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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
一話「蒼い光を宿すもの」
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0039

 夕食を摂り終わった後、周介は部屋に戻っていた。能力の訓練をするためである。ドクに渡された小型の発電機。これを用いて能力による発電をしながら、他に回せそうな昔の玩具を徹底して回している。


 能力の操作はだいぶできるようになってきてはいるが、それでもまだまだ操作がおぼつかなくなることもある。


 もっとうまく能力を扱わなければならないと思いながら能力を操作していると、どこかからか声が聞こえ始めていた。


 いったい何の声だろうかと、まずは携帯を見る。誰かから着信でもあるのか、動画が再生されっぱなしだっただろうかと思うが、そんなことはなかった。


 そして次に、今日渡されたヘッドホン型の通信機に目を向ける。そしてそれを装着すると、ヘッドホンの向こう側から声が聞こえ始めていた。


『ちらドク、こちらドク。周介君聞こえているかい?こちらドク、こちらドク、周介くーん。周介くーん』


「ドク?どうしたんですか?」


 ヘッドホンについているマイクを口元まで動かしながら、周介は応対する。


『あぁよかったいてくれて。周介君、今大丈夫かい?御飯中だったりしないかい?』


「大丈夫ですよ。どうかしましたか?」


『うん、実はちょっとお願いしたいことがあってさ。君の住んでいるところからちょっとばかし離れたところ、高速道路なんだけど、かなり大きな事故が起きたみたいなんだよね。今情報が上がって来たばかりなんだけど』


「はぁ、そうなんですか」


 周介の住んでいる場所から少しばかり離れたところに確かに高速道路はある。それがどうかしたのだろうかと思いながら周介が疑問を浮かべていると、周介の携帯にドクから位置情報が送られてくる。


『この場所、ちょっと気がかりでね、現場の状態をすぐに確認したいんだ。場合によっては部隊を出さなきゃいけなくなる。一番近くに居るのが君でさ。すまないけれど、ちょっと様子を見に行ってくれないかい?能力の使用の許可も出ているよ』


「え?今からですか?しかもここって、けっこうかかりますよ?」


 簡単に行ってくれと言われてもそう簡単に行ける距離ではない。車でも二十分くらいかかる距離だ。


 個人で行けとなるとさらに時間を要するだろう。


『君の能力を使えばあっという間だよ。これもいい機会だ。能力者として外で活動してみてくれ。もちろんこっちからアドバイスもする。自転車はあるかい?それに乗ってレッツゴーだ』


「……俺の意見は無視って感じですよね?」


『まぁ、実地研修だと思ってくれるとありがたいね。それに君自身、君の能力が外でどれくらい試せるか、知りたいんじゃないのかな?』


 ドクはどうにも周介の考えを的確に読む時がある。確かに周介は自分の能力がどのような効果を及ぼすのか、実際に外で使ったらどうなるのか考えたことはある。


 同時にあの時の列車のようなことを引き起こしてしまうのではないかと不安でもあったが、今はそれは置いておくほかない。


 今ここが、周介が能力者として行動する初任務になるということだ。


「ドク、場所のルートを出して指示してくれますか?その通りに動きます。車道を行くので多少信号につかまることもあると思いますけど、そのあたりは勘弁してください」


『もちろんだ。交通法規を破るわけにはいかないからね。何より君はまだ僕らの組織に加わったという証明をまだ持っていない。警察とかに見つかったらまた誰かをそちらに送らなければならなくなるから気を付けて。まぁ君の能力なら警察を撒くくらい楽勝だと思うけどね』


「笑えませんよ。それと、その高速道路って、自転車でも入れるんですか?」


『入る必要はないよ。高速道路の上に人が通る用の通路が作られてる。運がいいのか悪いのか、その近くで事故は起きたのさ。僕が気にかかっているのはそこでね……まぁそのあたりは置いておこう。周囲が暗いと思うから、気を付けて動いてくれるかな?』


「了解です。とりあえず向かいますよ。能力使いますからね?」


 周介は即座に着替えて暖かい格好をすると部屋から出て駆け下りていく。


「ちょっとコンビニ行ってくる」


「こんなに遅くに?大丈夫?」


「平気平気。すぐ戻ってくるよ」


 自転車で行く程度の距離にコンビニがあるというのはありがたい話だった。同時に、少し後ろめたさも覚えるが、今はその辺りは置いておくしかない。


 ヘッドホン型の通信機を頭に取り付け、目の光を隠すサングラスを目に当てる。周りが暗い状況でこれは非常に危ないなと周介は再認識していた。


「ドク、次からはこのサングラス、暗いところでも見やすいようにしてくれませんか?暗いとちょっと怖いです」


『あぁ、そういう時はね、そのサングラス、二枚になってるんだ。それを片方外せば、遮光を片側だけにできるよ』


 言われた通りに周介はサングラスをいじり始める。すると確かにそれは二枚構造になっているようだった。


 車のガラスと同じ、外側からは見えないが、内側からは見えるという遮光性を持っているようだった。それでもやはり暗いことには変わりはないが。


「それじゃあ行きます。ナビ頼みますね」


『了解。それじゃあナビを引き継ぐよ。お願いするね』


『了解しました。百枝周介君、これから私がナビを担当します。私の指示に従って移動してください。ひとまずまっすぐ進んでください。信号などは自己判断で停止などをお願いします』


 唐突に女性の声に変ったことで周介は少し驚くが、とりあえず言われた通りまっすぐ進むことにした。

 自転車に乗り、能力を発動し、ゆっくりと、そして確実に加速していく。


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