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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
二話「手を取り合うその意味を」
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「お、来た来た。遅いぞ」


「悪い悪い。迷った!」


 周介は拠点から離脱した後、集合場所の広場に戻ってきていた。


 非日常から、日常に戻ってきた周介は、その場で待っていた友人たちの顔を見てほっとしていた。


 約束の時間から数分経過してしまっている。思ったよりも出口となっている場所からこの場所が遠かったのが原因の一つである。


 途中携帯で連絡を取り合いながら動いていたとはいえ、約束の時間に遅れてしまったのは素直に申し訳ないと思っていた。


「お前実はメイド喫茶とか行ってただろ?わかるんだぞ?お前から女子のにおいがする!女子と戯れていた匂いがする!」


「マジか!なんだよお前も行ってたのかよ。一緒に行けば割り勘だったのに。どこ行ったんだ?どこ行ってたんだ?俺マーメイドってところ行ってた」


「違うから!俺メイドカフェ行ってたわけじゃないから!大体女子と戯れてた匂いってなんだよ」


「わからんのか。お前の体から女子女子してる匂いがするんだよ。俺ら男子からは決して放たれることのないフローラルでマイルドな女子女子してる感じのにおいがな……!白状しろ!いったいどこで女子と戯れてきた!」


 こいつの嗅覚は一体どうなっているのだと、周介は素直に驚いていた。戯れていたというか背負っていたのだが、そんなことまでわかるのかと素直に感心してしまっていた。


 本当に女子のにおいなどしているのだろうかと、周介は自分の制服を嗅ぐが、そんなものがわかるほど周介は意識していなかった。


「しかもこの香りは、かなり密着していたな……?それも抱き合うレベルだ……」


「なに!?お前一体どこの店に行ってたんだよ!俺の行ったところお触り厳禁だったんだぞ!写真は一緒に撮ったけど!」


「おいおい!抱き合うとかやばいだろ!お前中学生の癖にそんな店に行ってたのか!うらやまけしからん!」


「違うから!神に誓ってそんな店に行ってたわけじゃないから!ってかお前らなんでそんな食いつくんだよ!匂いなんかでそんなことわかるか!」


「いや、俺の嗅覚は確かだ。なんならもう少し当ててやろうか?お前があっていた女子……この尻の青そうな感じ…そして俺が割とよく嗅いでいる香り…おそらく、同世代だろう?」


 この嗅覚の正確さ。一体どういうことなのかと周介は本気で疑問符を浮かべていた。こいつ実は能力者なのではないかと思ってしまったほどだ。


 目が光っていないことから能力などが発動しているわけではないようだが、まさかにおいだけで同世代であると見抜くというのは恐ろしい嗅覚である。その才能がいったいどこで活かされるのかどうかはさておいて。


「マジか!お前中学生でメイドカフェで働くって違法だぞ!違法メイドカフェか!脱法メイドカフェに行ってきたのか!どこでそんなものを見つけてきた!?教えてくださいお願いします!」


「教えられたところで時間ないから。そろそろ行こうぜ。早めにいかないとバスに置いていかれるぞ?」


「逃がすかよクソが!この話は移動しながらするぞ。お前の口から店名と遊んだ女の子の名前を聞くまでは逃がさないからな」


「お前のその情熱一体どこから来てるんだよ。っていうかいくら使った?」


「二万ほど」


「マジで!?お前メイドカフェに二万つぎ込んだの!?バカだ!刀以上の馬鹿がいたぞ!」


「おい!人を馬鹿扱いすんな!いくら俺でもメイドカフェにはいかねえよ!ってか二万も使うか!」


「この刀バカと一緒にすんな!メイドに金を使うのは男の務めなんだよ!二万がなんだ!お年玉が吹っ飛んだだけじゃねえか!」


「どっちもどっちだと思うな。っていうか頼むから電車の中ではその声のトーンでしゃべるなよ?迷惑だから」


 刀の友人とメイドの友人が騒ぐ中、それらを見ている周介たちはどうしたものかなと悩んでいた。


「で、どうなの?実際メイドカフェ行ったの?」


「行ってねえよ。ただ親戚にはあった。同い年の。そういう意味ではこいつの嗅覚当たってるんだよ。やばいなこいつ」


「あぁ、やばいな。こいつそのうち犯罪とかやらかすんじゃないのか?」


 友人ということで少しくらいは否定してやりたいところなのだが、あいにくと否定できる材料が一切ないこの状況に、周介たちは困ってしまっていた。


 女子の匂いをかぎ分け、なおかつ刀を持っている。明らかに何かをやらかしそうな特性ばかりではないかと。


「とりあえず行こうぜ。こいつら黙らせるぞ」


「オッケー。さすがに地元まで帰るのはだるいからな。これ絶対他のやつらに笑われるよ」


「もうすでに一回笑われてるからな。他に同類がいることを祈ろうぜ」


 刀を携えた友人を見て、他の友人たちがいったい何を思うのかは、もはや言うまでもないことだろう。

 周介たちはメイドと刀について熱く語っている友人を黙らせるべく、軽く拳をならせていた。


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