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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
四話「小動物が生き残るために」
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「後はそうだな……今回、お前は殺さずに捕まえたいんだよな?」


「一応、そのつもり」


「なら、その動物がどんなことに弱いのかも知っておくべきだな。さっきも言ったけど、インコとかってめっちゃ弱いぞ?猫だって小さければ衝撃とかにはめっちゃ弱いし、犬だって猫とそう大差はないからな。武器とか装備で捕まえるならそういうのを考えていたほうがいい」


 動物を捕まえようとするというのに道具なしで捕まえろというのはなかなかに難易度が高いといわざるを得ない。


 単純に移動するだけでも速度が違いすぎるのだ。鳥に至っては空を飛べる時点でかなり活動圏に違いが出てくる。


 そういう動物を捕まえようと思ったら文明の利器に頼るほかない。そうなればどういった装備であれば耐えられるのかを考える必要が出てくる。


「道具を使って捕まえるなら、トリモチとか網とかを考えてたんだけど、それじゃ無理かな?」


「無理だとは言わないけど、それで捕まえるなら相当速い相手を捕まえなきゃいけないぞ?たぶんだけど、単純な犬猫のダッシュは俺の手よりも速いから、結局待ち伏せするしかない」


 手越は自分の手を動かすようなそぶりをして能力を使っていることを示唆するが、手越の手よりも素早いとなると捕まえるのはかなり苦労しそうだ。


 縦横無尽に、しかもその瞬発力も人間のそれをはるかに上回る。そんな動物に対して適切に道具を使うには相手に動きを予測するほかない。


「なんか囮に使える道具とかないのか?猫とか犬をおびき寄せる的な」


「俺はそういうの専門じゃないから何とも言えねぇな。普通に野良化しかけてるなら食い物でいいんじゃないのか?適当に用意すれば集まってくんじゃねえの?」


 手越もこういう捕獲系の依頼は受けた数が少ないからか、そこまで具体的な意見を言えるわけではないようだった。


 だが彼は捕まえてその場に留めるということに関しては一家言持ちだ。それ専門の部隊に身を置いているのは伊達ではないということを周介は訓練から知っている。それならばと周介は視点を変えてみることにした。


「じゃあ動物とかの捕まえ方はいいから追い込み方を教えてくれ。なんかわかるか?」


「追い込み方ならわかる。相手が自分よりも素早い相手ならなおのこと楽だ。お前にやったのと同じだよ」


 そう言って手越は自分の手を周介の目の前に突き出し、その手を開いて周介の顔を覆う。


「人間の場合で言えば視覚と聴覚に働きかけることでかなり動きを誘導できる。特にわざと相手に見せる動きってのも大事だ。相手が見て、こっちは相手に与えた情報をもとに動き方を組み立てる。陽動の基礎だ。人間相手なら確実に追い込める」


 それは何回も同じようなことをしてきたという経験からくる確信だった。その技術に関しては手越独自のものだろうが、周介はそれを直に体感している。だからこそそれが不可能ではないということもわかるし、うまくいくと簡単に追い込むことができるということも知っている。


「けど、今回の相手は犬猫鳥だ。視覚はともかく、聴覚に関しては人間よりもずっと優れてるだろうから、そのあたりはうまく誘導する必要がある。場合によっちゃわざと音を出すのもいいかもしれないな」


「わざと?うるさくするって意味か?」


「それもある。相手の情報を多くしてやればいい。どの情報が正しいのか、どの情報が間違っているのかもわからないくらいに混乱させてやればいい。ただ、相手が野生に染まりきってないペットだってのも忘れんなよ?動物ってのは本能で動くけど、ペットにされてた動物は野生を失うこともあるからな。動物園のライオンとかまさにそれだろ?」


 動物園でダラダラとしながら欠伸をしているライオンの姿を思い浮かべて、確かに野生などあったものではないなと周介は苦笑する。


 本物の、という表現が正しいかどうかはさておいて、サバンナなどにいるライオンの姿を見たことがない周介からすれば、動物園の檻の中で欠伸をしているライオンなどは全く夢のない存在である。


 とはいえ、身近にイメージできる具体的なライオン像でもあるためになんとも言い難い。


 あのように野生を失った状態であれば、予想よりもずっと楽な方法で捕まえることはできるかもわからなかった。


「見えるものと聞こえるもの……か。うん、参考になった。悪いな手越、いろいろアドバイスもらって」


「別にいいって。何なら手伝うか?うちの隊ならともかく、俺は別に手伝ってやってもいいぞ?」


「ありがとな。けどとりあえずは俺らだけでやってみる。もしどうしようもなくなったらヘルプ頼むわ」


 手越の申し出は素直にありがたかったが、毎回手越の助けを借りているわけにもいかない。今回の依頼は自分たちが中心になってやるという話になっているのだ。


 手越の力を借りるのは、自分たちだけではどうしようもなくなってしまった時でも遅くはない。少なくともそれはいまではない。


「あともう一つ、相手のどれかは能力を持ってるって考えで動いたほうがいいぞ?油断すんなよ?油断すると痛い目見るかもしれないぞ?」


「わかった、覚えておく。なんか実感のこもった言い方だな」


「これでも一応いろいろと経験してるからな。優しい同級生からのアドバイスは素直に聞いておけ」


「そうするよ」


 手越の忠告は言葉に重みがある。おそらく昔何かあったのだろう。手越が痛い目を見るような何かが。


 周介としても手越の忠告を無碍にするつもりはなく、そのアドバイスを胸に刻んでいた。


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― 新着の感想 ―
[一言] どれがどんな能力持ってるかわからない上に全部一緒にいるわけでもなさそう。能力も自身含めて範囲内の生物に効力が及ぶとすると捕獲のために近づくのは躊躇われるかも?
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