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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
三話「外れた者の生きる道」
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 ドクに案内されて到着したのは、校舎の一角、清掃用具や学校で使う備品などが置いてある倉庫だった。


 そしてその一角にあるロッカーに近づくと、ドクは何やらロッカーの底をいじり始める。すると、ロッカーの中に入っていた清掃用具が壁の奥にしまわれていき、ロッカーの底が開いて、中に入れるようになっていた。


 そのロッカーの底は真っ暗でどこに通じているのかもわからない。寮の中にあった入り口と似たような状態になっていた。


「それじゃあ行こうか。寮のやつと同じように落ちるやつだから、準備ができたら降りてきてね」


 そう言ってドクはロッカーの中に吸い込まれるようにその中へと落ちていく。どうしてそんなに簡単に落ちることができるのか周介には不思議でしょうがなかった。


「こ、今度こそ自分のタイミングで行くからな。押さないでくれよ?」


「……フリっぽく言ってもあたしは押さないからね?」


「押さなくていいから!よし……よし……せいや!」


 呼吸とタイミングを整えてから周介は眼下に存在する闇に落ちていく。明かりも何もない通路の中を落下していく中、周介の体は内臓がひっくり返るような感覚を覚えながら落下し続けていく。


 そして緩やかな傾斜がついていき、周介の体を地下へと運んでいく。そして唐突に暗闇がなくなり、クッションに叩きつけられた。


 落下し、速度が上がった勢いそのままに叩きつけられた周介はクッションの上を何回もバウンドし先ほどと同じくクッションの壁に激突する。


 幸いにして怪我はしなかったが、これは下手すれば怪我をするのではないかと構造の欠陥について指摘したいところだった。


「っつー……!こんなの繰り返してたらいつか怪我すぐへあ!?」


「痛!あ、ごめん」


 壁にへばりついていた周介に激突するような形で瞳が遅れてやってきたことで、周介は壁と瞳に完全につぶされるような形になってしまった。


 瞳は上手く受け身をとっていたために速度もある程度落ちていたが、それでも壁に押し潰された周介の痛みは大きい。


「ごめん、まさかここまで勢い強いとは思わなかった」


「俺もだよ……こっちは寮の方と違って勢いが強いっていうか……速度を緩めないで飛ばされた感じだ」


「普段使わないからかもね。ほら、大丈夫?」


「ちょっと心折れそう。慰めてくれ」


「はいはい、さっさと立って。ドクターももう行ってるみたいだから、追いつかないと」


「チームメイトが優しくしてくれなくてつらい」


 周介は瞳に手を引かれて渋々立ち上がり、クッションの部屋を出てドクを探すことにした。


 だがドクを探すという手間は省かれた。何せ扉を超えた向こう側ではかなり大勢の人間がたむろしており、その人物たちにいろいろと説明をしているドクの姿がすぐに見つけられたからである。


 おそらくこれから始まる切り替え作業における手順を説明しているのだろう。いつの間にか付けたヘルメットと、普段の白衣とは違う作業着のようなものを着込んだドクは今までのそれとは印象が大きく違っていた。


「あ、風見さん!子供たち来ましたよ」


「お、来た来た。二人とも、そこにあるヘルメットを着けてくれるかい?ここから先は作業の時間だ。万が一があると怖いからね」


 ドクが指さす先には机の上にいくつも置かれたヘルメットがある。ここが学校である以前に、一種の工事現場のようなものなのだという意識が強くなっていた。


「ヘルメットとか懐かしいな。着けるのいつぶりだろ」


「着けたことあんの?」


「うちの地元だと、小学生は自転車乗るときはかぶってたな。いつの間にかかぶらなくなったけど」


「何それ。本格的なスポーツ用の自転車でってこと?」


「いやいや、普通のママチャリとかで。東京の方じゃないのか?」


「ない。ってか自転車乗るだけでヘルメットって……」


「お?田舎バカにしてんのか?お?」


「はいはい君達、あんまりじゃれあわないでくれるかい?これから仕事なんだから。はい一応手袋。あんまりそのあたりのものには触らないようにね。あとこれもどうぞ」


 そう言ってドクが渡してきたのは手袋とヘルメットに取り付ける用のヘッドライトだった。


 例によって回転する機構が取り付けてあり、周介の能力によって発電するものであるということは容易に想像できた。


 だがこれを使うということは能力を使うということでもある。本当にそれをしてもいいのだろうかと、目の前にいる作業員らしき人々を見て迷ってしまう。


「あの、ドク。ここに俺らがいても本当にいいんですか?あの人たち、普通に仕事に来てるんですよね?それじゃあこれは使えないんじゃ……」


「あぁ大丈夫。基本的に明るくしてるつもりだし、彼らのほとんどは能力者だ。小太刀部隊の人だよ」


「え?あんなに小太刀部隊っていっぱいいたんですか?」


「正確に言えば僕と一緒のチームの人がほとんどなんだけどね。いやぁこれだけ増えるとなかなか壮観だろう?」


 まさかドクと同じチームの人間がこれほどの人数がいたという事実に周介は純粋に驚いてしまっていた。


 だが同時に、中には能力を持たない一般人もいるという事実が少し気がかりだった。


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