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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
四話「小動物が生き残るために」
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 拠点の入り口、特に大きな荷物などを搬入できる専用の出入り口で瞳と手越が材料の検品を行っていた。


 瞳は大量の人形を使って、手越は大量の手を使って、雑多に持ってこられる廃品の中からそれぞれを部門別に分けて箱の中に入れている。すでにいくつもの箱が完了している。この二人による人海戦術はそれこそ二人だけで数十人、いや百人分の仕事にも値するのだ。


 能力の有効活用とはこういうことを言うのだなと周介は感心してしまっていた。


「二人とも、どうだ?」


「姉御、お疲れ様です」


 フォークリフトもどきから降りて周介は出来上がった箱を確認してどこにもっていけばいいのかを確認していく。


 素材によって再利用できるようにするための作業現場が違うため、もっていく先が違うのだ。そういうこともあって中身によっては二手に分かれなければいけない。


「鉄がまた一杯になったからもっていって。銅も。あとは布系もいっぱいになってるから。玄徳は布持ってって。百枝は金属系」


「了解っす。では兄貴、ちょっと失礼して、行ってきます!」


 巨大な箱を軽く持ち上げながら玄徳は勢いよく走り出す。能力を使って加速をしているとはいえかなりの速度だ。


 入っているのが布とはいえ、あれだけの大きさの箱を簡単に持ち上げることのできる体幹の強さはさすがというべきだろうか。


 周介は鉄と銅が入った箱をフォークリフトに積み込んでいく。


 作業としては単調なものだ。能力を使って操ればいいために、この辺りの操作はもう慣れてしまった。


 ドクの意向によって、重機系の周介の専用機が最近増えている。こういった作業を現地でも行えるようにするためなのだろう。


 周介の能力は操ることができる道具によってその効果を変える。重機などは町などに置かれている可能性がかなり高いため、こういった作業を通じてそれらを簡単に動かせるようにというのが目的なのだろう。


 もちろん、単純に拠点内の作業を手伝ってほしいというのも目的の一つなのだろうが。


「百枝、悪いけどよ、あとどれくらい来るのかドクに聞いてきてくれねえか?この調子で来るとちょっと俺らの手に余るぞ。もっと来るならもうちょっと人手をくれ」


「わかった、ドクに聞いてくる。って言ってもお前ら以上の人手ってなかなかいないぞ?」


「そのあたりは人海戦術で何とかすりゃいいだろ。少人数で確認するのがきついんだ。細かい運びはできるけど確認し続けるのはきついんだよ」


 運ばれてきた廃品の中からどの種類に分類するべきなのか、それを確認するのはあくまで人だ。

 可能な限り厳選しているとはいえ、どうしてもミスや間違いは起きてしまう。


 このままの人数ではこれ以上の廃材が運ばれてきたときに対応しきれなくなってしまうのだろう。


「了解、文句言っとくよ。わかったらすぐに教える。んじゃ行ってきます!」


 重機を動かしながら周介は鉄と銅の入った箱を運んでいく。鋼材関係に関しては再度使えるようにするためにいろいろと面倒な手順が必要になる。


 酸化して錆がついているのであればそれを取り除く、もし合金などでできているのであれば単純な金属同士に分離して、その後再度使用用途に応じて合金を作成。細かいことだがそういったことをしておかないと安全な材料としては使えないのだ。


 周介が金属の集積場所にやってくると、そこはかなり熱を持っていた。単純に熱を持っているというだけではない。作業によっては金属を融解させているところもある。


 空調などまったく意味がないというかのように扉を開けるだけで熱気が押し寄せていた。


「もしもし!廃材持ってきましたよ!鉄と銅です!」


「銅!?銅はこっちにくれ!早く!」


「鉄はこっちだ!急いでくれ!」


 何をそんなに急ぐ必要があるのかと周介は呆れるが、すぐに重機を操ってそれぞれの場所に鉄と銅の入った箱を置く。その中を群がるように確認していく職員たちをしり目にその場から離れようとしていると、一人の職員が周介の肩を叩く。


「ちょうどよかった!これを工房に運んでほしいんだ!風見さんから頼まれてた合金だよ!インゴット状にして入れてあるから、好きに使ってくれと言っておいてくれないか?」


「……わかりました、もっていきます」


 先ほどからこの繰り返しだ。廃材を再利用可能な状態にする作業場へともっていき、ちょうど出来上がった材料をそれぞれの現場や工房にもっていく。もう何度この流れを繰り返しただろうか。


 周介は箱に収まっているインゴット状の合金を重機に詰め込むと移動を始める。


「あの、ドクは工房にいるんですよね?」


「あぁ!そのはずだ!今頃各種装備に加えていろいろなものを作っているはずだ!たぶんだけど、ちょうど工房内の材料が足りなくなってくる頃合いだから気をつけろ!」


「それってつまり奪われないようにってことですよね……?」


「頑張って風見さんに届けてくれ!」


 製作班の人間はとにかく自分が作りたいものを作っている節がある。そんな中で材料が届けばその材料の奪い合いになる可能性も高い。


 組織の拠点の中にいるというのになぜ命の危険があるのだろうかと、周介は冷や汗を流していた。



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