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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
一話「蒼い光を宿すもの」
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0021

「なかなかどうして、君の能力は興味深いね。特定の条件で発動するということもあって基本性能は高い。尖った能力であるが故の強みというやつだね」


「俺としては、もっと汎用性が高い能力がよかったんですけど……でも俺以外の能力者はどういう能力を持っているんですか?」


 周介が思い浮かべる能力者というのは、あの電車の中で周介を捕まえたあの人物だった。


 一体どういう原理なのかはわからないが、あの時周介を捕まえた状態で空を飛んでいた。おそらく周介の能力と同じように何かしらの条件があり、特性があるのだろう。


 少なくともあの状況では周介はそれを理解することはできなかった。


「どういう能力か……前にも言ったけど、味方であっても能力の詳細を知っているのは危ないことだよ?」


「それはわかってます。ただ、俺の能力がすごいってドクは言ってくれますけど……その……あんまりそんな気がしなくて」


 いくら指導係になっているドクが素晴らしい能力だと説いて見せても、周介からすれば回すだけという能力は非常に弱い部類にあるのではないかと思えてしまう。


 ただ物体を回すだけ。強力な攻撃を放てるわけでもなく、特別な効果を及ぼすわけでもない。


「んー……そうだねぇ。じゃあ能力の制限とその特性について話をしていこうか。能力にはいくつか種類がある。制限のあるもの、ないもの。効果が限られるもの、限られないもの等、様々ある。君の能力で説明していけば、君の能力は『狭限式複合二種単一型念動力』と表現できるね」


「……めっちゃ限定されてるって感じがしますね」


「そうだね。効果を発揮できる対象も制限されていて、なおかつ発揮できる力も限られている。そしてただの念動力だけではなく、知覚するための能力まで備わっている。でもこの限定されているというのが君の強みでもある。能力というのは不思議なものでね、限定されていればいるほど、その効果が高まるという性質があるんだ」


 限定されていればいるほど。つまり周介のように効果を発揮する対象も、その効果も限られている場合はその分効果が高まるということであるらしい。


 だが周介にはそれがどういう意味を持っているのかを正しく理解することはできなかった。


 そしてその様子を見て、周介が疑問符を飛ばしていると感じたのか、ドクは苦笑しながらどう説明しようかと頭をひねり出した。


「例えばそうだね。対象を制限されていない念動力、サイコキネシスを持った能力者がいたとしよう。そして君の能力が衝突すると、どうなると思う?」


「……回してるだけじゃ勝てないから負けると思います」


「ごめんごめん、衝突っていうのはそういうことじゃないんだ。君が物体を回そうとしていて、サイコキネシスを持った能力者がその物体を止めようと力を加えた場合、どちらが勝つのかという話さ。マナの消費量は同じとしてね」


 能力がぶつかり合う。互いにどのような効果を持っているかどうかはさておき、同じ種類の能力がぶつかった場合どのような効果を及ぼすか。


 以前話をしたことがある、強い弱いの話につながることでもある。マナの消費が大きければ当然出力が高くなる。そんな中、限定された能力と限定されていない能力がぶつかった時どうなるのか。


 周介は今までの話の流れから、その結果を予想していた。


「限定されたほうが勝つんですか?」


「その通り!特定の条件下において特定の効果を望んだ時、より限定された能力の方が高い効果を発揮するのさ!水が出るホースの注ぎ口を狭めると勢いが変わるようなイメージかな。もし、限定されていない能力で君の回転を止めようと思ったら、君の消費よりもかなり多いマナを消費することができる能力者でなければ止められないということだよ。能力の限定というのはそういう意味を持っているのさ。君の回転は、簡単に止められるようなものではないってことだね」


 簡単には止められない。逆に言えば止めるのは難しいが止められないわけではないということでもある。

 そして先ほどから気になっていることを周介は聞くことにした。


「限定されていない能力があるってことは、どんなことでもできる能力もあるってことですよね?それってどんな能力なんですか?」


「なかなか難しいことを言うなぁ。少なくとも僕が今まで見てきた能力の中で、どんなこともできて、どんな効果も持っていて、まったく制限も限定もない能力というのは見たことはないよ。それに近いものはあるけどね」


「どんな能力なんですか?」


 周介はその能力に非常に興味があった。どんなことでもできる。そんな能力があるのであれば、それこそなんでもし放題だ。望んだことはすべて叶うだろう。


 だが周介の考えを察してか、ドクはため息をつきながら首を横に振る。


「いいかい周介君。この世の中に、どんなことでもできて、何でもできて、望むように何でもかなえられる。そんな都合のいい能力は存在しないんだよ」


「でも、それに近い能力はあるって」


「うん、見たことはあるよ。でも、その能力はありとあらゆることができる代わりに、その一つ一つの出力が小さすぎてね。はっきり言ってほとんど能力としての役割を持っていないんだ。普通に生活していて、道具に頼っていたほうがまだ手早く行動できるレベルでね」


 ありとあらゆることができる代わりに、その一つ一つの性能が低い。それは能力の一つの特性でもあるようだった。


「間違えてはいけないよ?僕らがもっている能力はあくまで人間がもつ代謝の一つだ。人間の才能の一つだ。もちろん才能に恵まれた者もいるだろうけれど、人間一人ができることなんてのは大したことはないんだよ」


 それはなぜか非常に説得力のあるセリフだった。なぜそう思ったのかはわからないが、周介はドクのその言葉がとても重く、強いものであるように感じていた。



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