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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
番外編『世界の垣根を超え崩す』

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「っていうのが、現状の情報だ。活動開始が現地時間明朝六時から。何か質問は?」


 周介は一度あてがわれたホテルに向かい、今回参加する人間全員に件の情報を話していた。


 その話を聞いた各員、今回参加しているラビット隊、アイヴィー隊、ミーティア隊、ビーハイブ隊の全員がその説明を聞いて渋い顔をしていた。


「正直言って、予め予想していたのが半分。もう半分の、そのどでかい爆発ってのがあまりにも衝撃的すぎて何も言えないんだけど……つーか、アメリカはこの情報マジで隠してたのかよ?」


「スターズの言い分が正しければな。アメリカの方は予知の情報は完全に現場に降りてこないらしい。何を思ってこの情報伏せてたのかは不明だけど……ま、うちの方にも予知がいて助かったよ」


「他の国にだって予知能力者はいるだろう?情報は出てこなかったのか?少なくともそれだけの被害が出るという情報に関しては?」


「フシグロ、そのあたりどうなんだ?」


『公式の回答として、各姉妹組織から得られた情報……というか表明は、過去確認した際そのような予知を確認することができなかった。何かしらの影響で未来が変わったと思われる……だって。ちなみにその報告を出したのは、大体パナマ運河の利権に強く絡んでる国の組織ね』


「……要するに、パナマ運河が拡張されれば嬉しいと思ってる連中ってことね……よくもまぁ、こんだけの状況になるってのにだんまり決め込んでられたもんだな」


「よかったのか?周辺の国からにらまれるんじゃないか?うまくいけばパナマ運河もスエズ運河のように拡張されて……利益が生まれたかも……なんてところを邪魔したわけだろう?」


「その辺りは知ったこっちゃないですよ。俺らはあくまで事件が起きるのを止めるだけ。その後のいざこざは当事者同士でやってもらいます。いちいち俺たちが関わってたんじゃ面倒くさくて仕方がない」


 周介は完全にそのあたりのことは割り切っていた。


 利権云々の話に首を突っ込むと面倒なことになるのは目に見えている。少なくとも数億どころの話ではないのだから、それだけ大きな思惑が存在しているか分かったものではない。そんなものに関われば最悪命にもかかわるだろう。


 だからこそ周介はそのことには関わるべきではないと決めていた。


 そもそもアメリカや周辺の国、及び今回の作戦に参加している国の予知部隊がどこまでこの状況を把握できていたかどうかも怪しいものだ。


 周介は個人的に美鈴と関わりがあるからこそ情報をダイレクトで得ることができるが、他の姉妹組織の中でどうなっているかは、アメリカの一例をあげるとよくわかっていない部分が多い。


 上層部が握りつぶしてしまえばそこまで。現場の部隊は情報を得ることもできないというのは問題のように思える。


 ただ、それもまた当事者同士の問題だ。周介たち部外者が関わるようなことではない。


「未来予知のことはさておいて……現場の体制はどうするんだ?こんなでかい爆発が起きるんじゃ、近くには行きたくないんだが」


「ドクからは南側のパナマ運河の出入り口で待機することを進められました。一応俺もその意見には賛成します。ただ、爆発が起きた時に空中……特に航空機に乗ってたりすると墜落のリスクがあるのでそこはちょっと考えなきゃですね」


「そこは俺の能力で何とかできるだろう。空中に固定しておけばいいんだろう?」


 小堤の能力を使えば物体を空間に固定できる。いくつかの航空機を空中で固定しておけば、少なくともいきなり爆発が起きたとしても墜落という可能性はかなり低くできる。


 こういう時にアイヴィー隊は本当に痒い所に手が届くいい能力だと周介は何度も頷いていた。


「お願いできますか?であれば空中待機が好ましいですね。上空で何が起きてるかも把握しやすくなるし……あ、そうだ。後桐谷に頼みがあるんだけど」


「何?珍しい」


「今回の作戦範囲の広域に、桐谷の索敵を……っていうか霧を張り巡らせてほしいんだけど、頼めるか?」


「今回の……ってことは川沿い?ならそこまで苦労はしないけど……またどうして?」


「隠匿系の能力を持ってるやつ相手に有効な手段が疑似的な索敵らしい。うちの索敵手と並行して索敵して、相手の位置を割り出す。霧を展開するのにどれくらいかかる?」


「そうね……水の近くだし……この辺りは風もそこまで強くはないから……三時間貰えれば。後船、ボートとかあれば用意してくれる?明日の作戦開始時間までには終わらせておく」


「わかった。頼む。今回の俺たちはあくまで南側の対処だ。能力の発動から、初動の発動点を割り出してその周辺にいると思われる敵を拘束する。殺すのは厳禁。仮に殺したとしても頭だけは無傷が好ましい」


 クエスト隊の板井がいれば、死体からでも情報を得ることは可能だ。


 そう言う意味では相手が生きることは絶対条件ではないが、それでもやはり生きていたほうが情報は集めやすい。


「他に何か質問は?」


「いつも通りやれってこったろ?むしろこの国の連中がどこまで派手にやっていいのか、その辺りの許容の話を聞きたいもんだね」


 福島の言葉に、大太刀部隊の面々は苦笑する。いつものように暴れていい。その許可はすでに出ているとはいえ、問題はどこまでやっていいかというところだ。


 実際他国で暴れるのだ。どこまで壊してはいけないだとかそういう話にもなってくるだろう。


 環境破壊だってやらなければいけなくなるかもしれない。そうなると、パナマ側がどのように判断するかそのあたりは上層部が決めることだ。



「もうパナマ側からすれば被害を少しでも減らせればって思ってるだろうよ。多少派手に暴れても……っていうか暴れなかったらもっとひどいことになるんだろ?」


「まぁ、実際この辺りマジですごいことになってるしな」


 全員の端末に映し出されている被害の状況は、スエズ運河のそれと似通っている。南側の被害の状況も画像を出力してくれたため全員でそれを確認することができていた。


 川幅が強制的に拡幅され、元々河辺だった地面が数キロにわたって完全に陥没。そしてその陥没した分の質量を穴埋めするかのように数キロ離れた場所が隆起し山脈のようになっている。


 川を隔てる形で完全に地形が変わっているのだ。


 それが川幅が狭い場所全てで行われている。逆に言えば川幅が元々広い場所にはこの被害は起きていない。

 もっとも、川幅が広い場所には人はあまり住んでいないため、川幅が狭い場所の被害の方が甚大だ。


「パナマ政府からは被害を減らしてくれるなら多少の地形の破壊は仕方がないと答えを貰ってる。ただし、山火事みたいなのは勘弁だそうだ。延焼すると厄介だから……ミーティア隊、そこは気を付けてほしいです」


「了解。使用火器は厳選しよう。逆に言えばそれ以外は問題ないってことだな」


「はい。さっきも言いましたけど、相手が死ななきゃ何してもいいです。殺しちゃった場合も頭だけは保護してください」


 最悪殺すことも視野に入れているメンバーの中でも、まだ実戦経験の少ない人間は殺すということに強い忌避感を覚えていた。


 もちろんこの中の誰もが、別に殺したくて殺すわけではない。致し方なくそうするだけという話だ。

 ただ少なくとも、現状そうせざるを得ない場合もある。


「地形変化がどのあたりから起きるっていうのはわからないのか?未来予知でもそのあたりはわかるんじゃないか?」


「確かに。フシグロ、美鈴呼べるか?そのあたり聞いてみよう」


『ちょっと待って。今繋げる………………どうぞ』


『もしもし、聞こえてますか?』


「あぁ、聞こえてる。美鈴、悪いけど教えてほしい。南側の地形変化、これがどのあたりから起きるのか、ちょうど変化し始めてるあたりの映像は見ることはできてなかったのか?」


 今回の地形変化がどれくらいの場所から起きるのであれば、予めその上空で待機しているだけで、あるいはその周辺の地形を徹底的に調べるだけで未然に防ぐことも可能になるかもしれない。


 それを考えればその可能性は模索しておいて損はなさそうだった。


『それが、例の爆発のせいもあってドローンの映像は数分間使えないんです。みんな変な方向いちゃったりしてて……もっと上空の……衛星?の映像は使えるんですけど、それは時間が飛び飛びで……別の場所映してたりもしますし』


「なるほど……そうか、爆発の影響受けるか……ドローンは空飛んでるからな……」


 今美鈴の見ている映像は上空のドローンなどの映像だ。その映像を美鈴が見て、美鈴が見ている未来を教えてもらっている状態である。


 ドローンを使って上空の探索をしているために、ドローンが使えない状況になってしまうとその予知も不明確な状態になってしまうのだ。


「アメリカとかの偵察機を使えないか?あれなら相当上空を飛ぶから影響も少ないんじゃないか?」


「そうか?だってここで爆発起きてんのに南側まで衝撃来てんだろ?上空でも変わらないだろ。距離的にはむしろ上空のが近いんじゃね?」


「あー……そうか。衛星ならともかく、偵察機程度ではダメか……」


「ともかく……現段階では細かい場所まではわからないか」


『けど、現時点でいいのであれば、発生時間はわかります。時間は……えっと、そっちの時間で……午前十一時頃。爆発もそれとほぼ同時刻に起きて、その前と後で地形が変わってます』


 午前十一時。


 活動開始が六時であるから、その五時間後にそれが発生するということだ。


 その五時間の間に相手を見つけることができればこの事象を未然に防ぐことができる。

 逆に見つけられなければ確実にこれが起きるということになる。


「ちなみにドローンが使えなかった時間は?どれくらいの間映像が途絶えてる?」


『えっと……映像が使えなかったのは……十分くらいです。しかも、一部の画面は復活した映像が、皆さんの場所から移動してるから、全体を一気に動かすってのはできてないです』


 つまり、爆発の衝撃で破損したドローンを追加してまた移動させていたために、全体を再度映し出せるまでに時間がかかったということだろう。


 予め地上で待機させておくのも手だが、ドローンの展開数的にそこまで数に余裕がないのが痛いところである。


「ドローンでの監視はいいんだけどよ、こう自然豊かな場所だと上からの監視じゃ上手くいかないよな」


「確かに。そこに人がいるかどうかって微妙だもんな」


「各センサーは取り付けてあるから、熱源は判別できる。ただまぁ、確かに地上でも監視できると最高だよな……そういうドローンも作ってもらうか。そうなるともうラジコンとかそういう域だけど」


 自然豊かな場所でも監視体制が作れるようなものを作るとなると一朝一夕ではいかない。


 それこそラビットαのさらに小型なものを作るようなものだ。時間も金もかかるだけに簡単にうなずくことはできなかった。


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