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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
五話「同年大太刀小太刀」

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 千葉県の房総半島。天気によっては東京都や神奈川県からもその姿を臨むことができるその場所は、長く伸びた千葉県の形をよく見ることができる場所でもある。


 山間部も多いがその分平野も多く、農業、畜産といった一次産業が盛んな土地でもある場所だった。

 そんなところに、粋雲高校が所有する宿舎はあった。


 宿舎というのは正確ではないかもしれない。より正確に言うのであれば宿泊を含めた総合施設というべきだろう。


 宿泊棟、そして小規模な体育館や会議室などが配置された第一棟、そして食堂や大浴場の配置された第二棟などに分かれている。


 さすがに過去国が主導で作った学校ということもあって、この辺りの設備は充実しているようだった。


「えー、今日ここで一泊することになるが、その際の注意点を伝えておく。寮生はいつもの寮と同じルールだから気にすることはないと思うが一応聞いておくように」


 バスから降り、それぞれ整列したところで教師からの説明が入る。普段周介たちが聞かされている寮のルールに似通っている。と言っても周介たち組織の面々はそう言ったことはあまり守っていないのだが。


 天気はやや曇り気味。雨の心配はないだろうが、そこまで気温が上がっていないことを鑑みると、今日このまま天気が悪いままなら気温はそこまで上がってはくれないだろう。


「以上だ。昼食は十二時から。それまでは自由時間とする。部屋に荷物を置いて解散!」


 教師の説明を聞き終わると、全員が荷物を置きに宿泊棟へと向かう。この辺りには基本的に商業施設などはない。あるとすれば小規模な体育館で遊ぶ程度だろうか。それ以外に特にすることがない生徒たちはこの建物やその周辺を散策するということを主に行う者、単純に昼食まで暇をつぶすもの、そして周介たちのように特定の人物たちで集まるものと、それぞれ散らばっていた。


 荷物を置く宿泊棟は四人部屋だった。二段ベッドが二つ存在し、それらを挟むようにテーブルなどが置いてある独特の部屋だ。


 窓からのぞく景色は木々が生い茂っており、曇りということもあってか日の光もそこまで入ってきていない。


 周介たちは荷物を置き終えると、あらかじめ連絡しあって一か所の会議室に集まっていた。


 部屋の中にあるのは長机とパイプ椅子、そして何かの発表をするためのものだろうか、ホワイトボードが取り付けられており、天井にはプロジェクターの装置などがあった。


 鍵をかけ、誰も入ってこられないようにすると同時に、全員がいやそうな顔でため息をつく。


「さて、さっきの話だけど……白部、どのくらい情報集まってる?」


「正直あんまり。けど最低限は集められてる。良いニュースと悪いニュースがあるけどどっちから聞きたい?」


 映画などでよくある言い回しだなと、周介は呆れながら全員の顔を見る。明らかに面倒くさがっている表情だ。少なくとも現状白部の情報を聞いてもいい顔はできないだろうことは予想できる。


 というか、ドクが話をしてきた時点で間違いなく悪いニュースに違いないだろうということはすでに分かっているのだ。


「とりあえず良いニュースから教えてくれるか?」


「今回組織が確認した能力者は、ブラックネームには入ってない」


「……あぁ、なるほど。そりゃ良いニュースだ」


 手越がわざとらしく大きなため息をつくが、そのため息がどのような意味を持っているのかは周介には分らなかった。


 そしてブラックネームという聞きなれない単語に、周介は瞳に助け舟を求めるように視線を向けた。

 瞳も周介に解説してやるべきかと、小さくため息をついて携帯をいじり、ある画面を表示させた。


「組織の中で今まで捕まえようとしたけど捕まえられなかったり、逃げられたり、問題を起こしてるような能力者をリストアップしてんの。本名がわからなかったりするから、そういうやつは能力とか外見の特徴で仇名をつけてるわけ。一番やばいのがブラックネーム。もう何十年も捕まってないやつとかいるレベルの」


「指名手配犯の能力者版って感じか。ブラック以外だとどんなのがあるんだ?」


「ブラックの次に危険なのはレッドネーム。これはすでに何度も大きな犯罪行為をしてる連中だから、もし遭遇したらやばい、即座に捕まえなきゃいけないって感じ。他にも軽犯罪を何度もやってる連中とかもいたりするから、そのあたりはおいおい覚えてけば?こういう風にリスト化されてるから」


 周介は瞳からそのリストを見せてもらいながら「ふーん」と呆けたような声を出している。実際名前と言っても実名ではなく通り名のようなものだ。それらを見てもピンとこないのは無理もないだろう。


「で、次に悪いニュースを聞こうか?何となく嫌な予感しかしないって感じだけど」


「ん。昨日の時点でここから二十キロ程度の地域で目撃されてるレッドネームがいる。それがこちらに来る可能性が高い」


「……あぁ、やっぱり嫌な予感的中だよ」


 現在位置から二十キロ地点というとそこまで遠くはない。車などであれば三十分もあれば行ける距離だ。


 そんな場所に、大きな犯罪を行ったことのある能力者が潜んでいるということに、周介は驚愕せざるを得なかった。


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