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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
一話「蒼い光を宿すもの」
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「よし…いろいろデータは集められた。ありがとう、では次の検証に行こうか」


 触診やレントゲン、聴診器など、様々な医療器具によって周介の体を調べた後、ドクは立ち上がると周介を連れて別の場所へと移動し始める。


「ここからが今日の本番、君に能力を使ってもらうことになる。君の能力がどのような性質を持っているのか、どれくらいの出力を出せるのか、そのあたりを判断していくことになる。ちょっと疲れるかもしれないけど、頑張ってくれ」


「わかりました。ちなみに、その出力っていうのは、能力の強さってことですよね?」


「んんんん!一概に強さとは言い難いね。能力を単純に強い弱いで判断することはできないんだよ。そういう性質を持っているとしか言いようがない。けどまぁ、そうだねぇ…それでもあえて強弱で表現するなら、同じタイプの能力に関しては、出力が高いほうが有利ではある」


「いろいろと条件があるってことですか」


「そういうことでもあるし、そうでもないともいえる。まぁそのあたりはおいおい説明しておくとして、大まかな出力の強弱はマナの消費量によって決まる。燃料が多ければその分たくさん動けるってことだね。これに関しては能力を初めて発現した年齢が結構重要なんだ」


「年齢ですか」


「そう。さっきも説明したと思うけど、能力を初めて発現する時っていうのは、長年かけて自然にたまったマナが限界に達した時に起きやすい。一般人がマナを自然に取り込む量っていうのは、まぁ絶対とは言えないけどある程度は一定だから、いつ能力を発現したかによって、マナの許容量がわかってくる。君くらいの年齢なら、平均より少し上くらいかな?」


 先ほどの風船のたとえで言えば、空気を一定量ずつ入れていき、どれくらいの時間で風船が爆発するかということだ。


 当然空気を入れ続けることができた時間が長ければ、風船そのものの許容量は大きいということになる。

 人間も同じでマナの許容量が多ければ多いほど、暴走するまでの時間がかかるということだろう。


 ドクの口ぶりからして、それだけが能力暴走の原因ではないようだが。


「じゃあ、もっと大人の人が能力を暴走させたほうが、出力自体は高くなりやすいってことですか」


「そうなんだけどね、そのほうがいいとは一概には言えないんだ。大人になってから能力者になると、どうしても能力を訓練する時間が取れないんだ。生活とかがあるからね。きちんと訓練ができて、なおかつ僕らの仲間になってくれる人っていうのは、学生時代に能力を発現した人が多いんだ」


 ただ能力を発現するだけでは能力者として活動することは難しい。きちんと訓練をして、そのための活動をしなければならない。


 すでに社会人として活動をしている人間がいきなり能力者になったとしても、そう簡単に今まで積み重ねた結果ともいえる職や生活を放棄できるわけではない。


 何より、能力者になってしまった暴走がきっかけで逮捕されるものもいるのだという。不憫ではあるが、周介も今回同様の立場になりかけたのだ。そういう意味では仕方がないとしか言いようがない。


「あぁそうだ。それと一つアドバイスをしておくよ。これから君は能力を調べて、僕らはそれを知るわけだけど、可能な限り、他人に自分の能力を教えないほうがいいよ?」


「それは、他の人にばれると悪用されたりするかもってことですか?」


「まぁ近いね。能力にはいろんな種類があるのはさっきちょろっと言ったけど、その中には洗脳や自白を強要するものもある。味方とは言え、能力を教えてしまうと、能力を使って犯罪を行っている連中に能力が知られてしまう可能性がある。能力者として、君がどんな活動をするかはわからないけれど、余計な争いを産まないためにも、これは徹底したほうがいい」


「わかりました。そうします。なんかバトル漫画みたいですね」


「あぁ、実際そういうものさ。相手に自分の能力が知られてしまうとすごく不利になるだろう?情報というものは力を持っている。どんなに強い能力を持っていても攻略されてしまえばそこまでなのさ」


「ドクがそれを知っているのは大丈夫なんですか?」


「僕はさっきも言った通り小太刀部隊、支援活動が主だからね。表には出ない、というかこの拠点にほとんど引きこもっているから、知られる心配がないのさ。とはいえ万が一がないとも限らない。気を付けてはいるけどね」


 百パーセントなんてありえないのさと言いながら、ドクは周介の先を歩き、一つの扉の前に立つ。


「ここは僕のガレージって言えばいいかな。いろんな実験機材とかを入れていろいろと試したりしてる。今までの能力者も、結構ここで能力を自覚して、トレーニングしたりしてるんだよ」


 中に入ると、確かに周介が今まで見たことがないような機材が山のように存在していた。


 先ほどの部屋とは比べ物にならないほどの広さを持ち、ここも先ほどの医務室のような部屋と同じように明るい。


 やはりこういった場所に優先的に電力を回しているようだった。


「すごいですね…ここってどこかの大学の施設なんですか?場所は秘密だって言われたんですけど」


「んん、その質問にはまだ答えられないかな。君が能力者として最低限の力をつければ、おのずと知ることになる。今はまだ教えないほうがいいだろうとおもう」


「それは、さっきの情報のあれと同じですか。知ってると、危ない目に遭うかもっていう」


「そういうこと。知らないほうが君の安全につながる。とはいえ、いずれは知らされるから、それを楽しみにしていてくれ。さぁ!じゃあ実験を始めよう!」


 訓練ではなく実験と言い放ったドクに、少しだけ周介は苦笑してしまいながら、ドクの後に続いて部屋の奥の方に向かって行くことにした。


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