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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
三十二話「近づく崩壊の足音」

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 場所は変わって海ほたるパーキングエリアからほんのわずかに移動した南東の高速道路の直上。


 アカシャ隊の面々は水を操作する能力者を拘束しながら徐々に移動し、高速道路の真上まで移動していた。


 そして、水を操る能力者が必死の抵抗として常に海水を操作し続け、水瀬がそれを防ぎ続けている状況でそれは起きた。


 認識できたのは、衝撃と光と爆発。大量に展開していた海水が爆炎と衝撃波と共に吹き飛ばされ、さらに続いてもう一度起きた爆発によってアカシャ隊の面々は散り散りになる形で吹き飛ばされ海に放り出されてしまっていた。


 そんな中、唯一動けるのは水を操作し続けていた水瀬だった。一瞬意識を失いかけたが海の中に落ちた瞬間能力を再発動し辺りに落下している物体を全て浮かび上がらせる。


 その中にはアカシャ隊のメンバーもいる。何人かは気絶しているが、未だ意識のあるものもいた。


「ゲホ!くそ!なんだ!?」


「わからない!爆発した!尾盛は!?」


「……ダメだ、気失ってる。上は……!」


 意識があるのは穂村と水瀬だけだ。それ以外のメンバーは先ほどの衝撃波と着水の衝撃、あるいは別の何かに頭を強打したのかで意識を失ってしまっていた。


 そんな中、二人が視線を上に上げると、先ほどまで車があった箇所、海上にあった高速道路の一角が大きく破損し、抉れている。


 いったいどれほどの威力の爆発だったのか、想像すらできない。


 だがそれよりも先に確認しなければいけない。これが一体何なのか。


「上がるぞ!状況確認と報告頼む!」


「わかってる!こちらアカシャ隊、何者かの攻撃を受けた!たぶんさっき言ってた追加の能力者!能力は爆発!東京アクアラインの一角が大きく破損!ビルド隊をこっちによこしてくれ!」


 穂村が報告をする中、水瀬は自身と穂村の周りにある水を操作して一気に道路の上まで押し上げていく。


 水流によって浮かび上がっていくと、道路の上は酷い状況だった。


 予め大量の水を使って道路を封鎖していたために一般車両こそそこには入り込んでいなかった。だが、そこにあった唯一の車。その車は先ほどまで水瀬たちアカシャ隊が追い詰めていた人物の乗る車だった。

 だがその車は、原形をとどめていなかった。


 フレームがむき出しになり、ガラスはすべて吹き飛び、燃料に引火したのか炎上してしまっている。

 そしてその車の中に、恐らく人だったものの、体がある。


 腕と、胴と、頭。黒焦げになっており、もはや誰だったのか判別はできないほどひどい状況だった。


「うげ……ひでぇ……」


「警戒しろ。周りにまだいるかもしれないんだ。ノーマン隊!周辺に能力者がいるはずだ!状況確認と報告!」


『こちらで確認できている情報は……一瞬、索敵範囲に入って、もう離脱している。爆破二回、それだけだ』


 爆破してすぐに離脱。明らかにあの車を攻撃するためだけにこの場所にやってきたということだ。


『アカシャ隊!海ほたるの皆!状況報告!負傷者は!?』


「こちら負傷者は……えーと……アカシャ隊のメンバー何人か負傷、気絶してる。死にはしないと思う。一般人は……幸い入って来てなかった。ただ橋?っていうか高架の道路の一部崩壊……やってきたと思われる能力者は……もういなくなったみたいだ……どこにったのかはわからない」


『他には?状況の変化は……ひょっとして例の水の能力者に逃げられたのかい?それを助けに来たとか?』


「……もう死んでる……爆発のやけどで……黒焦げになってるよ。すみません、生かして拘束ってのはできませんでした」


 車の中で消し炭のようになっている男の肉体を見て、穂村は吐き気を抑えようと口元に手を当てる。


 当たりに奇妙なにおいが立ち込めている。これが人の焼ける匂いなのだろうかと、そんな事を考えていると、海ほたるの中で避難活動などに当たっていた他のメンバーからも心配したような無線が届く。


『オイそっち大丈夫なのか!?なんかえらい爆発起きてたけど!?』


「大丈夫だ。気絶した二人も……あぁ、今回収してる。外傷は特になし。頭だけ打ってるかもしれねえからちょっとは安静にしないとな……それくらいだ」


『いやなタイミングの横やりだったな……どんな奴だったんだ?』


「わからねえよ。いきなりの爆発だったんだ。どういう能力ってのは、まぁ爆発なんだろうけど、どんな奴かも見てないし、そもそもマジでいきなりだったんだ。あんなもん避けられるか。被害がほとんどなかったのは運がよかっただけだな」


「俺が水を滅茶苦茶操ってたからだよ。一発目で穴をあけて、二発目で思いっきり爆破したって感じだったな。どっちにしろ反応できなかったけど」


 今回穂村たちの被害がほとんどなかったのは大量の水を展開していたおかげだ。爆発による熱と衝撃波が、大量の海水によってかなり分散していたのが功を奏した。


 水瀬曰く、一撃目で目標の場所に至るまでの最低限の水を吹き飛ばし、二撃目で車を中心に強大な爆発を叩きつけた。その事実は、一つの思惑を浮かび上がらせる。


「それって、最初からこの車を狙ってたってことか?」


「だろうな。こいつの敵だったから、これ幸いと襲ってきたのか……それとも別の目的があったのか……調べてみねえとわからねえよ」


 アカシャ隊のメンバーは黒焦げになり、完全に絶命している車に乗った能力者だったものを見てため息を吐く。


 あの爆撃をしたのがブラックネームだったかもしれないという事実を後から聞いて、腰を抜かしそうになるのはまた別の話だ。


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