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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
一話「蒼い光を宿すもの」
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「さぁ、あとはこいつだ。つけてみてくれ」


 そう言って取り出したのはヘルメットのようなものだった。だが通常のヘルメットとは違うようで、いくつかギミックがついているのが確認できる。


「そいつには無線機やら各種計器が取り付けられている。今君が着ているウエアと一体化させることができるのさ。接続することで今のウエアの状態も知ることができるようにするのが今後の課題だね」


「…ってことはまだできないんですね?」


「そ。ただ無線が取り付けられているだけさ。あとはそこのボタンを押すとフェイスカバーが出てくるよ」


 とりあえず頭部装備を取り付け、ドクの言っているボタンを押すと周介の顔を守るためのフェイスカバーが現れる。


「本当ならそのカバー部分にいろいろと画面を投射したいんだよね。実際に投射してみてそれが邪魔でなければそうしたいかなって思うんだ。だからこそぜひ試してほしい」


「なんかあれですね。恰好的には変身戦隊もののヒーローみたいですね」


 全身タイツにも似た衣服に、各所に取り付けられたプロテクター。今のところ色は黒で統一されているが、ヘルメットやらの関係で完全に戦隊もののヒーローのように見えなくもない。


「まぁそれに近いさ。よかったね、お子様方の人気を独り占めだよ?」


「……俺を捕まえた、って言っていいのかわかりませんけど、あの電車で俺を捕まえた人はこんな格好してなかったですよ?あぁいう格好じゃダメなんですか?」


「君を捕まえた……あぁ、彼の装備は彼ら専用のものだ。各能力によってそれぞれ専用の装備を作らなきゃあんまり意味はないのさ。彼らの装備はあくまで彼らの能力に適した形になっている。別に外見を分けるためとかそういうわけではないんだよ?君もこれから君に適した装備を考えていくのさ。まだまだこれは試作段階ってわけだよ」


 あの時あった能力者はまるで軍の装備のようなものを身に着けていた。ヘルメットを着けていたことに変わりはないが、それも今周介がつけているものとは全く別のものだった。


 こういうコスプレもどきよりはあっちの方が格好いいのではないかと周介は感じてしまっていた。

 いや、正確に言えばあの格好もコスプレに近いものなのだが。


「ただそうだね、君の装備にも名前を付けてあげるべきか。いつまでも試作型じゃ花がない。君の装備だというのをしっかりと見せつけなきゃね」


「あの、他の人の装備にもそういうのあるんですか?」


「あるよ?例えば君があった人物の装備、あれは『十五式空転手甲』っていう名前だ」


「なんすかそれ格好いい!そういう装備の名前だったら大歓迎ですよ」


 まるで兵器か何かの名前のような雰囲気に、周介はテンションが上がっていた。自衛隊などが使用している火器や兵器の名前のようだ。中学生の周介からすればそういった名前は非常に受けがよかった。


「そうかそうか。では君の装備が完成する時には僕が改めて名付け親にならせてもらおうじゃないか」


「まだ完成はしないんですか?これでも十分にいいものだと思いますけど」


「まだ改良一段階目だからね、これから君の成長や行動の変化によって内容を細かく変えていかなきゃいけない。必要なギミックも増えていくだろう。そういう意味でもっともっと改良しなきゃ。その装備は基礎だよ。基礎がしっかりしているからこそ、そこから上を作り出せるのさ」


「基礎かぁ。じゃあ俺がこういう装備を使いたいですって要望出せば反映してくれるんですか?」


「もちろん。君が使いたい兵装、イメージとどんな効果があればいいよっていうのがあれば作るよ。想像と少し違うものになるかもしれないけどね」


「じゃあ、じゃああれです!ワイヤーとか使ってどっかの場所に引っ掛けたりしてワイヤーアクション出来る感じの!立体機動装置みたいな!」


「あぁ、君もあの作品好きなんだね。できなくはないだろうけど……ん―……ちょっと難しいなぁ。回収機構はいいとして、発射機構をどうするかな…君の能力で使えることが大前提だから……うん、ちょっと考えておくよ。少し予想とは違うものになるかもしれないけど、そのあたりは勘弁してね」


「全然大丈夫ですよ。テンションちょっと上がってきました!」


 周介はその場で軽く準備運動をしてから能力を発動して駆け出す。能力の強弱と自分の体をうまく操る。まだ完璧にはできないが、当初に比べればなかなか様になっている姿だ。なるべく速度を落とさずに、曲がるときには逆回転させて減速し、減速しきれないのならプロテクターなどを床にこすることで強引に減速しながら曲がる。


 時々、速度と体勢を間違えて転がってしまうこともあるが、初めてこの場所に案内した時との違いを確認してドクは満足そうにうなずいていた。


「どうだい周介君!装備の調子は!」


「いいですね、こすれて傷ができない。それにプロテクター部分もしっかり保護されてて痛くないです。あとはそうですね、手のひらとかを守るものが欲しいですかね。今は膝とかのプロテクターを使って強引に曲がったりしてますから、手でも減速できればもうちょっと安定するかも」


「オーケー、新しく作っておこう。あとは他に何か要望はあるかい?作れそうなものからどんどん作っていくよ?もしなければ僕の思いつきでいろいろと作るけど」


「今のところはそんなところです。そこまでいきなりは思いつきませんよ」


「よしよし了解。ではとりあえず試作品の結果は上々といったところかな。じゃあ家まで送るよ。あとこれはもっていてくれるかな?」


 そう言って周介はヘッドホンとサングラスが一体化したような、VRゴーグルのヘッドセット版のようなものを渡してきた。


「もし仮に外で能力を使う時はこれをつけてほしい。一応通信機もついてるから、何かあった時は役に立つと思う。君の目を隠すという意味でもね」


「ありがとうございます。使わせてもらいます」


 目を隠す。能力者であるということを悟らせないという意味もあり、外での活動を報告するという意味での通信機だ。


 ありがたい気づかいであり、同時に周介としてはこれを使う機会がないことを祈るばかりである。


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