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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
二話「手を取り合うその意味を」
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「そしてこいつにはさっき余計なものをいくつか入れたといっただろう?このフレーム!これこそが君に見せたいものなのさ。ここにもいくつも回転できる機構があることに気付いたかい?」


「ありますね。フレームを外すためのものじゃないんですか?」


「ところがどっこいそうじゃないんだ。まぁ回してみてくれ。可能なら両方同時に回してみてほしいなぁ」


 フレーム部分に取り付けられている回転部は四つ。右側、左側それぞれ前後に一つずつついていた。


 それがいったい何をするためのものかはわからないが、周介はとりあえずそれを回転させてみる。


 するとフレーム部分のいくつかに亀裂が入り、フレームの内側にあったそれが外側に露出していく。


 それは一見すると、ただの棒のようにも見える。だがそれがどのようなものであるのか、周介はその外見ではなく、そこにある回転させられるパーツによって把握していた。


 そしてそのうちの一本を、周介は恐る恐る能力によって操る。


 回転できるパーツを回すと、それによって連動するような形でその棒の部分が動き出し、一種のアームのようにバイクの外側へと露出した。


「察しが早くていいね!これこそこのバイクにつけたかったギミックなのさ!加速しすぎて壁にぶつかるだとか、傾けすぎて転倒するだとかの心配がないように、側面に取り付けられた四本のアームによって走行を補助する。ちなみに今は何のギミックもついていないけど、オプションパーツでこれに武器とかを取り付けることも考えているよ。今はただのアームだからそのあたりはご愛嬌ってところかな」


 周介はバイクに取り付けられた四本の腕を能力を使って動かしていく。回転できるパーツをそれぞれ回していくと、所定の方向へと動くような仕組みになっているらしい。この辺りは単純なものだ。とはいえ、慣れないと十全に動かすことはできないだろう。


「すごいですね、よくこの短時間で作ったもんですよ……!テンション上がってきた!」


 周介はそう言いながらバイクにまたがり、バイクから延びる四本の腕を操っていく。全てを自由自在に、しかも同時に動かすことなどできないため、はっきり言って全く意味のない動きではあるが、それでも周介からすればなかなかにうれしいものだった。


 またがった状態でも周介に当たることはない。おそらく可動域はそこまで広く設定されていないのだろう。


 あくまで補助的な腕としてこれらはあるようだった。


「うんうん、男の子っていうのはこういうのにロマンを見出さないとね。そしてそんな君についでにこれだ。さぁ手に取ってみてくれよ」


 ドクが次に見せたのは先ほどから置いてあった箱だった。


 その中にいったい何が入っているのかは不明だったために気になっていたのだが、やはり周介のための装備が入っているようである。


「君の要望を叶えるための装備さ。ちょっと苦労したけどなかなか面白い仕事だったよ。実際のテストはしていないから今日はまだお披露目ってところだね」


 周介が箱を開けると、そこには二種類の道具が入っていた。


 一つは腕に取り付けるタイプの装備だ。ワニ口のフックのような構造をしていて、これまた能力によって開閉することができる。


 そしてそのワニ口のパーツからはワイヤーが伸びており、ワイヤーのロールがそこについているのがわかる。


 そしてもう一つはベルトのような形の装備のようだった。ベルトのように見えるが、それを腰に取り付けるためのものではないということはすぐに分かった。何せ一本ではなく、サスペンダーのようにいくつも枝分かれしているのだから。


 それがハーネスと呼ばれるタイプのものであるということを、周介は知らなかった。


「これは君がお願いしてた空中での移動を可能にするワイヤーアクション用の道具さ。この腕の部分からこのワニ口が射出されて、ワイヤーを伸ばし、どこかに引っ掛けるなり捕まるなりして、ワイヤーを回転によって回収し移動する。ただ、現時点では射程距離が短くてね。強力なバネを使って射出してるんだけど……二十メートル飛ぶかどうかってところなんだよね。あ、そのボタンを押すと射出されるから」


 周介はとりあえずパーツ一つ一つの動きを確認しながら、ドクの言ったボタンを押すと、ワニ口の部分が勢いよく射出される。そしてドクの言った通り、二十メートル程度飛ぶと地面にそのまま落ちていった。


「この射程距離を延ばすのが今後の課題でね。あともう一つ課題があってさ」


「どんな?」


「まぁ回収してごらんよ。この部分を回すと回収できる」


 そう言われて、周介はドクの言った部分のパーツを勢い良く回す。するとドクの言う通り勢いよくワイヤーが回収されていき、先ほど飛んでいったワニ口のパーツが戻ってくる。当然ものすごい勢いで。


 当然装備を持っていた周介のすぐ近くに、勢いよく飛んでくるパーツ。当たることはなかったが、金属でできたこのパーツが当たったら痛いでは済まないだろう。


「うおぁ!あっぶな!」


「そう。勢い良く戻ってくるから普通に危ないんだよね。それに、今はこういう何もない場所だけど、屋外では引っかかる場所も多いからなおさら危ないんだよ」


「作ってみたものの、まだ実用的じゃないってことですね?」


「そういうこと。こっちに関しては気長に待っててよ」


 申し訳なさそうに言うドクだが、周介としては期待してしまっただけに落胆は大きかった。


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