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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
六話「空と大地の嘶きに」

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 周介はラジコンヘリの訓練の為に拠点内の散歩をしていた。


 散歩といってもただ歩くだけではない。ラジコンヘリを操りながら、拠点内を適当に歩き回るという傍から見れば遊んでいるようにしか見えないような訓練をしていた。


 時折歩く人にもぶつからないように一定の高度を保ち、適切な方向へ適切な速度で進み続け、時に停止、方向転換、再度加速など、能力のみを使ってのコントロールを行っていた。


 まだ満足に動かせるというわけでもないために歩く程度の速度だが、それでも普通にラジコンヘリとして運用はできている。あとはここから速度を維持し、タイムアタックでもするように移動していくことが必要となる。


「百枝君?何やってるの?」


 不意にかけられた声に、周介は聞き覚えがあった。それは園芸用の道具などを抱えた大門だった。

 どうやら例によって、庭園にしようとしている部屋の手入れに行くのだろう。


「大門さん、お疲れ様です。今ちょっと訓練中でして」


「訓練中って……そのラジコンの?」


「まぁ、遊んでるわけではないので。実は今度ヘリを運転しなきゃいけなくて、その練習なんです」


 ヘリの練習というなかなか聞き慣れない単語に、大門は数秒間どういうことなのだろうかと首をかしげていたが、少なくとも目の前で飛んでいるラジコンヘリが周介の能力によって飛んでいるということを理解したのだろう、なるほどねと苦笑しながらその様子を感心していた。


「なるほど、もしかして全部百枝君の能力でコントロールしてるのかい?」


「えぇ。なかなか難しくて慣れるまで時間がかかっちゃってますけど」


「すごいなぁ……前は重機を操縦してたよね?そういうことができるのはうらやましいなぁ」


 周介の能力は効果こそ単一ではあるが、かなり多くのことに応用可能な能力だ。対して大門は大太刀部隊ということもあって戦闘くらいにしか役に立たない能力なのだろうか、周介の能力の多様さを羨ましそうにしていた。


「細かい操作が難しいですけどね。荷物もちますよ。いつもの部屋ですよね」


「いいのかい?ごめんね。ありがとう、助かるよ」


 周介は大門の持っている荷物のいくつかを持つと、横に並んで歩き始める。そして周介たちから少し先行する形でヘリは飛び続けていた。


「すごいね、コントローラーなしで動かしてるんだ」


「最初は墜落しまくってましたけどね。ようやくまともに動かせるようになってきましたよ。って言っても、まだスピードはそこまで出せませんが」


 ある程度低い速度であれば安定して操れるようにはなったとはいえ、速度が付くとまた動き方が変わるためにこれが今の周介の最高速度といってもよかった。


 だがこの程度の速度では話にならない。こんなゆっくりとした速度では実機で目的地に到着するまでどれほど時間がかかるか分かったものではない。


 高速でなおかつ安定した動きが必要なのだ。少なくとも今回の依頼に関しては。


「でもヘリを操縦なんて、今度は一体何をするんだい?この間レッドネームを捕まえたって言うのは噂で聞いたけど」


「今回は人の運搬です。あんまり表沙汰になりたくないらしくて俺らに声がかかったんだそうです。空の上ならってことでしょうけど」


「なるほど……訳アリの運搬ってことだね。小太刀部隊は結構大変そうだなぁ……」


「あはは、でもどっちかって言うと大太刀の方が大変だと思いますよ?この間少し戦闘してそれをいやって言うほど思い知りました……地力は足りないし、うまく動けないし……怪我はするし……」


「確かにそれは、まぁ仕方がないよ。僕ら大太刀部隊がやることを君たちがやるのは大変だ。戦闘向きじゃない能力で前に出れば、その分危なくなる。とはいえ、いつも僕らが前に出られるとも限らないのが申し訳ないけど……」


 突発的な行動の場合、常に前衛向きの大太刀部隊の人間が出動できるというわけではない。事前に話の通っている依頼ならばともかく、犯罪者などが発見された場合や、暴れているところに緊急で出撃できる人間は限られる。


 そう言った時に、出撃しやすい自分たちが前に出るのはままある事だというのは周介自身理解している。


「いざって時は助けてもらいます。今度大太刀部隊の人に稽古をつけてもらえることにもなってるんで」


「そうなんだ。どんな人に?」


「それはわからないです。最初は鬼怒川先輩に話がいったみたいんですけど……鬼怒川先輩は教えるのは上手くないからって……」


「あー……うん、そうだね。彼女は人にものを教えるってタイプじゃないかな……こと戦闘に関しては特に」


 周介は鬼怒川の戦闘スタイルを知らないために大門の言葉にどのような意味が含まれているのか正確には理解できなかったが、大門のこの反応からしてどうやら鬼怒川の自己評価は自分自身を過小にしているというわけではないようだった。


 そういう意味では客観的に自分を見ることができているということになる。


 鬼怒川への評価が少し変わると同時に、彼女の戦闘スタイルというものがどういうものなのか強い興味も抱いていた。


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