0076
十五時になって、周介たちは食堂に集まってから寮内の説明を受けていた。
入寮するための最低限の知識やマナー、そして食事や入浴の時間など、割と事細かに決まっていたが、それ以外に特にこれといった制限はなかった。
一つあるとすれば門限が決まっていることだろうか。夜二十時までに寮に戻ってくること。これは絶対のルールとして厳命された。
厳しすぎるのではないかと思うこともあるかもしれないが、中学から上がったばかりの学生からすれば二十時でも遅いほどだ。もう少し早くても良いだろうという保護者の意見もあったらしい。
子供を心配する親としては当然の反応だと、説明をしている教師は言っていたが、ここで暮らす子供本人達からすればもう少し遊びたい、あるいは部活をしていたいという気持ちがないわけでもなかった。
後は共有のものは大切に使うこと、布団などのシーツの取り換え方、夜の点呼など、細かくはあるが最低限度の約束事を取り付けた時点でその場は解散になった。
短い説明で、三十分もしないうちに説明のガイダンスは終了していた。ほとんどの生徒たちが自分の部屋に戻っていく中、周介と手越はその場にいた瞳と、もう一人の女子生徒の方に歩み寄る。
「よっす。高校の寮ってやっぱ中学の方と違うか?」
「細部はね。でも根本は同じっぽい。てか、手越と一緒にいたってことは、ひょっとしてあんたら同室?」
「おう、お前が百枝と組んでるとはな、ちょっと驚きだ」
「なんで、そんなに変?」
「変じゃねえよ。まぁその辺にしておいて、桐谷、お前ひょっとして安形と同室か?」
「違う。あたし一人部屋だった」
「マジか!いいなぁ!うらやましいぞ!」
パンフレットにもあったが、この建物の構造上、一人部屋というものがいくつか存在する。具体的には建物の端の部屋だ。
その部屋に住むことになったという女子生徒を見て、周介は困ったような顔をする。そしてそんな周介の様子を察したからか、手越は笑いながら「悪い悪い」とつぶやいてから、周りにほかの生徒がいないことを確認してから周介と女子生徒の間に立つ。
「百枝、こいつ俺のチームメイトの桐谷加奈だ。桐谷、こいつ俺の同室で安形のチームメイトな」
「えと、初めまして。百枝周介だ。そっちの安形とチーム組んでる」
「初めまして。私は桐谷加奈。そっちの手越とチームで、コールサインはアイヴィー04。よろしく百枝君。百枝君はまだコールサインはないのね」
「まだチーム名すら決まってなくてな。どうする安形、なんか決めるか?」
「二人しかいないチームで名前もないでしょ。コンビって感じだし。適当に思いついたらそれにすればいいんじゃん?」
また適当なことをと周介は呆れるが、実際他のチームに何かしらの意味があるのであれば、周介のチームにも何かしらの意味ができてからにしたほうが良いのではないかと思える。
名前というのは重要だ。ドクからの受け売りだが、周介はそれを良く理解していた。
「俺らの他に同類はいないのか?四人?」
「確認できたのは四人。あとは先輩とかだけ。いいんじゃない?このくらいの人数の方が」
能力者の割合がそこまで高くはないのは知っていたが、この学校に通う中で寮に入る人間で能力者が四人しかいないというのは周介からすると少し驚きだった。
もう少し多いと思っていたのだ。
もっと多くの人間が能力者としてこの学校にやってきて、能力者として過ごすと思っていただけに、少しだけ意外だった。
「意外、って顔してる」
「え?そうか?……そうだな、そうかも」
瞳に言われて自分がそんな顔をしていたことに気付き、なおかつそう思っていたということを自覚したからか、周介は自分たち以外誰もいない食堂を見渡す。
「ま、あくまで俺らの年代で、なおかつ寮に住む奴ってだけだからな。この学校に普通に通える奴の中にも能力者がいるってことはあり得るし」
「そういうもんなのか。なんかもっと同世代の能力者っているもんだと思ってた」
「そりゃいるぞ?俺ら以外でっていうと、誰だ?」
「白部さんとかは私たちと同年代ね。彼女の場合、外に出るようなタイプの能力じゃないから私たちと接点薄いけど」
他にも能力者はいるが、どうやら寮に入らなければいけないということではないらしい。あくまで能力を持ったものがこの学校に通うというだけのようだった。
周介の場合は家が遠いからこの寮に入ったが、もしかしたら他の三人も同様なのかもしれないと周介は考えていた。
「ちなみにさ、三人の出身ってどこなんだ?寮に入ってるってことは、遠いのか?」
「あぁ、俺は群馬出身。グンマーだぜグンマー」
「私は栃木。日光の近く」
「……なに、いわなきゃだめなのこのながれ」
「別にいいけど、ちなみに俺ギリ愛知な」
周介の実家の場所が愛知にあると知っても瞳は特に気にするようなことはないようだった。
「……あたしは千葉よ」
関東近辺にまとまった中で、周介が最も遠くから来たことになる。だが全員割と遠くからきているということがわかって周介は少しだけ安心していた。




