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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
四話「小動物が生き残るために」
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「やっぱあれだな、人形相手だと多少力技で投げられちゃうからあんまり実戦的じゃないよな。打撃系の訓練にはいいかもしれないけど」


「そういうもんすかね。俺的にはすっげぇ楽しいっすけど」


「そりゃあれだけ戦えれば楽しいだろうよ」


 周介が訓練をしている横で玄徳は喜々として人形と向かい合っていた。拳、蹴りといった人形の素早い攻撃に反応し、ときには反撃もしていた玄徳。もともとの戦闘に対する経験値が違いすぎる上に、目の前にプロの動きをする人形がいるということもあって普段より良い動きができていたのかもわからない。


 もちろん威力までは同じではないが、それでも玄徳は満足のようだった。


「なぁ安形ぁ、人形の重量ってもうちょっと増やせないのか?具体的には人間と同じくらいに」


「えー……できなくはないけど……あれはちょっと面倒くさいんだけど」


「面倒くさいって?」


「重くなるとその分強度上げなきゃいけないから、人形に集中しないと壊れる。正直あんまりやりたくない」


「へぇ、強度変えられるんだ」


「多少はね。人形が壊れない程度の強度だから限度あるけど」


 瞳の能力には人形そのものの強化も含まれている。どうやら瞳はその強度もある程度コントロールできるらしい。


 重量を増やせばその分各関節などのパーツにかかる負荷は増える。そういった部分を能力で補って激しい動きにも耐えられるようにしているのだろう。


 その話を聞いて玄徳は目を輝かせていた。


「姉御、ってことはですよ、姉御がその気になればモノホンの人間の威力とか重さを含めた動きもできるってことですか?」


「その気になればね。やらないから」


「なんでですか!お願いします!お願いします!」


「疲れるからヤダ。大体、普段のこれだって結構面倒くさいのにこれ以上負荷かけるのは嫌。それに、今の人形の状態でも殴られまくりでしょ。全部回避できるようになったら考えてあげる」


 今の威力の弱い人形の攻撃でさえ、玄徳は回避や防御しきれずに顔などがわずかに腫れ始めているほどだ。おそらく見ていないところでかなり殴られたのだろう。


 そんな攻撃を実際の人間の威力と同程度で受ければ当然ただ腫れるというのではすまなくなるだろう。


 人形そのものを重くしてどれほど威力を上げられるかは不明だ。瞳曰く、重量を上げても人形そのものの動きを変えなければ威力も上げられるとのことだが、あくまでそれは人形の動きだ。


 人間の攻撃に関わってくる筋力に関しては人形には存在していないために瞳のさじ加減一つということになる。


 玄徳に怪我を負わせないようにうまく加減してあの状態なのだろう。これ以上威力を上げてしまえば怪我をするのは間違いない。


「わかりました。じゃあ全部避けられるように訓練するんで、その時はよろしくお願いします姉御!」


「はいはい、できるようになったらね。百枝の訓練は、ある程度型を学んだら実際の人間と組ませてもらったほうがいいんじゃない?手越とかそのあたり得意だし、手伝ってもらったら?」


「そうなのか?知らなかったな」


 手越が組み技が得意であるという事実に、周介は純粋に驚いていた。確かに手越はそれなりに体格はいい。玄徳には劣るが多少筋肉質でもある。確かに組み技をやるには申し分なさそうでもある。


「あいつの能力的に手を使った動きをとにかく練習してたからね。組み技もその一つ。もちろん打撃系も覚えてるけど」


「手越……あぁ、それほど強くはなかったっすけど」


「そういや組手やったって言ってたな。どのくらい強かったんだ?」


「兄貴よりは強いっすけど、それでも普通じゃないですか?体格差もあったかもしれませんけど」


「そりゃそうでしょ。あいつはあくまで能力のために覚えたんだから。あたしが強くないのと同じ」


 能力のために覚えたということもあって、ある程度の基礎を覚えたらそのあとは能力に応用する作業だったのだろう。


 瞳の場合は人形をとにかく動かして全身の人形の動かし方を学んだが、手越の場合は操れるのは手だけだ。手だけでどうやって相手を崩すのかということをまず体で学んだということなのだろう。


 だがそれでも実戦の相手になる相手がいるというのはありがたい。


「よし、それなら手越に頼むか。今の時間ならもう拠点にいるよな?」


「たぶんいるんじゃない?もともとジャンク品を選別するためにここにいるんだし。いつ頃来るのかは知らないけど」


 もし選別の時間がくれば、というかそういったものが届けばそれぞれの携帯に連絡が入ってくる。


 未だそれが来ないということは少なくともまだ時間に猶予はあるということだろう。


 今の内に暇つぶしと称して訓練をするのは悪くはないだろうと周介は考えていた。


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