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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十話「分水嶺に立つ小動物」

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 新しい装備や環境を得ての周介の訓練は少し様変わりしていた。


 発電に加えアームの操作、人形の操作、飛行訓練、そして普段の組手に加えて大太刀部隊との訓練まで加わったのである。


 普段行っている訓練が楽だとまではいわないが、それでもここまで様変わりした訓練には当然体もなかなかついていかなかった。


 特に難しいのは人型ロボの操作である。


 飛行訓練は、今までの噴出装置や、パラシュートなしでのスカイダイビングなどを経験したおかげか、比較的浮くだけなら問題なくできるようになっていた。


 大太刀部隊との訓練も、毎回相手が違い、逃げ方が変わるくらいではあるが、体を痛めるだけで済んでいた。


 問題なのは人型のロボ、全ての関節が周介の能力で操作することができるこの『ラビットα』は、周介が思っていたよりもずっと難易度が高く、かなり歪、というか妙な動きしかできていなかった。


「ぬぅ……全然うまくいかない」


 隣で同じ背格好の人形を瞳に動かしてもらい、それを真似ているのだがどうにもうまくいかない。何とか一歩ずつ歩くことはできるようになってきているのだが、歩くというより足を一歩ずつ前に出しているという印象が強い。


 歩いているとは口が裂けても言えないような状態だ。普段瞳が動かしているような自然かつ軽やかな動きにどうしてもならないのである。


「そりゃ関節をもっと柔らかく使わなきゃダメでしょ。動きが硬い」


「そうは言ってもだよ、これ全部操作するの結構やばいぞ?一個一個動かしてると全然動きが間に合わない」


 周介の能力で動く人型ロボは、実際に人間が動くときの関節の動きを可能な限り再現してるつもりだった。


 だがそれはあくまでつもりだ。実際には滑らかさの欠片もないような動きであり、なおかつ一つ一つの動作がとにかく遅い。


 重心を意識し続けなければ次の一歩を踏み出すことも難しく、普通の人間が歩く動きとはかけ離れている。


 バランスをとるために腕を前に出したり振り回したり、必要以上に膝を曲げて重心を調整したりとせわしない。


 とはいえそれも無理のない話だ。


 普通人間の体というのは関節それぞれがクッションの役割を果たしている。機械的に言えばサスペンションに当たる部分だが、この機体にはそういったものが最低限しか搭載されていないのである。


 足を動かすだけでも、指先、足首、膝、股関節、腰、背中、肩、首、腕といったすべての関節を同時に動かす必要があり、それらが連動し自然とバランスをとれるようになっている。


 手と足を地面について動かすだけ、つまり四つん這いの状態であればある程度動かせるのだが、二足歩行ではどうやっても歩く以下の動きしかできなかった。


 こんなところで二足歩行に進化した生物の尊さを理解するとは思わず、周介は人間のすばらしさを実感しているところでもあった。


「荒っぽい動きでいいなら余裕なんだけどなぁ……自然な動きとかまだ無理だな……どうやったらいいもんか」


 勢いよく跳躍したり、体の動きを急激にしてもいいのであればアームを使ってきた要領でどうとでもなる。


 実際の肉体と違って、体の向きや姿勢などは関節を操作すれば簡単にできるため、実際に周介がしてきた無茶な動きも、この機体であれば問題なく再現可能である。


 もっとも、やはりぎこちない動きであることに変わりはないのだが。


「いっそのこと四足歩行から練習したら?そういうの用意してもらえばいいじゃん。騎乗用装備って感じで」


「それもいいかもな……まだまだ練度不足が否めないし……ちなみに瞳はどうやって人形の動きを覚えたんだ?」


「とにかく動かしてた。ずっと暇だったし。映像見て、これ真似したいなって思ったらずっと練習してた」


 瞳は周介が組織に入るまで、一人で活動していたのだ。それも物を運ぶ程度の簡単な仕事ばかり。


 当然普段の時間のほとんどは持てあましていただろう。訓練をする時間は山ほどあったということでもある。


 少し切ないが、同時に羨ましくもあった。能力の操作という意味では周介はまだまだ未熟も未熟、こういう部分で粗が出てきてしまうのは単純に精度が低いのが原因であると理解していた。


「いっそのこと考え方を変えたら?動かそうとするんじゃなくて、動くようにすればいいじゃん」


「……ごめんどういうこと?」


「えっと……あれ使って」


 瞳が指さしているのは知与の体力向上用にラビット隊の隊室に導入したエアロバイクだった。


「……αにあれを漕がせるってことか?」


「そう。全身一気に動かそうとしたってまず無理でしょ?だからまずは下半身、足から。それも、一定の動きなら覚えやすいんじゃない?どうよ?」


 なるほどと周介は納得しながらラビットαをエアロバイクの方に進ませていく。


 やや苦労しながらそれに乗せ、ひとまず足の動きを、一定の速度で動かせるようになることが重要だ。


 周介は集中し、機体の脚部を動かし始めた。


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