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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
六話「空と大地の嘶きに」

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 周介たちを乗せたヘリの飛行は順調に進んでいた。


 海上から陸上へそのルートが変わっても問題なく飛行を続け、高度を都度変えながらまっすぐ西へと進んでいく。


『兄貴、進行方向右側に富士山が見えています。もう静岡まで来たんですかね?』


「神奈川の一角でも見ることはできるみたいだけどな……02、現在位置はどのあたりだ?」


『現在神奈川県の……小田原のあたり。少し海側の方に城っぽいのが見えるから、もう神奈川の西の方、ここから静岡県に入って……こっからが本番?折り返しにはまだちょっとってところかな』


「結構速度出してると思ってもそんなもんか……今の速度は……大体二百八十キロ……うん、それでも結構な速度だな」


 空高くにいると周りの景色との比較があまりできないために自分たちがどれほどの速度で移動しているのかはよくわからない。


 特に下の景色など、あまり行かない場所であるためにわかるはずもない。さすがに富士山の造形くらいは写真などでも見たことがあるためにすぐにわかるのだが、それ以外の景色などはほとんどが同じに見えてしまうから困ったものである。


「っと……ちょっと雲が出てきたな……メイト11、こちらラビット01、神奈川県西部にてやや雲が出てきました。視界がすこし悪くなってきています」


『了解しました。どの程度の雲でしょうか。場合によっては回避、ないし高度の調整をお願いします』


 周介が見ている雲はそこまで大きくはないが、これから徐々に増えてきてるように見える。雲の中に入ることができないわけではないが、飛行している以上少なくとも視界がなくなってしまうのは少し辛かった。


 このまま進んでも少なくとも高度の関係上雲に直接入るということは少ない。ヘリの高度では下層雲程度の雲にしか接触することはない。それにそこまで大きな雲とは言えなかった。


「雲といっても散りばめられている程度です。現在はまだ問題はありませんが、これから西部に行くと雲が多いという話だったと思います。今後の動きの確認をしたいです。高度の維持、あるいは進行方向をやや変える必要はありますか?」


 高度やルートを変える場合最も気をつけなければいけないのは他の航空機との接触、そして地形の考慮である。


 もし地形を考慮せずに高度をいきなり下げれば、建物、あるいは山などに墜落する可能性を上げることになってしまう。


 詳細な地形把握などは周介たちはできていない。ある程度ルートに沿って動く場合、その下に何があるのかなどは把握しているが、あくまで大雑把だ。現在位置の直下の標高などを全て確認できているわけではない。


『確認しました。西部における天候はやや曇り気味、高度は大きく上げたほうがいいかもしれません。雲の中に入ると視界は非常に悪くなりますので注意です。どの程度まで高度を上げることは可能でしょうか』


 周介は今のところ最大高度は二千五百程度までしかあげたことはない。そもそもこのヘリの維持できる限界高度も知らないのだが、一定以上に高度を上げてしまうと大気圧の変化に寄り高山病などに似た症状や、低酸素症などが発生する可能性も高くなる。


 このヘリに機内の気圧調整がされているかは不明だが、少なくとも現時点でそれを断言することは難しかった。


 もう少し機体のことに関して確認しておくべきだったなと思いながら、周介は現在の高度と比較してどうなのだろうかと考える。


「以前訓練の時は高度を二千五百まで上げたことはあります。俺たちだけならともかく、ゲストがいる状態での急激な高度上昇は避けたいですね」


『承知しました。これより一部山間部に入るため、現在位置から高度を下げるのは危険と判断します。緩やかに高度を上昇させてください。そして可能ならば雲の少ない方向でお願いします』


「了解しました。山間部を抜ければ高度を下げても問題はないでしょうか?」


『はい、高度を千以下まで下げることは可能です。ですが住宅街などに入れば一定の高度が必要なので注意が必要です。低い雲はそこまで出ていないとよいのですが』


 ヘリの高度にかかるほどの雲は割と少ない。雲というのはかなり低い、それこそ下層と呼ばれる地表から二千メートル程度から上層と呼ばれる五千メートルから一万三千メートルまでかなり広く存在しているものだ。そのほとんどが水や氷の粒で形成されており、最も危険なのが積乱雲、そして周介たちが今いる場所で最も接触しそうなのは積雲、別名綿雲ともいわれる千切れているような雲と、層積雲と呼ばれる薄く広い雲だ。


 その高さによっては十分回避できるが、天気ばかりはどうしようもないというのが正直なところでもある。


 山間部では層雲、別名霧雲と呼ばれるような地表付近でよくみられる雲も出てくるだろう。山間部が最も危険なのは地表部分にこの雲が多く見られるためだ。


「雲を回避しながら飛行を続けます。02、各計器のチェック、継続して頼む。03は窓の外から様子を確認しててくれ。可能な限りでいい」


『了解っす。任せてください』


『了解。速度を上げる?』


「そうだな、少し急いだほうがいいかもしれない。メイト11、若干速度を上げます。雲が満ちる前に山間部を抜けます」


『了解しました。お気を付けて』


 県境、そして静岡県の一部には山間部もあるが平地も多い。その平地の部分にさえ辿り着ければ安定して低空飛行ができる。


 問題は雲の満ち引きがどの程度になるかということだ。天気ばかりは読むことができないために、周介は気が気ではなかった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告 そして可能ならば蜘蛛の少ない進行方向をお願いします』 集団の蜘蛛、気持ち悪いですよね(笑)
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