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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
二話「手を取り合うその意味を」
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周介の中学校が卒業旅行に行く当日、周介も当然のようにその旅行に向かっていた。


旅行といってもそのあたりは中学が催すものだ。貸し切りバスを使って遊園地などに行く程度のものなのだが、周介たちの中学の場合は東京への観光旅行ということになっていた。


東京に行くということを中学生である周介たちはしない。田舎に住んでいる周介たちからすればこのような機会でもない限り東京に行くことは少ない。


といっても、周介の場合つい最近東京に行ったのだが。


同級生たちが東京に向かうということもあってどこに行こうかなど話し合う中、当然周介もどこに行きたいかを話している。


「スカイツリーは鉄板だろ、あと東京タワーもみたいよな」


「自由行動の時間短いぞ?そんなに行けるのか?」


「東京の電車一、二分に一回つくらしいし大丈夫じゃん?」


「何それやばくね。常に電車走ってるレベルだな」


「あとあれだ、雷門、あとはなんだ?東京での名所」


「秋葉原!行きたい!」


「お前絶対メイドカフェ行くつもりだろ、ぼったくられんぞ?ちょっと待てよ、えっと、浅草と秋葉原ってどのくらい離れてんだ……?」


東京駅についてそこからの自由行動のため、クラスメイトは携帯を使って移動ルートなどを調べ始める。


東京駅の到着が大体十時ごろ。そこからの自由行動が十六時までの六時間。その間に回りきることができるのかという問題もあるのだ。


調べたり話したりしている中で、すでに持ってきている菓子などを開けている者もいる。


バスの中に食べ物のにおいが漂う中、周介たちを乗せたバスは順調に高速道路を走り続けている。


そして一瞬、周介はあの時のことを思い出していた。高速道路を自転車で全力疾走した時のことを。


あまり良い思い出ではない。当然悪い思い出に部類するものなのだが一度自分で通った道というのはなぜこうも強く記憶に残るのか。周介は自分が通った道を見て目を細めながらすぐに友人たちとの話に戻っていた。


「お土産とかどこで買うよ?途中で買いすぎると邪魔だし」


「東京駅じゃダメか?たぶんあるだろそういう場所」


「えー。でもそういうのってそれぞれの場所で買いたくないか?スカイツリーだったらスカイツリー用のお土産とかあるかもしれないぞ?」


「確かに。雷門とかすごいらしいな。出店だらけって聞いたぞ?」


「かさばらないものだったらいいんじゃないか?食べ物とかは……生ものだったらちょっと遠慮したいか。乾燥してる菓子程度ならオッケーじゃね?」


いろいろと話し合う中で、周介も行ってみたいところはあった。先に話題に上がっていたスカイツリーである。


あの場所から東京の景色を見渡してみたかったのだ。


これから住み、過ごす場所といっても周介が暮らす場所は東京の首都圏からはやや離れている。本当の意味で東京に住むというわけではないためにそのあたりを一度確認してみたかったのだ。


東京に行けるということもあって友人たちはややテンション高めだ。そういう雰囲気の中周介だって当然テンションは高い。


なし崩しの形とはいえ、東京の高校に通うことになっても、やはり周介自身は東京という街に憧れのようなものを持っていたのだ。


中学最後の旅行。日帰りとはいえ、周介たちが普段いけない場所に行くということもあってかなり楽しみだった。


地元の高校に通うことになる同級生たちからすればその気持ちはさらに強いだろう。東京に行くなど、それこそ長期の休みでもない限り行く気にはなれない。片道の電車賃だけでも学生身分にとってはなかなかの出費なのだ。


「でもさ、東京っていう割に東京自体に見るものがないんだよな」


「いやあるじゃん。今結構挙げたぞ?」


「いやそうじゃなくて、東京駅近辺っていうの?東京駅の周りに全く見るものなくね?」


「あぁそういうことか。調べればなんかあるんじゃないの?あんまり調べてないからよくわからないけど」


「てかやばい、山手線すごいな。ぐるぐる同じとこ回ってて本当に一分二分で次の電車が来てるよ」


「マジかよウロボロスかよ。そのうち電車自体が全部つながるとかありそうだな」


「いやそれはさすがにないだろ」


そんな冗談や雑談を含めながら、周介たちが乗るバスは順調に進んでいた。


あの時のような事故は起きない。起こさせないと周介は常に自分の中にあるであろうマナの状態に気を付けていた。


目元を隠せば能力は使える。ここで暴走など起こさないように、定期的に能力を使っておかなければならない。


こういう日常に出ると、やはりマナの吸収をコントロールできるようになっていないと不便だなと周介は思っていた。


まだまだ訓練が足りないなと思いながら周介は友人たちとのひと時の学生らしい会話を楽しんでいた。


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