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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十話「分水嶺に立つ小動物」

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「結果からすれば、これだけチャレンジして三回しかこの二人に当てることができませんでした。その意味が分かりますか?一割程度の勝率、いや、一割の確率でしか相手に攻撃を当てることができないということです。現場に出ても、これではただ無駄に終わるでしょう」


 古守は言葉を濁すことなく、はっきりとそう告げた。


 それぞれ十五回、合計三十回の挑戦の内当てられた攻撃は三回のみ。どれも周介たちが全力で避けての結果だ。


 後半になればなるほど攻撃は避けにくく、鋭く周介たちに向けられていた。それでも怪我をしない程度の威力を維持していたのは、大太刀部隊である彼らの気遣いだろう。周介たちとしてはその気づかいがありがたくもあり、少し悔しくもある。


「今は考えてください。どうすれば攻撃を当てられるのか。どうすれば速い相手も短い時間とチャンスで確実に仕留めることができるのか。チャンスは早々回っては来ません」


「でも古守さん!後半は結構惜しかったし、次の訓練では」


「いいえ、あなたたちが次、ラビット隊の皆さんと訓練できるのはかなり先のことです。他にも同様に訓練をしておかなければいけない人がいますから。だからこそ考えるのです。今あなたたちに足りないものを補える策を考えなさい」


 これこそが古守の目的なのだろうと、周介は察していた。


 大太刀部隊の人間は、高いレベルで能力の操作ができるように訓練してある。もともと強い能力を持っている者たちが多いからだろう。能力の威力の調整、そして能力を当てる場所の調整。素早く敵の位置を補足し、確実に相手へ攻撃をする。そういったことを中心に訓練を続けているのだ。


 だが如何せん、同部隊の中で機動力が高い人間が少ない。そういった人間はたいてい耐久力もあるため、当てるための訓練というよりは、耐久を削り取るための訓練といったほうが正しかったのだろう。


 だが周介たちは機動力はあっても耐久力はない。とにかく逃げるだけが目的になっていたため被弾の回数もかなり少なかった。


 つまり、今までの訓練と別の刺激を与え、能力を使用する際の新しい『発想』を与えることこそが、この訓練の目的だったのだろう。


 素早く逃げる相手に対し、どうすれば攻撃を当てられるか。周りの被害を可能な限り少なくしながらも、どうすれば相手だけを追い詰め、攻撃することができるのか。


 それは一種の意識改革のようなものだ。


 状況によって現場に出ることの少ない大太刀部隊は、どうしても訓練でしか能力戦というものを経験できない。もちろん、戦闘という面ではその訓練は非常にレベルが高く、実戦のそれよりも効率的に戦闘能力を上昇させることが可能かもしれない。


 事実大太刀部隊の多くの人間は高い戦闘能力を有していることに違いはないだろう。先日のエッジリップと対峙した大太刀部隊二人、片方は古守だったが、それらもほぼ無傷で生き残っているほどなのだから。


 だが古守が教えたいのは、身に着けてほしいのは能力者としての戦い方ではなく、能力者としての狩りの仕方だ。


 戦おうとする相手に対しては高い効果を発揮する大太刀部隊だが、逃げる相手に対してはその効果が発揮しにくい。


 それを改善するために、周介達ラビット隊に頼んだのだろう。


「今日の訓練はここまでとします。百枝さん、加賀さん、本日はありがとうございました。また後日、同じようにお願いすることになると思います」


「わかりました。こちらこそありがとうございました」


 周介と玄徳が小さく会釈すると、一緒に訓練していた大太刀部隊の数人も大きな声で礼を言ってから頭を下げる。


「ラビット隊、次は絶対当てるからな!またやるぞ!」


「次は当てるから覚悟しとけよ。っていうかお前ら普段何処で訓練してんだ?何なら俺らも手伝って」


「おいずりいぞ、そういうのなしだろ」


「そこまで、私はお二人を送っていきます。あなたたちは今日の訓練を振り返って今後の能力の使い方を考えておいてください。百枝さん、加賀さん、行きましょう」


 古守が促すのにつられ、周介と玄徳は大太刀部隊の訓練場を後にした。後にする間も、大太刀部隊の面々はあぁでもないこうでもないと、どうすれば攻撃を当てることができたのだろうかと、どうすればいいのだろうかと話しあっていた。


「古守さん的には、今回の結果は満足ですか?」


「えぇ、お二人は最高の仕事をしてくれました。すいません、こんなことを小太刀部隊の貴方がたにお願いしてしまい」


 ただの訓練なら、大太刀部隊と大太刀部隊の訓練であればここまで相手の頭を刺激することはできなかっただろう。


 周介たち小太刀部隊に当てることができなかったという事実が、相手にわずかにでも悔しさを与え、そして考えようと頭を動かし始めた。


 戦闘に対する能力の使い方とはまた別のものだ。戦いのために使うものであってもその性質が大きく変わり始めた。


「これから、他の大太刀部隊の人間にも同様のことを?」


「はい、射撃攻撃が可能な人間に主にやってもらおうかと。強化系のタイプはおそらくまだ必要ないでしょうから」


 強化が可能なタイプであれば相手の機動力にも後れは取らない。問題は距離をとって攻撃するようなタイプだ。


 長射程を持つミーティア隊のような人間でもない限り、周介たちを捉え続けるのは難しい。


 古守なりにやらなければいけないことを模索し、徐々に話を進めようとしているのが周介たちにも理解できた。


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