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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
三話「外れた者の生きる道」

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「そういえば他にもいるけど……あ、あそこに福島がいるから、あれがミーティア隊か」


 福島は周介の視線に気づいたからか、周介たちの方を見て軽く手を振る。


 周介たちがいる小太刀部隊の場所と大分離れた場所にいるのは、彼らが大太刀部隊の所属だからだろうか。


 遠くにいる福島に手を振って返しながら、周介は手越たちのすぐ近くの机に座る。


 机の上にはすでに資料が置かれており、今日の夜から始まる作戦行動に関する内容が記載されていた。


「そういや、お前大隊長に会うのは初めてだったっけか?」


「大隊長って、小太刀部隊のか?そういえば会ったことはないな……」


 一応四月から正式に入隊しているというのに一度も会う機会に恵まれなかったのはあまり良くないのではないかと思えてしまう。


 組織において新入りはとかく挨拶を必要とするものだ。会おうと思えば会えたのかもしれないが、周介にその暇がなかったのが悔やまれるところでもある。


「ドクもそのあたり気を利かせてやればいいのに……右も左もわからねえ新人を放置かよ」


「あの人にそういう気遣いを求める方が無駄ってもんでしょ。いつも百枝の新しい装備のこととか聞きに来たりするくらいだし」


「確かにな。しまったなぁ、ちゃんと挨拶くらいしておくべきだった」


 今日この場に小太刀部隊の隊長が来るというのなら、挨拶は絶対にしておくべきだ。といっても初めての依頼を受けるという状況であいさつするというのも非常に間抜けだ。


 小太刀部隊の隊長が怖い人でなければいいのだがと周介は頭を抱えていた。


「ちなみに、その大隊長ってどんな人?」


「女の人。そこまで怖い人ではないけど……どういえばいいかな。雰囲気はある感じ?ビビる必要はないけどしっかり丁寧に対応しておいたほうがいいと思う」


「お前な、あの人めっちゃ怖いぞ?やばいぞ?雰囲気っていうか威圧感がやばい。俺一度あの人に稽古つけてもらったことあるんだけどさ、やばかったからな?手も足も出なかった。まぁ俺の場合出すのは手だけだけど」


「手越で手も足も出ないのかよ……やばい人じゃん」


 周介は手越の実力を少しではあるが知っている。無数の手が一度に襲い掛かってくるその状況を思い出して、あれでも手も足も出ないという状況を想像することができなかった。


「ちなみになんて人なんだ?名前は?歳は?」


「女性に年齢なんて聞かないでよ?確か三十後半だった気がする。名前は柏木弥栄子。隊長とか、大隊長とか、やえさんとか呼ばれることが多いかな」


 女性でありながら小太刀部隊の隊長をやっているという事実に加え、手越を軽くいなせるという時点でかなりの実力者であることは間違いないだろう。


 そんな人物に今まで挨拶もしなかったという自分の間抜けさを呪いたいほどである。いくら忙しかったとはいえ、拠点にいる時間も長かったのだから挨拶くらいはできたはずなのだ。


 周介が頭を抱えていると資料を持ったドクと一人の女性がやってきて会議室の前の席に資料を置き始めた。


 ドクがパソコンを用意している間、女性は会議室の前に立つと姿勢を正し、腕を後ろに組んで胸を張る。


「よく集まってくれた、小太刀部隊、そして大太刀部隊ミーティア隊の諸君。事前に通達があっただろうが、今回は国土交通省からの依頼によって、首都高で主に活動している暴走族の中にいる能力者の拿捕が目的となる。相手は烏合の衆であっても能力者がいる。心してほしい」


 凛とした声だった。誰も声を発していない会議室で、腹の奥に染み渡るような声だ。


 長く黒い髪に切れ長の目が、わずかに肉厚の唇が、その女性が本当に三十台後半の女性なのか疑ってしまうほどの美しさを放っていた。


「今回は新しく構成されたチームの、ある意味初陣でもある。先輩能力者である諸君は彼らのフォローをしてくれることを期待する。ではドクター、説明を」


「了解です隊長。それではみんなおはよう。これから今回の依頼内容について話していく。同時並行で作戦なども説明していくためにしっかりと聞いておいてほしい。すでに情報は聞いていると思うが、今回の主な現場は首都高だ。対象は暴走族『ランアンドラン』の総長である能力者の拿捕だ。今までのデータから今日、明日の彼らの走行ルートのパターンをいくつか割り出したから見てほしい」


 そう言ってプロジェクターに映し出される首都高速道路の図と、そこを走るいくつかのルートをドクは示していく。


 内回りか外回りか、そういう単純なことではなく、どこから入り、どこへ出ていくのか、そういうルートの変更もある程度考察しているようだった。


 大きく分けて三つのパターンがあるが、そのどれも首都高を最低二周から三周するような走行ルートをとっている。


「今回の主な作戦としては新規部隊……えーと、ここではアルファ隊としておこうか。アルファ隊が暴走族チームを追う。そして追われた暴走族チームをアイヴィー隊が足止め、目標を捕縛するというのがメインの流れだ。ビルド隊には各高速道路の出入り口の封鎖、ないし走行ルートの限定を頼みたい。ミーティア隊は何かあった時の狙撃要員だ。もっとも狙い打ちやすい部分を用意したから、うまくやってくれると嬉しいね」


 なんと雑な作戦だろうかと周介は呆れてしまう。周介たちのような少数人数の人間が追ったところで暴走族のチームが逃げるとは思えないのだ。仮に瞳の人形を総動員しても同じことのように思えてしまう。


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