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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
三話「外れた者の生きる道」
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『あー、まずいねぇ』


 周介がバイクで移動していると、その耳に無線でドクの困ったような声が聞こえる。


 あまりよい声音ではなかったために、周介は嫌な予感が止まらなかった。


「どうしたんですかドク、何か問題でも?」


『うん、ビルド隊の進捗が芳しくなくてね、一部出入り口の封鎖が少々遅れている。相手が選ぶルートによっては、ちょっと時間稼ぎしないと逃げられる可能性が高くなるかもしれない。今までの報告からして、追手があるとわかると彼らは逃げの一手になるからね……ちょっとまずいかも』


 相手は警察が現れると同時に走行から逃走へと目的を変える。それは今まで得られた情報からもわかっていることだった。


 だからこそ首都高の出入り口などを封鎖して相手をこの首都高に閉じ込め、そのうえで捕縛するという作戦だったのだが、逃げ道をふさげていないのであれば逃げられる可能性も高くなる。


「すでに封鎖できているルートに誘導はできませんか?さっきの電光掲示板とかそういうので」


『それがね、一応一定方向に誘導できるように調整はしてあるんだけどさ、結構まばらに出入り口が封鎖できてないんだよ。どの道を通ってもどこかしらから突破されそうな感じで……あんまり状況よろしくないかな』


「じゃあどこかしらで多少なりとも封鎖までの時間稼ぎが必要になるってことですか。どうします?02に頼んで工事してる場所を増やしますか?」


『あたしは準備できてますよ。誘導さえしてくれれば工事区画作って多少なりとも速度を落とさせることはできますけど』


 瞳の乗っている車両などを使って工事を行っているという風に見せかければ、車線の削減によって相手の速度を一時的にとはいえ下げることは可能だ。


 もっとも、それだって一時的なことだし相手が速度を求めるタイプの暴走族である以上効果は微々たるものだろう。


 どこかで確実に相手を止めるようなことをしないと難しい。


 だが、それができるような状況ではないのも理解できてしまうだけに頭を悩ませてしまう。


 直接的な停止用のトラップなど仕掛けようにも時間が足りない。いっそのこと瞳の車両を使って事故を装ったほうがまだ止められる可能性は高い。


 だが同時に別方向へと移動される可能性も高い。


 後続車両が多く続いている場合であれば、前に進むしか選択肢はないが彼らはバイクだ。その気になれば逆走なんて簡単だろう。


 そして今回は組織の根回しによって一般車両が限りなく少ない状況になってしまっている。そのため相手が逆走しやすい環境になってしまっているのだ。


 作戦行動を行いやすい環境にしたはずなのにそれを相手に利用されては元も子もない。事故を装った停止はあまりしたくなかった。


「ドク、相手の足をどれくらい停めればいいですか?」


『そうだね、ちょっと待ってくれるかい?…………五分だね。このままのペースで進んでくれるなら、最長でも五分稼いでくれれば全部の出入り口は封鎖できる』


 五分。短いように聞こえるが実際は非常に長い時間である。五分間も相手をその場に足止め、あるいは五分間相手が走ると予測される範囲分だけ作業が遅れているのだから、徐行や減速程度であればさらに長く時間を稼がなければならなくなる。


「どうするか……アイヴィー隊の援護を期待するか?どうですか?」


『ダメだな。俺たちが出ていくのは相手を捕らえられる状況になってからだ。単純に足を止めるという状況だと周りを巻き込みすぎる』


 アイヴィー隊はあくまで足止めを専門とした部隊だ。今回は目標だけを捕えるのが目的であるため、もしこの状況で出ていけば当然一般人であるその他暴走族たちを多く巻き込むことになってしまう。

 組織の理念としてそれは避けたいところであるらしい。


「となると、俺らで何とかしたいな……02、今の装備の中に警察の装備とかもあるんだよな?」


『ある。って言ってもパトカーの外装をした車と、そういう服を着た人形だけだけど』


 人形は警察の装いをしている者も多い。だが彼らは警察が出て来たらおそらく逃げるだろう。逆走する可能性も高いため危険性は増す。


 だが単純に、少しの間足止めをするだけで良いのであれば方法がないわけではなかった。


 もちろん相手の出方次第だし、こちらの口が回るかどうかも問題になってくる。だがこのまま間に合わずにどこかに逃げられるよりはずっとましかもしれない。


「ドク、ちょっと相談があるんですけどいいですか?」


『なんだい?何か妙案でも?』


「ちょっと賭けっていうか、状況によっては何もしないほうがいいかもしれないんで何とも言えないんですけど……」


 もしこのまま何もせずに走らせたとしても、彼らは今までのデータで言えば一周程度は首都高を走るのだ。


 その間にすべての入り口を封鎖すればいいだけという考えもある。だが途中で違和感に気付かれて即座に逃げられるという可能性だってないわけではない。


 周介は自分の今の考えを、今回の指揮官であるドクに相談していた。


 それを決行するかどうかは、状況を俯瞰で見ているドクに判断してもらうしかなかった。


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