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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
四話「小動物が生き残るために」
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「お、土だ土だ。よく持ってきてくれたね」


「どうも、この土どうするんですか?」


 周介が運んできた土を運んだ先にはいくつもの植物が栽培されているようだった。


 ライトを太陽代わりにしているのか、鉢植えで育っている植物のすぐ近くで白い電灯が煌々と輝いている。


 白い壁や床は、清潔さを保っていることを意識させられる。生き物を扱っているというよりは生き物で何かをしているといったほうが表現としては正しいかもしれない。


 まるで実験所、あるいは研究所のような様相を呈している。いったいなぜこのようなことをしているのか、周介には想像もできなかった。


「植物の育成と、肥料の作成、それに生き物の育成かな。どんな生き物だって土があるとやっぱりいろいろと違うんだよ。こういう外にあった土は特にいい土壌になる。場合によっては毒にもなるけどね」


 そう言いながら周介がもってきた土を土嚢袋に入れながら運んでいく。周介もそれに倣い。箱の中に入っている土を適度に土嚢袋に入れて一か所に積み上げていく。


「ここはいったい何をするところなんですか?こんなに野菜を育てて……」


「んー、育てることが目的でもあり、育てた結果変化があるかどうかを見る実験かな。今まで満足に電力が供給されていなかったから生き物、特に植物をたくさん育てるのは難しかったけど、電力がしっかり来てくれたおかげで正しい形でたくさんの植物の育成ができるようになったからね」


 周介が発電を行ってから、いろいろとできることが増えたおかげで今まで試すことができなかった実験をよりこなせるようになっていったのだろう。


 それは装備や施設の製作だけによらず、こうした生物を用いた実験にも適用されるらしい。


「この空間は一応能力によって生み出された場所だ。人間はわからなくても、植物には何かしらの変化があるかもしれない。本物の太陽は作れないけれど、人工的に光を浴びせて光合成を促すことはできる。実験などでは結構企業とかもやっている方法だからね」


 つまり、ここでは一般的に企業が行う人工栽培との比較を行っているのだろう。通常の空間と、この能力によって作り出された空間、この二つの空間で同様の育て方をした植物で何か変化が生まれるかどうかという実験なのだ。


 もちろん他にもいくつか植物や生き物の姿が見えることから、いろいろと何かの実験をやっているのだろうということはわかる。


 こういったこともやっているとは思わなかっただけに、周介は少し驚いていた。


「意外ですね、こういうことはやらないものかと思ってました」


「こういう、能力の存在を解明をすることもうちの組織の仕事の一つでもあるからね。いつまでも未知の状態ではいさせない。いつか解明させるよ」


 白衣姿の男性は楽しそうに笑う。ドクとは別の意味でこういった特殊な仕事が好きなのだろう。こういう人物が集まってこの組織ができているのだなと周介は感心していた。


 そして持ってきた土をすべて土嚢袋に詰め終えると、周介はほかのものを運ぶべく再び集積所に向かおうとする。


 その途中、周介は大柄な男性とすれ違う。本当に大きな男性だった。周介がもともと小柄だというのもあるのだが、パッと見ただけで二メートルに届きそうな長身、そして腕も足も首も異様なまでに太い。


 体そのものも分厚く、それらがすべて筋肉でできているのだということがすぐにわかる。


 作業着に似た服を着たその人物は何かを抱えていた。いったい何だろうかと重機に乗った状態で追い抜くと、それが一メートル四方はある何かが入った箱であるということが分かった。


 その箱を持つ腕は血管が浮き出ており、かなり力を込めているということがありありとわかる。


 それを見て見ぬ振りができるほど周介は無関心ではなかった。


「あの、どこかに運ぶならお手伝いしましょうか?」


「え?そんな、悪いよ」


 その人物から出た声は思ったよりも高い声だった。体格と背の高さから、もっと低い声を予想していたのだが、予想が外れて周介は内心少し安堵してしまっていた。


「いえいえ、乗せて運ぶだけですから大したことはありませんよ。どこまで運びますか?乗っていけば早いですよ?」


 どちらにせよ集積所からまたいろいろなものを運ぶことになるのだ。多少横道にそれてもやることは同じである。


 それに人で運ぶよりも重機で運んだほうが圧倒的に速いだろう。


「そうかい?じゃあお願いしようかな。ごめんね、こんなことを頼んで」


 朗らかな笑みを浮かべる男性の第一印象は大型犬という感じだった。のんびりとしたクマと言い換えてもいいかもしれない。


 太めの眉に、少し垂れた目、わずかに茶色がかった短髪と朗らかな表情、穏やかな性格をしているというのがわずかな情報から読み取れてしまった。


 これほど朗らかな声を出す人もめずらしいなと周介は苦笑しながら荷物とその大柄な人物を乗せて重機を走らせた。


「俺は百枝って言います。百枝周介です。お兄さんは……」


「僕は大門、大門善人(だいもんよしひと)。よろしくね百枝君」


「よろしくお願いします大門さん。これ、なんですか?」


「あぁ、これは植物用の肥料だよ。これからいろいろと育てようと思ってね」


 先ほどの実験の手伝いか何かだろうかと周介は考えながら重機を走らせる。それなり以上の重量があるそれを軽々持ち上げていた彼はかなりの力持ちであるようだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 途中まで読みましたけど、地球ゴマ見たいにジャイロ効果で何か出来そう
2020/10/06 14:47 退会済み
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