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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
四話「小動物が生き残るために」

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 周介が粋雲高校に入学して、早いものでもうすぐ三週間が経とうとしている。この学校での生活も慣れてきて、友人も何人かできていた。


 好きなゲームの話から、好きな番組の話から、周介は少しずつではあるがクラスに馴染みつつあった。


 中学の頃からのエスカレーター組の人間も、そして高校からこの学校に入学した人間も分け隔てなく、広く交友関係を広げていた。


 そして、その中には一般人でありながら寮に住まう人間も含まれる。


「だからさ、違うんだよ。ここだ、ここでフェイント入れてんだよ。やばいだろこれ」


「すげえな。しかも途中でダッシュキャンセルして投げ入れてんだろ?でもその後なんか変な動きしてねえか?」


「ちょい待ち……ここだな。これあれだ、小パン入れてその後に大技出そうとしてそれをキャンセルしてんだ。こんなコンボありか?」


「待って、この人どうやって入力してんの?これやばくない?」


 周介が好きなゲーム、特に音楽ゲームと格闘ゲームだが、その中で格闘ゲームは同世代の男子には非常に受けがよかった。


 特に周介がやっているゲームの同好の士がほかにもいたのが大きい。周介は休み時間に携帯でそれらの動画を見てどのような入力をしているのかを把握しようとしていた。


「でもさ、ここ、相手が来るのをわかってから切り替えたんでしょ?反応速度すごすぎない?離れてるところから接近してるのを見たならわかるけどほぼほぼ至近距離だよ?相手の入力するところ見てても追いつかないよ」


「やっぱ大会は人外魔境の地だな。いつか俺もこういうところでやりてえなぁ」


「チームでも組むか?大会って個人戦とチーム戦があるだろ?」


「なんかボッコボコにされる未来が見えるけど、やってみてもいいんじゃない?大会いつだっけ?」


「っていうかそうなると練習しなきゃだけど、百枝って寮暮らしだろ?外出難しいか?」


「外出届も出さなきゃいけないしな……確かに面倒臭い。それならいっそ家庭用で……いや、寮にゲームを置くのってどうなんだ?」


「難しいんじゃない?寮の先輩いるけど、ゲームとかは没収されるって言ってたよ?個室でできる持ち運び可能なタイプじゃないと」


「据え置きはきついかぁ……クッソ、それならいっそ学校でゲーム部を創設しようぜ」


「それこそ学校が許さねえよ。あきらめろ」


 周介が好きなゲームはもちろん据え置きゲーム機として家庭版も発売している。そういう意味ではゲームセンターに行かなくても練習は可能だ。


 だが周介は寮生だ。寮にゲームを持ち込むということは基本的に許されてはいない。


 個人で楽しみ、なおかつ隠しやすい携帯型のものならよいかもしれないが、少なくとも据え置き機となればそれを出力するモニターも必要になってくる。


 それだけ大掛かりになると部屋でやるにしろ、談話室でやるにしろ迷惑になることは明白だ。

 そういったことを、仮にも学校の設備である寮が許すとは思えない。


「でも格好いいよなぁ、こんな立ち回りで勝ったら最高だぜ?スカッとすること間違いなしだ」


「確かに。間違いないね。対空入れるタイミングもそうだけど、相手のガード崩しが圧倒的に上手いな。こういうのどうやったらわかるんだ?」


「これ見てから反応してたんじゃ間に合わないだろ?間違いなく予測してやってるよ。見えないもの見えてるよ」


 動画の中で戦っているキャラクターの動きを一つずつ確認しながら、その技を出すのに必要なコマンドを一つずつ描き写していく中、それらの羅列を見て周介たちは愕然とする。


 入力速度の猶予があるとはいえ、恐ろしい入力量だった。


 一つでも間違えばコンボは成立しない。それだけのことを容易にやってのけるだけの人物が自分たちと同じ人間だというのだから信じられないことである。


「これやばいだろ。練習量的にも。腱鞘炎になるぞ」


「ちょい待ち。こうやって、こう、で、こう、次が?やばい覚える時点でくじけそう。ちょっとした公式とか例文より絶対長いだろこれ」


「これ相手の動きを見て途中でコンボ変えてるでしょ?なら本来のコンボもあったわけじゃん?ここからどうつながるんだろ?」


「相手が吹っ飛んでバースト入れた時からコンボが変わってるとして、ここから繋げられるとしたらあれか?すくい上げしてからの昇竜で空中に上げてからまた空中コンボか?」


「いや待って、確かこのキャラすくい上げした後って昇竜してもつながらないよ。ワンテンポ遅い。投げじゃない?すくい上げじゃなくて下小で崩して投げ。そこから立ち技とか」


 いくつも考察を上げていくが、実際に手元にそのゲームがないためにあくまで考察でしかない。


 全員が筐体のレバーを動かすような動きをしている中、何人かは手首を痛めそうになっているのか軽く指を鳴らしている。


「くっそ、帰りに絶対ゲーセン行こうぜ。って言ってもこれこの間の休みの大会だろ?この反響でかいぞ?たぶんゲーセンもめっちゃ混んでる」


「大会が終わったから空くってことはないか?今までガチ勢が練習してたんだし」


「逆だろ。ガチ勢が大会終わった後の練習、んでガチじゃない勢が大会に触発されて参戦、たぶんめっちゃ混むぞ」


「仕方ねえな……どうする?秋葉原まで足延ばすか?あそこなら山ほどゲーセンあんだろ」


「いやいや、あっちこそガチ勢が溢れてるって。間違いなく遊べないよ」


 学生であるがゆえに町などで遊べる時間も限られてしまう。部活などやっていればなおのことだ。

 周介たち高校生が遊べる時間は、多いようであまり多くはないのだ。


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