいだな」


「これでずっとこのままならいいけど。充電とかにも時間かかるんでしょ?」


「んー……どれくらいかかるかっていうのはわからないな。ドクに詳しく話しを聞きたいけど……さっき連行されたばっかりだし」


 テンションを上げて無茶苦茶をしようとしていたドクはチームメイトによって攫われたばかりだ。


 今頃どんな扱いをしているか分かったものではない。少なくともあの様子を見る限りまともな扱いをされているとは思えなかったが。


「検査は無事終了とみていいのか、それともまだやってたほうがいいのか、そのあたりわかんないな。電話してみるか?」


「その必要はないよ!」


「うわ!出た!」


 唐突に二人の前に現れたドクに、周介と瞳は目を見開いて驚いてしまっていた。いつの間にこの場所にやってきたのか不思議なところだが、それよりも不思議なのはどうやって先ほどの状態から抜け出したのかというところである。


 単純に解放されたのかと思ったが、どうやらそういうわけでもないらしい。ドクがもつ無線の向こう側から怒号のような声が聞こえてきている。


 おそらく逃げてきたのだろう。


「ドク、逃げてきたんですか?」


「当たり前じゃないか。あの程度で僕を捕まえられると思っているのであれば片腹痛い!それに僕にはやらなきゃいけないことが山積みでね。いつまでも芋虫にされているわけにはいかないんだよ」


 そう言いながらドクは机の下に隠れるように身をかがめて潜り込む。


「申し訳ないんだけど、もし誰か来たら僕はいないって言ってくれないかな?やらなきゃいけないことの前にまた捕まるわけにはいかないんだ」


「ドク、その前にこれっていつまで回してればいいんですか?まさかずっととか言わないですよね?」


「そのモニターで蓄電設備の充電率がどれくらい進んでいるかがわかるはずだよ。一応君の能力を考慮してそういうのも準備してあるからね。今何パーセントくらい?」


「えっと……二パーセントですね」


「それならもうちょっと頑張ってくれるかな?十パーセントくらいになれば問題なく電力の供給はできると思うから」


「あの、一時間やって二パーセントってことはあと四時間やらなきゃいけないってことですか?」


 単純計算ならそうなるのだろうが、ドクは首を振ってそれを否定した。もっとも机の下にいるために周介からは見えていないのだが。


「たぶん、こうして全体的に電気がついているってことは余剰電力がかなり生まれてるっていう状態にまでなったってことだ。今まで別の施設を起動するために必要だった動力を別のところに回せるだけの余裕が生まれていることになる。つまり充電速度もその分上がるはずだ。大まかだけど、あともう一時間充電すれば問題なく十パーセントまで充電できるはずだよ」


「風見!ここか!?」


 勢いよくドアが開いて先ほどドクを縛り上げた男の一人が入ってくる。ちょうど瞳の影になって机の下にいるドクは見えていないようだった。


「二人ともすまない!風見の馬鹿は来ていないか!?」


 鬼気迫る声に、ドクは周介と瞳の足に縋り付くように隠れている。どうしたものだろうかと思いながら周介は瞳と顔を見合わせる。


「すいません、ドクターはここには来ていませんよ」


「そうか分かった。ありがとう!」


 ドクがこの場にいないということを知った男は再びドクを探すべく走り出していった。この場にいるということがわかったらまた先ほどと同じような目に遭わされていたのだろう。


「助かった……よし、今のうちだ。二人ともありがとう。この借りは今度返すよ」


「ドクター、別にあたしたちが口出しすることじゃないかもしれないですけど、他の人の意見もちゃんと聞かないとダメですよ?」


「わかっているよ、それはわかっているけどこの湧き上がるパトスを抑えきれないのさ!やらずにはいられないんだよ!思いついてしまったんだもの!仕方がないじゃあないか!この熱い思いはだれにも止められないんだ!」


 そう言いながらドクは走り出し、扉を開けて外に出ようとした瞬間、通りがかった別のチームメイトに見つかってしまう。


 そして再び始まった追いかけっこを、周介と瞳は呆れた顔をしながら眺めていた。


 あぁはなるまいと、強く思いながら。


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