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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
一話「蒼い光を宿すもの」
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 周介の日課の中に、とある行動が増えたのは、周介自身が自分で行おうと決めたというのがきっかけだった。


 それは能力の訓練。


 といっても、そこまで難しいことではないし、日常生活で行えることには限りがある。そして、その訓練のきっかけは、体内に吸収され続けるマナを消費することが目的だった。


 周介はまだマナの吸収をコントロールできていない。そのためどこかしらでマナを消費しなければならない。


 体質的にマナを放出することができないのであれば、能力を使って消費するほかないのだ。


 そして同時に日常的に消費を行うということと並行して能力の訓練も行う。一石二鳥といえば聞こえはいいが、そこまでよいものではなかった。


 まず、周介の能力を発動するためには対象となる物体が必要だ。ドクの説明で言えば、回転させられるもの。


 それはボールなどでもいいし、その辺の小石でもいい。だが周介の認識上で回転しやすいものの方が好ましいようである。


 感覚的なものだが、回しやすいものと回しにくいものが確かにある。


 石のように適当なものでは回しにくく、時計や歯車、コマやヨーヨーといった回ることが当たり前のものの方が回しやすい。


 眼が光ってしまう関係で、学校の中では能力はほとんど使えない。だが能力を暴発させないように、周介はアナログの腕時計をつけていた。


 目をつむり、光が漏れないように腕で押さえてから能力を発動し腕時計の針を回す。


 これをすることでマナの過剰摂取による強制的な能力の暴走を抑えていた。


 もちろん、学校や教室内では周介の能力が暴走したところで先日の列車暴走のように大騒ぎになることはない。せいぜい時計の時間がずれる程度のものだ。


 だが周介は能力発動時に起きる目の発光が誰かにばれることを恐れていた。


 能力者の話題は、噂で多くの者が知っている。それを本当であると認識しているものはさほど多くはない。ほぼ全員がネット上の噂話、七不思議程度にしか思っていない。それは周介にとって幸いだった。


 学校では周介が能力を発動しているところは見られたくない。そのため、周介が本格的に自主練をするのは自宅に帰ってからだった。


 妹や弟の相手をしてから、周介は自室に入り能力を発動する。時計の針、ミニ四駆のタイヤ、CD、コマ、回すことができそうなものは何でも回した。


 速度やタイミング。止めては回してを何度も繰り返し、何回も何回も繰り返す。見ていなくても、どれくらいの速度で回っているのかを認識できていた。


 ドクが言っていたことを周介は確実に実践していた。


 回すことができるものを、無意識下で知覚している。周介は最初その言葉の意味を理解していなかったが、自分の部屋で目を閉じ、リラックスした状態で能力を発動して初めて、その言葉の意味を理解していた。


 何となく。本当に何となくだが、どこに何があるのかがわかるのだ。といっても、回すことができそうなもの限定の話なのだが。


 そして回しているものがどのような速度で回っているのかがわかる。


 ゆっくりと回っているもの。早く回っているもの。そして一度止めたもの、再び回し始めたもの、周介はそれらが把握できてた。


 リラックスし、おそらくは最高の状態でいられるからこそ、このように操れるのだろうということはわかっていた。


 体を動かさず、しっかりと集中できているからこそこういうことができているのだ。能力を発動すること以外は何もしていない状況だからこそできることだ。


 逆に言えば、何か別のことをしただけで、それこそ部屋の外で少し大きな物音がしただけで集中は解け、再び集中し直さなければならない。


 どのようなことをしていても能力を万全に操ることができるようになるにはまだまだ時間が必要だった。

 一朝一夕では無理だと周介もわかっていた。わかっているからこそ、無理はしなかった。


 無理をすれば続かない。無理をすれば負荷がかかり休まなければいけなくなる。


 適度に、そして焦らずに、歩くように、負荷をかけすぎずに、そうやって続ける必要があった。


 そんな風に能力の操作を行っていると、周介の携帯に誰かからの連絡が入る。それは先日連絡先を交換した瞳からだった。


 それは明日に迫った受験と校内の案内にさしあたり、集合場所と時間を決めておきたいということだった。


 了承する旨のメッセージを送り、周介は大きく息をついて能力の訓練を終了する。


 今回周介の受験はかなり特別待遇で行われるようだった。受験は午後からスタート。周介は明日すぐに粋雲高校へ向かわなければいけない。


 瞳は周介の受験が終わった後、つまり夕方ごろに粋雲高校の入り口で待っているとのことだった。


 受験、自分がどの程度できるのかわからない状態では不安しかなかったが、周介はその不安を押し殺す。


 偏差値がものすごく高い高校。とはいえ周介は最初から入ることを強制されているのだ。


 いったいどのような試験が行われるのか、素直に疑問だった。


 相変わらず蒼い月が、前と同じように、受験前日のあの日と同じように光っている。周介は今度こそは寝坊はしないと心に決めて携帯のアラームを何個もセットして周介は眠りについた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 能力を使うと目が光るので、安形はサングラスしてるけどカラーコンタクトでは光が隠せないのか気になる。 まだ途中だから説明がないのかもしれないけど、女子中学3年生辺りならサングラスよりもカ…
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