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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
番外編『世界の垣根を超え崩す』

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1704/1751

1704

 周介がその情報を得てから数日、フシグロの手によって件の情報は世界中の姉妹組織の元に届けられていた。


 届けられたと言うのは語弊がある。自然と、まるで自分たちが見つけたというような形に差し向ける形でフシグロが情報を与え続けたと言ったほうが正確だ。


 昨今起きていた、世界的な問題のすべてが繋がっているという可能性。そしてその背景にある事情。それらを各国の姉妹組織の人間が気づくのに時間はかからなかった。そして敏い者同士は個人間、ないしグループ間で連絡を取り合い、裏付けや同意見を突き合わせることによりその確信を深めていく。


 それによって、世界中の姉妹組織は自分たちが今置かれている状況をより正しく理解することになる。


 そして、もしこの状況を放置したらどうなるか、そのことを考え、多くの者が危機感を抱いていた。


 特に今回の事象の始まりと言ってもいい、原発の物理的封鎖や、大陸分断に関する行動を起こした姉妹組織は、今回暴走している研究者たちを止めようと躍起になっている。


 だが、そういう組織程自国の復興が終わっていなかった。


 そのせいもあって、人が出せない。だが復興の進捗によって生じた優劣と、政治的な柵ができてしまっているせいで他国に助けを求めるわけにもいかないというジレンマを抱えてしまっている。


『うちの連中が騒がしいと思っていたら、そちらが手を打ったのか。随分えげつない手を取ったな』


 周介と会話をしているのはトイトニーだ。周介は個人的なつながりを使ってアメリカとの情報共有をするべくこうして定期的に話をしている。


 特に今回の事柄については話しておかなければならないと、かなり早い段階で話を振っていた。


「そうは言うけどな、あの状況を放置してろってのか?っていうかまだ状況は全く好転してないけどな?少なくとも刻一刻と悪い方向に進んでるんだぞ?」


『確かにな。それは否定しない。だが、世界中どこもかしこもひどい騒ぎだ。もう少し手心を加えてやってもよかったんじゃないのか?』


「手心加えて世界崩壊を見逃すよりはいいだろ。それにあれは別に俺がやったわけじゃないからな?うちのスーパー情報担当がやっただけだ。俺は関与してない」


『そういうことにしておこう。うちは直接被害を受けているから犯人探しに躍起になっているぞ?』


 直接被害を受けているアメリカからすれば、確かに沽券にかかわる問題だ。早々に問題解決のために動くためにいろいろと手を回そうとしているのは周介の耳にも届いていた。


「アメリカが主導して動くのか?それともどこかについて行く感じ?」


『主導は無理だな。まだ地方都市の復興や今回の襲撃の調査が残ってる。動けるメンツは限られているから、そこまで大々的に動くのは無理だ。日本はどうだ?』


「メンツ的にはそろってる。ぶっちゃけオーケーが出れば俺はいつでも出撃可能だ。ただ、主な被害を受けていない日本が主導ってのが気に食わない奴もいるだろうよ。上層部がストップかけてなきゃなぁ……」


 日本の組織は現段階では様子見を提言していた。他の国と軋轢を作ることを避けようとしているのだろうが、あまりにも対応が慎重すぎる。


 この十年で組織の立ち位置が非常に複雑で微妙な形になったのは間違いないが、問題を起こそうとしている人間がいるにもかかわらず対応が後手に回りすぎている。


『相変わらずバンバン前に出ようとするんだな。お前も立場があるだろうに』


「立場よりもまずは状況を好転させる方が優先だろ。そもそも俺の魔石が悪用されそうになってるかもしれないんだぞ?こっちからすりゃ気が気じゃないわ」


 これで周介の魔石も何も関係ないのであれば、正直他の組織にすべて任せるでも問題はなかった。


 ただ、さすがに自分と一体化していた魔石が関係しているということもあって静観することもできかねる。


「むしろ、こっちの方で圧力かけるか……アメリカの予知能力者って何人くらいいるんだ?」


『五人だな。毎日忙しそうにしている』


「そいつらにこれから先起こることを予知してもらえないか?こっちも日本の予知能力者に頼んでみる」


『それは……頼むことはできるが……成果が得られるかどうかはわからないぞ?未来は不確定要素が大きい』


「いいんだよ。どこかの組織がそれで本気になってくれれば。こちとら救援要請に応じる準備はいつでもできてるんだ。あとは、変な意地を捨ててさっさと協力体制を作ってくれればいいんだけど……問題はどこが動くか……被害を受けるだろう場所になるけども……」


『それで予知か。可能性でも被害を受けることを考えれば動かざるを得なくなると……傍観しようとしていた国を巻き込むことができるかもしれないな』


「そう言うこと。不確定だからこそたくさんの予知を見ることができるだろ?いろんな国を巻き込んで行動しないと、たぶんだいぶ手遅れになるぞこれ」


『既に研究所の襲撃までされているんだ。魔石も奪われている。地形の変化が起きているのが出力不足だったとして、魔石が奪われたともなれば……その出力はさらに上がるだろうな。大陸がぐちゃぐちゃになる可能性も高い』


「そこを予知できれば、さすがに黙っていられないだろ。特にその大陸にある国なんかは。周辺諸国も無視はできない」


 予知の能力の使い方として適切かどうかは不明だが、その可能性があるという情報だけでも組織の動きを活発化させるのは十分だろう。


「ちなみにフシグロ、姉妹組織の反応と動き出しとして、一番ちゃんと準備整えてるのはどこだ?」


『現段階だと、復興が完了してるところはかなり準備してる節がある。逆に復興が完了してなかったり、特殊個体の被害が多い場所は準備はあまりできていない』


「いっそのこともっと派手に動くか?ドローン大戦争いっちゃう?」


『なんだそれは?』


「俺が発電し続けて無限にドローンを動かし続けるってやつ。地下以外のすべてを探し回れるぞ」


『あぁ……前にうちの上層部がぼやいてたやつだな』


 空中だろうと水中だろうとその気になれば二十四時間ずっと探し回ることができるため、これは周介たちの最終手段でもあった。


 何せ他国の状況をすべて無視して捜索を開始するため、場合によってはかなりクレームを貰ってしまう。


 実際、過去一度だけドローン大戦争と銘打ってそれを発動した時はかなり多くの国から苦言を強いられた。当時、とある国で確認されたブラックネームを見つけ出すために、ちょうど現地で活動していた周介たちがその手段を使った。


 一緒に活動していたアメリカも苦言を強いた国の一つだ。とはいえ、そのおかげでブラックネームを一人捕まえることができたという功績もあるために多くの人間はクレーム以上のことをしようとはしなかった。


 これが成果を上げられなかったのであれば、批難の雨あられ状態だっただろう。ただその行動で、周介とフシグロはブラックネームを見つけ出した。


 その事実は大きい。功績としては世界の能力者組織に大きく影響を与えたといってもいいだろう。


 それからは、外聞や世界の姉妹組織に対しての気遣いもあって発動することはなかったのだが、今回ばかりは少々事情が異なる。世界が崩壊する可能性さえあるのだ。使える手段をいつまでも使わないのはただの怠慢だ。


『未来予知の結果によっては、それをやってもいいだろうな。だが、それをするだけの準備はできているのか?』


「もちろん。前に発動した時よりもドローンは増量してるからな。ただ、俺も全力で発電しないといけないから、俺も動けなくなるんだけどな」


 この十年の間に、日本支部で作り出したドローンの数は、大小の種類さえ問わないのであれば十万機に至る。それらすべての電力を供給するとなると、周介が延々と発電し続けなければいけないのだ。


 繋がっている電力ケーブルだけでもかなりの体積を圧迫するため、言音の能力もフル稼働させなければいけないという欠点もあるため、周介と言音、そして操作するフシグロ、この三人が全力でそれらに集中しなければいけなくなるという、ある種諸刃の剣でもある。


 それによって得られる索敵範囲は半端ではない。時速八十キロ程度で索敵し続けるその速度と圧倒的な数によって、まさに虱潰しで捜索することになる。


 街等、場所が限定されていれば更に早く探すことができるだろう。二十四時間延々と飛び続けることができるドローンだ。周介の能力が併用されることで、部品への過度な負担、損傷も抑えることができる。

 現代においてこれほど手っ取り早い索敵役は他にない。


『選択肢としては大いにありだな。一つ、頼んでもいいか?』


「ん?なんだ?」


『今、俺たちの仲間が、件の研究者を探しているところでな……大まかな場所を特定しているところだ』


「マジか。大まかってことは、何かの能力か?」


『そんなところだ。条件さえ固まれば、ざっくりの場所を特定できる』


「すごいな。そんなことできるのか……その能力者、十年前にいればな……」


『それは言わないでやってくれ。最近入隊した奴なんだ。ともかく、本当にざっくりの位置しかわからないんだ』


「ざっくりって……具体的にはどれくらいなんだ?」


『本人曰く、どっちの方角だとかそのレベルだ。だが時間をかければ……』


「方角から場所を割り出せると……なるほど、何回かやれば地方レベルで絞り込むことはできそうだな」


『本来であればその場所に調査系の人間を送り込みたいところだが……場所によっては送り出すのが難しい場合もある。そこでドローンの派遣を頼めると助かる』


「俺らは構わないけど、その相手先にもよるんじゃないか?意固地になってドローンを入れるの拒否られると面倒……いっそのこと黙ってやるか。邪魔されなくて済むし」


 周介がそんなことを言っていると、通話の向こう側でトイトニーが呆れたようにため息を吐いたのがわかる。


 さすがに勝手に行動してドローンを国内で勝手に飛ばされるなどということになれば問題になるのは間違いない。


 そこまではできないかと、周介は肩を竦める。


「なら例によって、その情報を全世界にリークだな。その能力者の方角?の感知ってどれくらいあてになるんだ?」


『アメリカではそれなり以上の信頼がある。ただ、距離があっても方角だけはわかるから、場所の特定に時間がかかるのと、どう頑張っても誤差が大きくなるのが欠点だ』


「まぁそりゃそうだ。その辺りは手数でフォローか」


 遠くなればなるほど、角度が一度でも違ってしまえば相当数のずれが生じてくる。その為確実に場所の特定をするのは難しい。さらに言えば相手だって動いているのだ。場所の特定と言っても一朝一夕ではいかない。


 ただ、どの大陸のどのあたりにいるかくらいはわかるだろう。


 時間をかければかけるほど危険になる。早々に決着をつけるには即座に場所の特定をするのが最優先だ。戦力を送り込むのは、またその時に考えればいいだけの話である。


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