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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
二話「手を取り合うその意味を」
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「で、これで全部ですか?三種類って言ってたし」


「いやいや、もう一つあるよ。さっきのは二つで一つだからね。最後の一つはこれさ。地味にこれが一番大事だったりするんだよね」


 そう言ってポケットから取り出したのは腕時計のようだった。デジタル式の時計らしく、その画面には今もなお数字によって時間が刻み続けられている。


 メタリックな外観に黒いフレーム。刻まれているデジタル表示はシンプルなものだった。余計なものがついていないただの腕時計という印象である。


「時計ですか。俺アナログ派なんですけど」


「君の能力の性質上、アナログ派でいるのは限界があるってことだよ。それにこいつの能力はそれだけじゃない。君の現在位置を把握することも簡単になるし、何より小さいが通知機能も持っているんだ」


「通知機能?電話とかはできないんですか?」


「あくまで鳴って知らせるだけだよ。今の時代わざわざ携帯から機能を切り離す必要はないってことさ。それに、携帯で話をしていても不自然ではないけれど、腕時計に向かって話すのは少し不自然だろう?これは非常事態とかそういうのを知らせてくれる機能がついているだけさ。最近の腕時計にはそういう機能がついているものも多いから、不自然ではないだろう?」


 定刻を知らせるための機能がいくつかの時計には取り付けられている。一定の時間で鳴る機能があるため、比較的周りから怪しまれることもないだろう。


「ちなみに鳴るとこんな音が出る」


 ドクが何やら携帯を操作すると、腕時計がデジタルチックな音を出し始める。そこまで大きな音でもなく、そこまで不快感ももたらさない自然な音だ。


「こんな音で気づきますかね?結構音も小さかったし」


「これは君が学生として生活しているときに必要なものだよ。携帯にいきなりかけるわけにもいかないからね。こういう間接的な通知が必要なのさ。それで君たちの方から僕や拠点にいる人間に連絡を取るって感じ」


 なるほどと周介は小さく納得していた。確かに授業を受けているときなどは携帯電話などはいじることはできない。


 たとえいきなり電話がかかってきたとしても、とっさに取ることは難しいだろう。そういう時にこの腕時計が活躍するのだ。


 一度なった時、トイレか何か、何でもいいから理由をつけて一人になり、そこから連絡をつければいいという話なのだろう。


 説明されれば確かに必要なことであるということはよくわかる。だが同時に周介としてはアナログ時計がよかったなと思ってしまうところでもあった。


「こいつは太陽光で充電できる。水深十メートルまでは耐久度も保証するよ。もし壊れたら僕に言ってくれ、すぐに作り直すから」


「随分と凝ってますけど、他の人もこういうのをつけてるんですか?」


「学生に関しては一応持たせているよ。後の社会人クラスの構成員は任意かな。結構人気があるんだよ?各メーカーの人と協力して作ったりもしてるからデザインも結構いいだろう?こだわりの逸品ってやつさ」


 どの部分にこだわっているのかはさておき、とりあえず必要なものである限り周介にもらわない以外の選択肢はないだろう。


 そう思って周介は自分の左腕にもらった腕時計を取り付ける。


「それに、君これから卒業旅行とかあるんじゃないかい?そういう場にこういうものをもっていくといろいろと便利だよ。説明書はこれね。一応目を通しておいて。その腕時計から緊急信号を送ることもできるから」


 腕時計にしては妙に分厚い説明書を見て周介は驚いてしまう。この説明書も腕時計ごとに違うのだろうかと思いながらも、周介はそれを受け取ることにした。


「で、このバイクとか装備とかはどうするんです?俺が持って帰っていいんですか?」


「いやいや、君まだ免許持ってないでしょうに。免許を取ったら持って帰ってもいいよ。もっとも、こいつもまだ完成品とは言い難いから、そのあたりは楽しみに待っていてくれ。ただその代わりといっては何だけど。はいこれ。頻繁に持っていることを勧めるよ」


 ドクが車の中から取り出したのはアタッシュケースだった。その中に入っているのは周介の個人装備だった。


 といっても、プロテクターの部分ではなく、脚部に取り付けるだけのローラースケート部分だ。

 市販のものに比べかなりデザインが違うのは周介専用にカスタマイズしてあるからなのだろう。


 ブーツのような形のそれをもらって、とりあえず周介はそれを履いてみることにした。


 市販のものよりずっと履き心地は良い。当然といえば当然だろう、周介専用の装備なのだから。


 ローラーの動きも、足に吸い付くような履き心地も何もかも市販のものよりも上等なものだった。


 能力を使わずに軽く動いてみると、ドクは感心したように笑みを浮かべる。


「なかなかどうして、能力を使わなくても上手いじゃないか。練習したのかい?」


「弟とちょっとやったくらいですよ。動画とかの上手い人に比べると、まだまだ」


 軽く動いているだけだが、ドクからすればまた一つ周介が前に進んだということを知って嬉しくなっていた。


 装備もまた新たに加え、周介の能力者としての選択肢がまた少し増えたことになる。


 少なくともこの前のように唐突に巻き込まれでもしない限りは。


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