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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
三話「外れた者の生きる道」
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 ドクを探してしばらくしていると、ようやくメッセージを見たのか、ドクから連絡がありある場所に来てほしいとの連絡があった。


 そこはドクたち製作チームたちが主に装備などの開発を行う、いわゆる工房と呼ばれるような場所だった。


 周介は何度か足を運んだことがあるため、そこにいる理由を何となくだが理解してしまう。


「あの人また装備作ってんな。今度は何作ってんだか」


「そろそろ巨大ロボット辺り作ってくんねえかな?そうすれば色々と楽になるんだけど」


「ロボットかぁ、ビームとか撃てたりしねえかな?あとはビームサーベル的な」


「フォースとかだったらできるやつ結構いるんだけどな。ビームサーベルとなると敷居高そうだな」


 男子二人がそんな話をしている中、女子二人はその会話を呆れながら聞いていた。そんなものを作ってどうするのだろうかという表情がありありとわかる。


 とはいえそういったものは男のロマンなのだ。そのあたりに関してとやかく言われても仕方がないという感が強い。


 周介たちがドクたちのいる工房に到着すると、中から勢いよく大音量の騒音が叩きつけられてきた。

 金属を削る音、叩きつける音、機械の駆動する音、溶接する音、高速で何かを打ち付けるような音、ありとあらゆるものを作るための必要な音が響き合っていた。


「うるせぇええ!なんだここ!こここんなにうるさかったか!?」


「あれだ!俺が電気起こせるようになったせいでここがフル稼働してんだろ!前まで一度に動かせなかった機材が一気に動いてるからやばいことになってんだよ!」


 周介が大規模な発電を行うことができるようになったことにより、今まで施設の維持や必要最低限な施設の稼働だけに使用していた電力をこういった余計なことに回せることになったため、今まで製作欲を持て余していた製作チームの人間は自身が思うような装備や道具を作ることができるようになり、喜々としてモノ作りに励んでいるのだ。


 電力が十分に供給されるようになったおかげというべきなのか、そのせいというべきなのか、この騒音を前にするとこれがよいことであるという絶対の自信はなかった。


 周介と手越が中に入っていく中、瞳と白部はこの中に入りたくないのか、早々に工房の扉を閉じて廊下に退避していた。


 無理もないだろう。このような空間にずっといれば耳がおかしくなってしまう。すでに大声で話さなければ聞こえないほどの音量が常に周介たちの周りに満ちているのだ。


「ちょっとこのうるささは尋常じゃねえぞ!耳が壊れそうだ!苦情入ってもおかしくねえぞこれ!」


「さっさとドク探して出ようぜ!ドク!どこにいますか!?ドク!」


 こんなうるささでは携帯が鳴っていても気づけはしないだろう。良くドクが気づけたものだと感心するが、物作りに没頭してこれだけの騒音を放っているところを見てしまうと全く褒める気がしないのは仕方のない事かもわからない。


「ダメだ!全然見当たらねえ!ってかここ物増えすぎだろ!なんだこれ!工場かよ!」


「似たようなもんだろ!見たことない道具ばっかりだ!どっから持ってきたんだこんなもん!今からでも電気止めてやろうかな!」


 これだけの騒音と機材がある中では人を探すのも一苦労だ。探せども探せどもドクの姿を確認することができない。


 そんな中周介たちはいくつもの装備を目にしていた。それは周介が使うものでもあり、手越が使うものでもあり、他の能力者が使うものでもあった。


 今までこういった個人装備を作るのは最低限で済ませていたが、明らかに改良を加え、なおかつより良いものを作り続けようとしているのがこれらから見て取れる。


 とはいえ少々やりすぎな感がなくもない。中には鎧のようなものもあるのだが、明らかに攻撃力を意識しすぎているようなものもある。


 実用性よりも製作者の趣味が大きく反映されているであろう物品の数々、それらを見ていい顔ができないのも無理もないだろう。単純にうるさいから顔をしかめてしまうというのももちろんあるだろうが。


「おい見ろよ!刀とかもあるぞ!誰が使うんだあんなもん!」


「あぁ!あぁいうのが得意な人もいるんだよ!中にはあれだぞ!チェーンソーみたいな武器使う人もいるぞ!基本的に大太刀部隊の奴が多いけどな!」


「やっぱ大太刀部隊のイメージヒャッハーで合ってたわ!あんなもん振り回してる時点で文化人とは程遠いだろ!」


「お前大太刀部隊の連中の前で絶対それ言うなよ!?間違いなく怒られるからな!」


 大量の装備を見ながら奥の方へと進んでいくと、奥の作業台の一角でヘッドホンをつけてノリノリで何か道具を作っているドクの姿を見つけることができた。


 おそらくヘッドホンで大音量の音楽をかけているのだろう。この騒音の中でもわずかに音が漏れているのが聞こえていた。


「ドク!来ましたよ!白部が依頼の情報を……って聞いてねえよこの人!」


「ドク!ドクター!」


 周介が肩を掴んだことによってようやくその存在に気付いたのか、ドクはヘッドホンを外して二人に向けて笑みを作っていた。


「やぁ二人とも!よく来たね!ここは良いところだろう!?いくらでも物が作れるんだよ!ちなみに今は新規格のプロテクターとそれに合うジョイントを」


「さっさとここを出るぞ!百枝!そっち持て!」


「合点!」


「ちょ!待って!あと五分、いや十分ちょうだい!それでキリがいいところまで完成するから!お願い!」


「あー!あー!聞こえないぃぃ!」


 騒音の中周介と手越はドクを掴んで無理やりに工房の外に引きずり出していた。


 廊下に出た後も騒音が耳から離れなかったのは言うまでもないだろう。


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