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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
二話「手を取り合うその意味を」
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 周介とドクを乗せた車は、拠点への入り口のある市役所の駐車場に到着していた。


 周囲の目がないことを確認して、ドクは拠点入り口のための操作をしてからエレベーターを起動させる。


 車に乗った状態でゆっくりと降りていく車を隠すように、隔壁が閉まるとそこには先ほどまで何もなかったように駐車場の姿へと変わっていた。


「で、俺の装備っていうのはどんなのですか?また体につける系ですよね?」


「間違っていないよ。君に与える装備は今回三つだ。といっても僕もまだ君に高い性能を持っているものを与えられるほど、製作に時間をかけられていない。君の能力は道具に依存する能力だからね。早々に準備を整えたいんだけど……」


 周介の能力は物体を回すだけだ。それだけで高い効果を望むのは難しい。そうなるとドクの言うように能力を発揮できる道具が必要になってくる。


 体一つでも道具だけでも役に立てないからこそ、ドクは周介のためにいろいろと道具を作ろうとしているのだろう。


「それで、どんな」


 周介がさらに質問をしようとするよりも先に、目的の階層に到着し、ドクは車をゆっくりと前に進める。その先には駐車場のようなスペースがあり、そこに一台のバイクが停まっていた。


「君の装備の二つ目。能力機動二輪一式(ウィリー)だよ。デザインに関しては、言ってくれればいくらでも変えてあげる」


「おぉ……でも二つ目って?」


「一つ目はまだ開発中の、君の装着型の個人装備のことさ。そっちはまだまだ最適化の余地があるから、こっちの方が早くできちゃったよ。こっちは構造が簡単だからね。ただのバイクに細工をしただけだし」


 そう言いながら車から降りて、ドクはバイクの近くに歩み寄る。周介はバイクの奥にもう一つ、箱のようなものが置いてあることに気が付いた。おそらくそれが他の渡すべき装備二つなのだろう。


「これの動かし方は単純。君の能力で動く。ただブレーキやライトをつける関係で、発電機と蓄電池も積んでいる。燃料タンクとエンジンが必要ない分、余計なものを詰め込ませてもらったよ。きっと気に入ってくれる!」


 余計なものとドクは言うが、それがおそらく余計ではなく、ドクとしては本命の装備なのだろうなと周介は何となくわかっていた。


 テンションが徐々に上がってきたからか、ドクはやや早口になってきている。こういう風に説明をするときが一番好きなのだろう。周介はドクの説明に耳を傾けながら、バイクの中にある回転させることができる部分を一つ一つ確認していく。


 いくつか回転させられる機構があるのは確認できるが、周介はどうにも理解することができないことがあった。


「ねぇドク、俺の能力で動かせる発電機があるなら蓄電池はいらないんじゃないですか?容量がもったいないような気がするんですけど」


「いい質問だね。確かに君の能力があれば発電も可能だ。電気には困らないだろう。だけど万が一何かがあった時、君以外にもこれを最低限動かせる人間が必要なのさ」


「ってことは、これって電気でも動くんですか?」


「いいや動かない。これを動かすために必要なのは君の能力だけさ。これを電気で動かせるのは各計器の類だよ。通信機とかもその中に含まれるね。そういったものを動かすために必要なのさ」


「なるほど、そういうことですか。このハンドルとかについているスイッチとかは?普通のバイクと同じなんですか?」


「同じであるところもあるし違うところもある。ライトのスイッチとかは同じにしてあるよ。ぶっちゃけ君の能力はタイヤダイレクトで回せるから、ギアっていう概念が必要ないからね」


「でも、早く動かすためにはタイヤを直接回すよりギアを変える形にしたほうがいいんじゃないですか?そのほうが効率よさそうだし」


 自転車などでもそうだが、回転数によって速度を変える方法が一般的である。ギアと呼ばれる変速機を用いて、実際に地面に接触する部分へつながるチェーンに力を加え最高速度を変化させるというものだ。


「ふっふっふ、君はまだ気づいていないようだね!君は能力者なんだよ?そう!能力者なんだ!普通のギアなんかで君の能力を最大限活かせるわけがないじゃないか!当然この機体にも君用の!君専用のギアを用意してあるのさ!もっとも、変速機なんて機構ではないけれどね。タイヤをよく確認してみてくれるかい?後輪だ」


 言われた通り、周介は機体の後輪を確認する。すると回転させられる部分がいくつかあることに気付いた。


「これ、いくつかの車輪の集合体なんですか?なんか歯車みたいなのがいくつかついてますけど」


「そう!このタイヤは君がどの歯車を回すかによってその最高速度を変えられるのさ!自転車なんかはギアが歯車に引っかかるチェーンによって変速するのに対し、君の君専用のギアは君自身が、どの歯車を回すかによって変速を行うのさ!これは君の専用機だ、そのくらいしてもいいだろう?」


 専用機。その言葉に周介はわずかに心が躍っていた。そういう部分に心が躍らなければ嘘というものだ。そう思いながら周介は後輪にある機構に目を向けて、その目をわずかに輝かせていた。


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