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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
三話「外れた者の生きる道」
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「風見さん、そろそろ点呼始めましょう」


「了解、それじゃあ君たちも一緒に来てくれるかな?紹介だけはしちゃうから。まぁぶっちゃけほとんどの人は君のことを知ってるけどね」


 発電の要である周介の存在が、その関係工事の人間に知られているというのは別に不思議なことではなかった。


 これがただの一般人たちならまだしも、これがすべて小太刀部隊の、それもドクのチームの人間だというのならばなおさらだった。


 いつものように高いテンションである事ない事いろいろと語ったのだろう。あまり悪い気はしないが、自分の知らないところで自分の話がされるというのは周介としても少しむず痒い気分でもあった。


「さて、それでは点呼を始めよう。おはようございます。これより電力系統切替工事の点呼を始めます。それでは各班班長、報告をお願いします」


 ドクが話し始めると同時に、それぞれの班の班長が何人いて、今日の作業で何をやるのかを話し始める。


 かなりの数がいるためか、その分班長も多く、すべての班の説明が終わるまで五分ほどを要していた。


「よしよし、全員作業内容を理解してくれているようで何よりだ。さて、今日は現場見学およびこれからこの電力系統の中核を担ってもらうチームの二人に来てもらった。近くでうろうろすることもあるかもしれないが、生暖かい目で見守ってやってほしい。二人とも、何か話すかい?」


 いきなり何を話すというのか、少し迷ったが、その場にいた全員の視線が周介たちに集まったことで何も言わないでいるという選択肢が最初からなくなっているような感覚すらあった。


 周介はとりあえず代表して何か話すことにするが、はっきり言って口が回るようなタイプではないため、少しだけ不安もあった。


「えと、ご紹介に与りました、小太刀部隊の百枝周介です。今回現場の方を見学させていただきます。邪魔にならないようにするので、よろしくお願いします」


 周介が頭を下げると、野太い声が周介たちを包む。少なくとも歓迎はされているのだろうか。よくわからない中、周介はとりあえず安堵の息を吐いていた。


「さぁ点呼を続けよう。話した通り、新しい電力系統の接続工事はつい先日終了している、この後は系統の最終相確認と各地線の確認をしてから切替工事に移行するけれど、各配電系統への配置と連絡体制を密にとってほしい。電力系の検電は確実に。活線には絶対に触らないように、各員保護具の着用も忘れないようにね。今日いらっしゃっているメーカーさんも、よろしくお願いします」


 メーカーというのが、先に言っていた一般人なのだろうかと、周介はドクが視線を向けた方角を確認するが、そこにいる誰が一般人なのかを確認することはできなかった。


 どこの誰なのかがわかればその人物の前では能力を使わないようにすることもできるのだが、この場でそれは難しそうだった。


「各班の班長は無線機の動作チェックを定期的に行ってほしい。特に、入り口を超えて向こう側で作業するチームは無線が繋がりにくくなることもある。場合によっては有線の電話も用意してあるからそれを使ってほしい。ここまで無事故でやってきた、最後まで事故のないように安全に作業しよう。それではご安全に!」


 ご安全にという全員の唱和に、周介たちは一瞬驚き、その唱和と同時に作業員全員が一気に動き出すのを見て驚いていた。


 先ほどのが開始の合図のようなものなのだろう。周介はとりあえずドクの近くに居ようとドクの近くに駆け寄っていた。


「びっくりしただろう?こういう場に来たのは初めてだろうからね」


「えぇ、びっくりしましたけど、何よりびっくりしたのはうちの組織にこれだけの人がいたってことですよ……」


「はは、そうかもしれないね。安形君はそこまで驚きはしないんじゃないかな?」


「あたしは物を運んだりしてたから、別に驚きはしないです。何人か見たことある人いるし」


「にしても、まさかこんなに人がいるとは……」


 小太刀部隊という部隊が、あくまで後方支援を行うチームであるということは理解していたがこれほどまでの人数がいるとは思ってもみなかったのである。


 何をする人たちなのか、先ほど班長達が報告をしていたが全くといっていいほどに理解できない言葉だった。


 専門用語が多すぎるというのも原因の一つだが、単純に気圧されたというのも理由の一つかもしれない。


「こういうモノづくりのチームはすごい人数がいるんだよ。もともと戦闘に使えない能力で現場に出られる能力っていうのも結構少なくてね、裏方の人間がほとんどさ。そういう中でこういうモノづくりが好きな人が集まってできたのが僕が所属してるチームなんだ。日夜能力でいろんなものを作ってるんだよ」


 本来重機や工具などを使わなければできないような作業が、能力を使えば簡単にできてしまう。それこそ既製品を材料に全く違うものを作り上げることだってできるのだろう。


 そうやって物を作るということが好きな人間が集まってできたのがドクの所属するチームなのだ。


「君の装備も、安形君の人形も僕らが作ってるんだよ。その中でのプロジェクトの一つが、この能力発電でもある」


 能力発電。火力でも水力でも風力でもない。人の力による発電。人力発電といわないあたりがドクらしいというべきだろうか。

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