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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
最終話「其の獣が宿すものは」

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「なんだよ、じゃあ俺たちが索敵も戦闘もやれってのかよ。ロシアはずいぶん楽してんな」


「そうとも言えないさ。ロシアの広い場所を探し回るために戦力を分散させるより、むしろ何カ所かに集中してもらったほうが戦力として期待できる。何より能力者もそうだけどほとんどが徒歩での移動になるんだ。周介君みたいな能力者がいない限り、戦力の適切な場所への即時投入はできないんだよ。だから下手に拠点から離れた場所に配置すると、簡単に跳び越えられちゃう。相手にはブルームライダーがいるんだ」


 特に相手はある程度の機動力を持っているのだ。現状機械の類が使えない軍隊などは簡単に飛び越えられてしまう可能性が高い。


 町の中だろうと飛び回り地形を無視した立ち回りのできるブルームライダーは機動戦においては非常に脅威となる。部隊を配置しても、制空権を取れない状態である以上、一方的に攻撃される可能性だってある。


 それを考えれば、散発的に部隊を配置せず、むしろ拠点に一点集中させたほうがまだ戦力としての期待ができる。


 あくまで拠点の防衛用の戦力であって、周介達を助けるための部隊ではないというのが重要なところである。


「君達が行うべきは、相手が拠点に近づくよりも前に敵の位置を捕捉し、打倒することだ。絶対に核兵器の保管されている基地施設には近づけてはならない」


「でも、その基地施設の場所は教えてもらえないんですよね?」


「うん。だから見つけたら即、その場にくぎ付けにしてもらいたい。難しいことを言ってるとは思うけどね」


 ドク自身、割と無茶苦茶なことを言っているという自覚はあるのだろう。拠点には近づけるな。だがその拠点の場所は教えない。


 はっきり言って矛盾している。近づけないようにするにもその方角がわからないのでは対処のしようがない。


 ドクの言うように、発見したらその場で釘付けにしないといけないのだ。機動力相手にそれをするにはかなり苦労するだろう。


「拠点に近づけてはいけないというのは、具体的にはどの程度?」


「半径十キロ圏内には入れないようにとのことだよ。簡単に言ってくれるよね」


 半径十キロというと、かなり広く感じる。実際広いのだが、相手の機動力を考えると現実的な数字でもある。


 強化系などの機動力を持った能力者であれば、その程度の距離はないに等しいのだ。ものの数分でたどり着いてしまうだろう。


「今回相手にはブルームライダーに、例の転移能力者もいる。確実に相手の足を止めるなら、その二人を落とさないとダメだね。相手の中で機動力がある相手というと……」


「ドットノッカーも結構早く動けますね。強化能力者の程度はわかりませんけど、同様に動けると考えていいでしょう」


「なら、変換と発現の能力者以外は全員機動力持ちだと考えたほうがいいね。ドットノッカーと強化系は僕らBB隊で受け持つ……と言いたいけど、ドットノッカーに関してはアイヴィー隊の力も借りたいかな」


「それは構いませんが、BB隊が出るのに俺たちが必要ですか?」


「単純な強化だったら別に問題ないんだけどね。あの念動力が面倒なんだ。体の動きを阻害するような力が欲しい。あとはその攻撃を視認できるようになりたいね。見えれば対処できる」


 今までの戦闘記録から相手の戦力を分析していたのだろう。大門はドットノッカーに対しての対策をおよそ考えているようだった。


 ドットノッカーの戦い方で一番面倒なところは、相手を倒そうとせず、ただ自分に近づけないようにしているという点だ。


 強化変貌と言った、肉体能力を純粋に強化する単純な能力に対して、ドットノッカーの能力は強化と念動力という形で複数に割り振られたものだ。


 その為、肉体の強化の出力では純粋な強化系能力に劣るということがわかっているのだろう。だからこそ、相手を近づけさせない。そういう戦い方をするのだ。


 だがその能力にも欠点がある。自分の体を動かさなければ念動力を発動できないという点だ。


 アイヴィー隊の能力で体そのものの動きを阻害すれば、それは防ぐことができる。


「ブルームライダーの方は俺に任せてくれ。機動力の方は大将の力を借りれば何とかなるから」


 ブルームライダーの戦闘能力はまだ確認できていない。単純に箒を飛ばすだけの能力ではあるが、それだけとは限らない。


 とはいえ、元々大太刀部隊の猛を当てるのは少々過剰ではないかと思わなくもない。


 ただ大門は猛がわざわざ周介の力を借りるといっていることから、その思惑をおよそ理解していた。


 ブルームライダーに対して周介と猛の二人体制で当たれば、周介を危険な戦場から引きはがせる。


 それこそが目的なのだろうと、大門は小さくうなずく。


「オーケー。じゃあブルームライダーの方は任せるよ。あとは転移か……あれは捕まえるの苦労するよ。転移は面倒だからね」


 機動力持ちに関して言えばあと残るのは転移能力者だけ。だがその転移能力者が最も厄介だ。何せ百メートル以上を一瞬で移動するのだから。


 戦闘能力自体はそこまであるとは言い難いが、逃してしまうと非常に厄介だと言わざるを得ない。

 この中では一番苦労しそうな相手だった。


「戦力分析は一旦ストップ。後でみんなで話し合おう。その前に他に今回の作戦の概要で質問事項はないかい?」


「じゃあ俺から。ミーティア隊の使用可能弾種について。今回の作戦場所は、たぶん市街地じゃなくて、山岳、平地、森林、渓谷地帯とかそんな感じになると思います。どこまで使っていいですか?」


 ミーティア隊は弾丸そのものを飛翔させることでの攻撃が可能だ。手榴弾の類も射出できるため、使用可能な弾が増えればその分攻撃に幅が広がることになる。


 同時にその分周辺地域への被害が増える。攻撃能力に特化したミーティア隊の攻撃は恐ろしく速く強い。認識できないほどの距離から一方的に攻撃できるのがミーティア隊の強みだ。


 福島の能力によって弾数は無限に近い。距離をとった状態での一方的な狙撃であれば、恐らく負けはないだろう。それだけの攻撃能力を持っているのがミーティア隊だ。


 だからこそ射場は使っても問題がない弾丸の種類について聞いているのだ。


「今回は使用可能な弾の種類に制限を設けるつもりはないよ。もとよりあれらを止めないと面倒なことになるんだ。山火事とかになると面倒かもしれないけど、それはそれだ。地形的な破壊とかも相手がどんどんやるんだから、その辺りは仕方ないよね」


「わかりました。それでは派手にやりましょう」


 仕方ないよねで済ませるドクもドクだが、派手にやるで済ませる射場も射場だ。今回の支援活動に対しての意欲の高さがうかがえる。


 一種の殺意さえ含んだ言葉に、その場の空気が気が引き締まっていくのを全員が感じていた。


「あんまり派手なものを使うと、前にいる僕らも影響を受けそうだから、撃つ時は言ってね。防御力高めるから」


「了解。誤射はしないようにするからそのあたりは上手くやってくれ。なるべく被害が少なくなるようには努める」


 ミーティア隊の狙撃で一番被害を受ける可能性があるのは前に出る部隊だ。今回で言えばBB隊などが当てはまるが、アイヴィー隊もそれらと同様の対応が必要になるかもわからない。


「戦闘ではやっぱり地形とかは変えないほうがいいですよね?派手にやるとさすがにぼこぼこになっちゃう気がするんですけど」


「あぁそうか、ミーティア隊の攻撃って砲弾みたいなものもあったよね」


 ミーティア隊の攻撃の中には戦車用の砲弾もある。榴弾などを使えば周りの地形を変えることもできる。

 さらに言えばBB隊の人間が本気になれば鬼怒川と同様に周囲の地形を変えることも容易だ。


 今回は国内ではなく国外での対応であるために、その辺りは非常にデリケートだ。


「地形がある程度変わっても相手がやったってことにするから多少派手に暴れても大丈夫だよ。ロシアが文句言って来たらそれはそれさ。自分たちで何とかできなかったのにこっちに文句を言うのはお門違いってものだろう?」


 救援を求めるのと地形を変えられるのはそれはそれこれはこれなのではないかと何人かは心配してしまうが、それで妙に手加減して相手を逃がしてしまえば面倒なことになるのはわかりきっているのだ。


 多少被害を受けようと敵を倒さなければいけないのは間違いない。


「それじゃあ攻撃の内容に関しては制限しない形で。僕らの部隊とアイヴィー隊で連動したいね」


「であれば、ミーティア隊にお願いしたいことが。アイヴィー隊が使う道具を定期的に射出してほしい。手越の手甲や装備、大網の糸なんかを」


 BB隊とアイヴィー隊の連動をするのであれば、当然アイヴィー隊の装備を届ける必要がある。


 ミーティア隊の能力を使えば現地に即座に物資を届けることができるだろう。


「私の能力じゃダメっすか?手元でよければすぐに届けるっすよ?」


「手元に持ってきてくれるのも有り難いんだが、現地で敵相手に即座に飛ばしたいという状況になる可能性が高いんだ。相手の機動力とかを考えると、手元から動かしていると後手に回る」


 アイヴィー隊の欠点は機動力の低さだ。それは手越の操作する手甲などにも当てはまる。それを補うために、射出方法としてミーティア隊を使いたいということだ。


 手元から操って敵の場所に襲い掛からせるより、ミーティア隊に射出してもらった方が早く、なおかつ確実に懐に潜り込めると踏んだのだろう。


 言音の能力による物資の提供はもちろんありがたい。だがこの場合は適材適所、それぞれできることが分かれているためにそれぞれできることをすればいいだけの話である。


「わかった。攻撃と支援どっちもできるように準備はしておく。他に現地に届けてほしいものがあればこちらで請け負うぞ」


「ラビット隊の方は特にないですね。BB隊は支援用の物資入りますか?」


「僕らも大丈夫かな。そもそも肉弾戦メインになるし。あぁ、支援とは少し話がずれるんだけど、気になってるのは相手の変換と雷の発現能力だっけ?その能力が結構不明瞭なのがちょっと不安だよね」


 話でしか聞いていないためにそれがいったいどのような能力を持っているのか、周介達も判断はできていない。


 変換能力に関しては周介の体を突き刺してきたあの能力者ではないかとも思うのだが、それも定かではないのだ。


 とはいえ相手の戦闘能力がどの程度かがわからないが能力の特性はわかっているのはありがたい。ある程度対策ができるのはこちらとしては好材料となる。


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― 新着の感想 ―
[良い点] まあまあ面白かった [気になる点] 後半になるにつれて登場人物の呑気さが目についた 周介が攫われた後にも関わらず、ドグもそうだけど鬼怒川とか諸々の人たちの言動が色々軽いし、以前から敵に自殺…
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