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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
五話「同年大太刀小太刀」

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「さて、それじゃ簡単に打合せするか」


 周介たちは一度装備の確認を終えた後、宿泊施設から少し離れた場所で話し合っていた。近くにあった自販機で飲み物を買いながら、それぞれが適当にベンチや花壇の縁などに腰を下ろす。


「ドクの指定した時間は十八時。ちょうど俺らは食事時になるから俺らはその前に出る。出撃は俺、桐谷、福島、十文字、百枝、安形、加賀の七人。白部は、現場に来るか?」


「留守番してる。ついでに情報収集と伝達」


 白部の能力はお世辞にも現場向きとは言えない。そのためこの宿舎に残って情報収集を行い、同時に全員に伝達する役目が最も適しているだろうことはすぐに理解できた。


 白部の身体能力的にも、現場に行って何ができるわけでもない。本人もそれがわかっているのだろう、自ら留守番を買って出ていた。


「となると、動くのは七人だ。目標と接敵した場合のポジションは俺、百枝、加賀、十文字の四人が前衛、後衛は桐谷、安形、福島の三人。何か異論は?」


 前衛と後衛という別れ方、戦いの上で別に間違った話ではないのだろうが、その別れ方には周介としては異を唱えたかった。


「あのさ、俺と玄徳に関しては前衛で行けるとは思えないんだけど……」


「俺の手からあんだけ逃げられる奴がフロント張れないとは言わせねえぞ。加賀も同様だ。他に異論は?」


 どうやら手越の中では周介は前衛で十分通用するだけの能力を備えていると確信しているようだった。


 周介からすればまったくもって心外である。相手の能力に晒されて逃れられるとは思えないのだ。


「はいはーい。百枝がきついって言うならよ、俺別に前の方でもいいぜ?」


 堂々と手を挙げて前に出ても問題がないようなことを言ってくれる福島に、周介は初めて感謝していた。


 だが手越は問題があるのか、渋い顔をする。そしてその場にいる全員を見渡して首を横に振った。


「このメンバーなら福島は後衛のほうがいい。俺だけならまだしも安形もいるんだ。お前の能力使えばかなり火力が出る。それにミーティア隊がフルメンバーで参加するなら、お前はいつでも下がれる後衛にいたほうがいい」


「んー……まぁそうか。オッケー。悪いな百枝」


「いや、もう諦めた。あとはどうにでもなれだ」


 福島の能力がどのようなものなのかはさておいて、少なくとも大太刀部隊としての火力を遊ばせておくのはもったいない。


 趣味で前に出るよりも、チームとして動くことを優先するべきだということを福島もわかっているからか素直に従っていた。


「今回は後衛と前衛で別れてるけど、福島、お前は前衛と後衛の中間くらいの位置についててくれ。補給線を構築できるまでは結構頻繁に動いてもらうと思うから頼むぞ」


「いつものことだから気にしなくていいぜ。あっちこっち動くのも俺らの部隊じゃ珍しくないしな」


 ミーティア隊は後方の狙撃部隊だ。狙撃場所を変えるために移動することもそう珍しいことではないのだろう。


 福島は慣れたような感じでその申し出を了承していた。


「基本的な隊列はさっき言った通り。次は役割分担。前にも言ったと思うが盾役をラビット隊に努めてもらいたい」


「おいおいウサギに盾になれってどんだけ鬼畜だよ手越さんよ。いやマジで死ぬぞ俺」


「別に相手の攻撃を受け止めろとは言ってねえだろ。相手の攻撃を引き付けてくれればいい。安形、相手の攪乱、頼めるな?」


「平気、百枝、玄徳、あたしの人形を隠れ蓑にしてうまく立ち回れば相手の攻撃も避けられるから。そのあたりはうまくやって」


「了解っす姉御!」


「頑張るけど、どうしようもなかったら助けてくれよ?」


 周介は助けを求めるような目を手越たちに向ける。手越たちも、周介が初めての戦闘に立ち会うということをわかっているからか笑いながら『大丈夫大丈夫』と手をひらひらさせている。


「攻撃で相手の牽制、安形と俺の手で相手の攪乱、あとはお前らが動き回って相手の攻撃を引き付けててくれればうまく相手を抑え込んでやるよ。十文字、福島、火力の維持は任せたぞ。俺と安形で連携して補充はする。桐谷は状況を見て補助頼む」


「了解。って言っても時間かかるから、そのあたりは許してね」


「わかってるって。前衛と後衛のそれぞれの役割は以上だけど、なんか質問はあるか?」


 大まかな流れを説明した手越に、誰も質問の声は上げなかった。機動力を活かした回避、そして人数差を覆す能力によって補給と援護、それ以外の能力で火力を維持。相手との戦いで現段階でできる最善を選択しているように見えた。


「質問はないみたいだな。んじゃ白部、今のうちに相手の情報を一通りくれるか?そろそろ情報そろってきてるだろ」


「ん。今までの行動と攻撃方法はもう集まってる。そのあたり一つずつ話していくから、全員頭に入れて。映像があるものとないものがあるから、そのあたりは自分で補完して」


 白部はそういって携帯に映像を映し出していく。パソコンだけではなくこういった電子機器なども操ることができるのだろう。彼女の能力は現代社会においてはかなり有用であるようだった。


「にしても手越はすごいよな。あんだけポンポン作戦思いつくんだから」


 白部に見せてもらった情報を咀嚼し、頭の中に刻み込みながら周介は何となく手越にそう言っていた。


 単純に経験の差というのもあるだろうが、現時点でここにいる人間で攻略作戦を考え、それを指示できるというのは簡単にできるようなことではない。少なくとも現時点で同世代の能力も正確に把握していない周介にはできない。


「ん?別にすごくねえよ。現場に出てるとこういう突発的な指示とかよく飛んでくるから、それの真似だ。こいつらの能力はよく知ってるから作戦立てやすいってのもあるしな」


「ふぅん……でもさ、なんでビルド隊とか今回作戦に参加するやつらの話はしなかったんだ?ミーティア隊とか全員参加なんだし、そっち主体にしてもよかったんじゃないか?」


 先ほどの説明の中では周介たち全員の動きは出ていたが、すでに動くことが確定しているほか部隊の動きに合わせるとか、どのように連携をとるという話はなく、あくまで自分たちの中だけに限った話だった。


「単純に向こうがどう動くのかわからなかったしな。さっきも言ったけど、ミーティア隊が来るってわかってたから福島を後方に置いたくらいで、それ以外の動きは読めねえんだよ。ミーティア隊はともかく、他の部隊は誰が来るのかもわからないし。俺らはあくまで俺らで動いたほうが、いろいろ楽だしな。福島がいないと火力の維持ができないし」


 他のチームと合流すればその分連絡は取りにくくなる。特に後方からの狙撃を主としているミーティア隊とは行動場所が離れてしまう可能性があるのだ。


 やるのであれば、継続戦闘能力を維持する方向に考えただけの話だろう。


「そっか……手越は今回みたいなやつと戦ったことはあるのか?」


「一応な。俺の苦手なタイプだよ。単純に力が強いだけだったら抑え込める自信はあるけど、今回の奴は物体依存だからな……」


「小太刀でもこういう風に戦うことがあるのか?結構頻繁に……」


「まぁな。それこそ大太刀が出るまでもない敵に関しては割と頻繁に戦うかもしれないな。俺の場合今まで足止めの方が多かったけど」


「いやだなぁ……戦いたくねえよぉ……」


 周介はうなだれながら頭を揺らしている。お世辞にも格好いいとは言えないその姿に、手越は少し呆れてしまう。


 周介の気持ちがわからないでもないが、もうこうなってしまっては腹をくくるしかないのだ。あれこれ弱音を言ったところで何も変わらない。それは手越もよくわかっていることだ。そして周介も同様である。


「お前、作戦行動になると肝が据わる癖にこういう時は本当に弱音吐くな。おい安形、お前のところの隊長こんなので平気なのかよ」


「平気。いざって時はやる奴だし」


「うちの兄貴はそんじょそこらの奴とは違うんだよ。見た目で騙されてっと痛い目見んぞ?」


「……なんかチームメイトからの信頼は厚いみたいだな」


「ありがたいんだけどな……嬉しいんだけどな……素直に喜べないのはなんでなんだろうな」


 平時においては冷静に物事を考えることができる周介だが、現場に出たり感情が出たりすると冷静に物事を考えることができないという欠点を抱えてしまっている。


 それは隊長としてはあってはならない欠点であると周介自身自覚していた。だからこそこの信頼が重荷にもなっているのである。


 もちろん、だからこそ改善しようという強い気持ちも浮かぶのだが。


「とにかく頼むぜ?お前らが前でしっかり支えてくれねえと俺らも火力集中させられねえんだからよ」


「努力はするよ。でも舗装された場所でもないんだろ?山とかそういう土の場所だろ?なおのこと苦手な場所だわ」


 周介は今まで山岳地帯や森林地帯などで活動したことはない。どちらかというと街中での活動が主だったために、そういった場所における高速機動というのは試したことがなかった。


「とりあえず安形、玄徳、お前らメインで上手く動いてくれ。俺もなるべくそれに合わせて動くから。特に玄徳、動き回るうえに一番能力酷使することになる。かなり大変なところだ。悪いけど頼むな」


「何言ってんですか、任せてくださいよ兄貴」


 玄徳は強面な顔で全力の笑みを浮かべて胸を叩く。笑っているはずなのに恐ろしく見えてしまうのは単純に玄徳の笑顔が一種の凄味があるからだろう。


 全力で頑張ろうとしてくれている玄徳相手に『お前の笑顔怖いよ』などといえるはずもない。周介は申し訳なさそうに笑いながらゆっくりと体を起こす。


「それでお前は?安形と加賀を動かして、高みの見物か?」


「そんなことしねえよ。こっちはこっちで動く。ただ、二人ほどの活躍はできないかもってだけだ。単純に場所が向いてないかもだからな」


「……まだわからないってことか」


「森とか山では動いたことないからな。どうなるかは出たとこ勝負だ」


 そう言う周介の目は、先ほどの情けない声を出していたのと同一人物とは思えないものだった。


 一種の覚悟を決めたような、諦めたような、そんな目をした周介に手越は内心苦笑する。


 ある意味現場向きの性格をしているなと、そう考えながら。


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