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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
六話「空と大地の嘶きに」

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 周介のゴールデンウィークの一日の動きとしては、今までの訓練の内容を踏襲した形になっていた。


 午前中から夕方まではひたすらヘリを飛ばし、その動きに慣れる。そして夕方から夜にかけては古守との戦闘訓練に費やす。


 そして夜になったら、ぎりぎりまで発電を行うのだが、この時間になると疲れ果ててしまい、もはや勉強もゲームもやる気にはなれない状態になってしまっていた。なんとも学生の休日らしくない一日を過ごすことになる。


「大丈夫?」


 机に突っ伏すようにしている周介に、暇そうに携帯をいじっている瞳が話しかける。実際に暇なのだろう、周介の様子を気にしながら、特にやることもなさそうに人形たちを動かしていた。


「これが大丈夫に見えるか?頭が茹で上がりそうだ」


 周介は熱を冷ますために医務室から氷をもらってきてビニール袋に入れ頭の上に置いている。


 長時間、それも難易度の高い能力の使用を続けていたせいで、頭がかなり熱を持ってしまっているのだ。


 今までも能力はよく使ってきてはいたが、それと同時に体も動かしていたり、能力そのものは単調な動きだったためにここまで熱を持つことはなかった。だが今は精密かつ能力を使う上で高い精度を求められる。能力を使うその質が変わったといえばいいだろうか。


 そのせいもあって、能力によってかかる負荷が今までのそれとは大きく変わってきているのだ。そしてその反動が周介の頭の熱となって表れている。


 こういう能力の発動はしたことがなかったために、周介は頭が茹で上がりそうになるのを耐えながら発電だけは行っていた。


 激しい運動をした後のクールダウンのようなものだ。いきなり能力を使うのをやめると、それはそれで頭が熱くなる。


 能力というのは厄介なものだと、周介はため息をついていた。


「こんな風になるなら、もうちょっと、早い段階でこういう訓練しとくべきだったかなぁ……ボーっとしてくる」


「あんまり速い段階でそういうことやっても意味ないから。能力細かく操れるようになって初めてそういうことができんの。ただ発動するだけで熱を持ってたこともあるでしょうに」


「あぁ……最初の頃はな。最近なかったんだけどな……」


「それだけ、あんたが能力をコントロールできるようになってきてる証拠。悪い事じゃないんだから」


「でもこのボーっとするのは何とかしたいな……早くその感覚が身につけばなぁ……」


「そのうち目覚めるでしょ。そういうのは気づいたらわかるようになってる感じだから、焦ってもしょうがないし」


「……まぁ、お前らみたいに昔から能力使えた人間だとそういう風に思うのかもなぁ……俺はもう気が気じゃないよ。今度のヘリの中で同じようなことになるかと思うと」


「一時間や二時間くらいだったら平気でしょ。どれくらいで熱もち始めるの?」


「えっと……大体四時間くらいぶっ続けで使い続けるとなる感じだな」


 周介は記憶を探りながら自分がいつ頃熱を持ち始めたのかを思い出していく。


 精密なコントロールを延々と繰り返す中、四時間ほど使い続けると脳の裏側が熱を持ち始める。それから続けて能力を使い続ければ熱はどんどん強くなっていき、いずれ意識がもうろうとし始める。


 今の周介はまだましな方だが、古守との訓練の後半になってくると半分意識がない状態で能力を使い続けているようなものだった。


 当然、訓練の効率は良くないし、うまく動くこともできない。だが古守はその状態こそが良いと判断しているのか、あえて休ませるようなことはしないようだった。


「こんなに使い続けてたらオーバーワークになるっての……大丈夫かな」


「能力だって使い続けてれば成長するから平気でしょ。限度はあるけど」


「……能力って成長するのか?」


「一気に成長するわけじゃないし、本人からするとそんなによくわからないけどね。ドクター曰く、若干成長はするみたい。あたしも昔よりは成長してるって言われる」


「へぇ……まぁ、使ってればそういうこともあるんかね……こんだけ使ってると、先に脳みそがだめになりそうだけど」


「あんたの場合頭なんでしょうけど、他の人だと場所も違うから何とも言えないんじゃない?あたしの場合だとお腹だったし」


「お腹?」


「そう。だから寒いときとか、ちょっとお腹の調子が悪いときとか、能力使いまくってあっためてたりした」


「マジでか。暖房いらずか」


「別に実際温まってるわけじゃないけどね。熱く感じるってだけで。だから夏場は結構きつかったかな。冬場はありがたかったけど」


 瞳は自分の記憶を思い返しながら、まだ熱を持っていた時のことを話してくれていた。


 周介のように頭に熱がたまるように感じる者もいれば、瞳のように腹に影響が出る者もいるらしい。


「でも脳みそで操ってるから熱がこもるんじゃないのか?普通。ドクもそんなこと言ってたぞ?」


「ほとんどの人は頭らしいけど、そこは発動方式の問題じゃない?燃料がどこを通っているかって話でしょ。あたしの場合、燃料が多く通ってるのがお腹ってことでしょ?」


 なるほどと周介は考えながら氷の入ったビニール袋を首筋に当てながらため息をついていた。


 単純にもっと別のところが熱を持てばよかったのになと思いながら、周介は常に発電のために能力を使い続けていた。


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