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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
五話「同年大太刀小太刀」

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 海ほたるという場所は東京から千葉に高速を利用する際のサービスエリアのような形で存在する施設だ。海の上にあり、食事や土産物などを提供しており、そこから見える景色などを楽しむのもよいだろうと思える施設である。


 海の上にあるということもあって、これから向かう房総半島なども見ることができる。もっともその日の天候が良ければの話なのだが。


 周介たちも休憩時間でそれぞれ外に出てみるのだが、正直あまり天気は良いとは言えなかった。


 天気が良ければ、また違った景色を臨むこともできたのだろうが、曇った空ではあまり良い景色を見ることは叶わなかった。


 だがそれでも、そこに売っている食べ物や土産物を見て、それらを写真に撮る生徒たちは十分満足しているようにも見えた。


 中にはすでにここに来たことがあり、それをほかの生徒に教えている者もいる。周介はクラスの友人と一緒にそれらを回っているのだが、不意に周介の腕時計が鳴る。


 それがどういう意味を持っているのか、周介は即座に理解していた。


 念のため音が出ていることを確認してから携帯で同世代の能力者たち全員に確認をとることにした。


『今鳴ったけど、呼び出しか?』という周介のメッセージに、それぞれが同じように呼び出し用の端末が鳴ったということを認識していた。


『昨日の奴かな……ちょっと確認するか?』『全員で確認してももったいないだろ。誰か代表で確認するか』と、それぞれが案を出す中で誰が一番適任であるのかという話になってくる。


 確かにここにいる同世代の能力者七人全員がそれぞれ確認したところで意味がない。誰かが代表して話を聞くのが最も効率が良いだろう。


 確認をする相手はドクになるだろうが、では誰が?という話になるのは当然の話である。


『この中で一番地位のある人間が聞くべきだろうな』という手越の意見に対し、誰も反論をする者はいなかった。


 だが地位も何も、この同世代の中で誰が上などと決めたことはない。となれば年功序列、もとい組織内での経験年数になるのではないかと周介は考えた。


『ってことは、昔からいる手越か安形になるわけか?』と周介が返答すると、手越からは『何言ってるんだよ』とあきれた返事が返ってきた。


 一体どういうことなのだろうかと困惑していると『この中で隊長なのお前だけだろ』という返答が携帯の画面に表示される。


 隊長が自分だけ。そして一番地位のある人間。この二つの言葉に周介は一瞬思考が停まったが、即座にそれを理解して『そういうことなの!?』と返事を送っていた。


 確かにこの一学年の能力者の中で隊長の地位に立っているのは周介だけだ。とはいえ、半ば瞳から押し付けられただけの隊長なのだ。はっきり言って地位も何もあったものではない状態であるのは周知の事実である。


 だが確認をするのが面倒くさいからか各所から『頼むぜ隊長』『任せた隊長』『お願い隊長』といったメッセージが次々飛んでくる。自分が面倒なことをやりたくないという感情がこれらの文面からふつふつと伝わってくるようだった。


 周介は若干不満に思いながらも、多数決というのは絶対だ。面倒くさいことを他人に押し付けるという考えで一致団結してしまった同世代の人間に対して周介が言えることはほとんどない。


 これもまた隊長になってしまったことによる弊害なのだろうと、周介はため息をついて『わかったよ……』と返していた。


 そしてとりあえずドクに電話をすることにする。


 周介がコールをすると、即座にドクは電話に出ていた。


『もしもし周介君かい?君が連絡をしてくるとは思わなかったよ。てっきり安形君か手越君辺りだと思ってたんだけど』


「俺だけ隊長なんだからって押し通されました。それで、何かあったんですか?」


『それは災難だったね。まぁ、ちょっとした話さ。もしかしたら今回の旅行中、ちょっとだけお手伝いしてもらうかもしれないから、そのあたりをあらかじめ伝えておこうと思って』


 お手伝い。それがどういう意味を持っているのかは周介はよくわかっている。どうせろくでもないことなのだろうなと予想して、今回旅行にやってきている同世代の周介を含めた七人。周介、瞳、手越、桐谷、白部、福島、十文字が能力者としての活動をするかもしれないということなのだろう。


 とはいえドクはまだそのあたりの指定はしていない。まずは確認が必要だろうと、周介は周囲の視線を気にしながら電話を続ける。


「具体的には、俺らの中の誰が、どのような内容ですか?」


『具体的な内容はまだわからないけど、たぶん全員になるだろうね。もっとも、後方支援しかできない白部君はちょっと例外的かもしれないけど』


「なるほど、全員で……内容はわからないと。時間もわからないんですよね?」


『そうだねぇ、せっかくの旅行中に本当に申し訳ないと思ってるよ。本当だよ?』


「その割には声が楽しそうですけど?」


『おっとしまった、これは失礼。けど、一応こっちだけで何とかできないか頑張ってはみるよ。情報は流しておくから、白部君に詳細は確認してもらえると助かるかな。白部君は今一緒にいるのかい?』


「いいえ、バスで寝てます。昨日徹夜だったといってたんで」


『あぁそうだね、そうだった。彼女にも悪いことをしたなぁ……とりあえず、全員にその旨を伝えておいてくれればそれでいいよ。ごめんね、本当に』


 楽しそうな声をだしながら通話を切ったドクに対してあきれながら、周介はドクの言っていた内容をメッセージで全員に伝えることにした。全員の反応としては『またかよ』というものだった。


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