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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
六話「空と大地の嘶きに」

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「うえぇ……疲れた……」


 訓練を終えた後、寮に戻ってから周介は寮のベッドに倒れ込むように横になっていた。


 頭が茹で上がるのを感じながら自らの疲れを全身で表していた。


「でもしっかり飛べてたじゃねえか。あんだけ動かせてたら大したもんじゃねえの?」


「死ぬ可能性がある機械だからな……ぶっちゃけもっと精度上げないと人を乗せる気にはなれないな……お前だって今日一回も乗らなかっただろ?」


「そりゃ当たり前だ。死にたくないし」


 大したものといっておきながら操縦の腕を全く信用していない発言に、周介は大きくため息をついてしまう。


 とはいえ手越の気持ちもわからないではないのだ。むしろ周介だって自分の操縦するヘリに乗りたくないほどだ。普通に考えて免許も持っていない高校生の操縦するヘリにだれが乗りたいなどと思うだろうか。


 自殺志願者くらいしか乗りたがらないのではないかと思えてしまう。ドクや玄徳は何も気にせずに乗っていたが、あれは少々特殊な部類だと思うほかない。


「あとはどれくらい安定して速度出せるかと、どれくらい集中力を維持できるかってところだよな。そのあたりはどうなんだ?」


「集中力の維持に関しては問題ないと思う。外的要因がなければ数時間単位で能力使うことは珍しくもないし……問題は外の風と乗せる人間だな。速度は、ちょっと試してみたいことがあるからそれはおいおいだ」


「加賀の能力使えば加速はできるんだろ?それでよくね?」


 周介が考えていることも、玄徳の能力を使った加速なのだが、問題がいくつかある。そしてそれは試してみないことには分らないことだった。


「そうなんだけどさ、玄徳の能力は確かに単純な加速はできるけど、そのときにどういう動きをするのかがわからないんだよ」


「どういうことだ?普通にまっすぐ飛ぶんじゃないのか?」


「飛行機とか、そういう推進力を前だけに飛ばしてたり、羽で揚力を得てる感じだったらいいんだけどな。けどヘリってそうじゃないだろ?なんか一気に加速させるとプロペラ部分がへし折れそうでさ」


 周介が気にしていたのはヘリが飛ぶ原理に関してだ。飛行機のように地面と水平に推進力を発生させるような装置、エンジンなどを取り付け、翼の揚力を利用して飛行しているのと異なり、ヘリはプロペラによって得られる推進力を地面と水平ではなく垂直に設定している。


 角度を変えることで前進や後退をできるようにしてはいるが、力のかかる方向が全く違うのだ。


 玄徳の能力は一方向にかかっている速度の加減速を行うことが可能だ。そういう意味では単純な加速と減速は問題なく可能だろう。ここで問題になってくるのは機体にかかる力と、機体そのものの耐久力だ。


「あ、そっか。飛行機の羽とかは空気を受け流すような感じだけど、プロペラだとそんな感じしないもんな」


「そうそう、一気に加速して、それでプロペラへしおれたらそれこそ墜落だからな。ぶっちゃけ変に加速するのはラジコンとかから試していかないと危ない気がして」


「確かに、それはその通りだな。そのあたりはドクの管轄か」


 ヘリはプロペラ自身が空気を送り出すことで推進力を発生させているが、まったく別のところから推進力を得て、プロペラや機体そのものに別の形で負荷がかかった場合、どのような結果を産むのか、素人の周介たちでは判断できないのだ。


「まぁ、今回の依頼でいきなり加速はできないだろうから、地道に集中力と安定した運転ができるようにするしかないってことだ。気の長い話だよ」


「でも、もうゴールデンウィークは今週末からスタートだろ?その依頼はいつからなんだ?」


「あ、そういえばまだ聞いてなかったな。そろそろ話してくれないとちょっと困るな……あいつらの予定の話もあるし」


 周介だけの話ならばスケジュールという意味では別段気にすることもなかったのだろうが、今回は瞳や玄徳にも協力を頼んでいる立場だ。


 二人の予定を確定するためにも、そろそろ日程や詳細などは話してもらわないと生活にも支障が出る。


 というか、社会人である玄徳に関してはこのタイミングでは遅すぎるほどだろう。おそらく玄徳から自発的に周介にスケジュールの問い合わせなどはしてこない。いつでも周介に合わせると豪語するに決まっている。周介が気を回してそのあたりの調整をしておかなければ、玄徳だけではなく玄徳の職場の人間にも迷惑をかけてしまうのは想像に難くない。


 管理能力があまりにもない自分の頭に、周介はため息をつくことしかできなかった。


「隊長さんは大変だねぇ。そのあたりは今後もずっと続くわけで」


「中間管理職ってこんな感じなのかね……まぁ、頑張るしかないんだけどさ……って言うか、他の隊長はどんな感じなんだ?」


「俺は隊長になったことがないからわからないし、大体そんなもんじゃないのか?まぁ、でかいチームになるとどうなってるのかはわからないけどな。エイド隊とかビルド隊とか、ノーマン隊とかはすごくでかいチームだし。あとメイト隊もだな」


 周介が何度かかかわったことのあるチームはかなり大きいチームで、それなり以上に隊員がいる。周介たちのような少数ではないため管理なども大変だろう。


 まだ小さなチームでよかったと思うべきなのか、そういう大きなチームの中に入るべきだったのではないのかと、少し迷うところではあった。


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