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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
三話「外れた者の生きる道」
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「つまり、今回の相手は危険性は少ないってことか」


「能力者としてはな。ただあくまで今まで無能力者を相手に逃げてきたからそういう反応をとってただけかもしれないし、三十人近い仲間がいるってことも忘れんなよ?普通に袋叩きにされることだってあるんだからな?」


「そうだ、それを忘れてた」


 いくら周介が能力者になったとはいえ、別に周介の能力は戦うことに特化しているわけでも何でもないのだ。


 三十人の人間に囲まれて袋叩きにされれば、当然周介のような貧弱な人間はひとたまりもないだろう。


 周介は別に喧嘩が強いというわけではないのだ。普通の人間に殴られたりけられたりするだけで十分に致命傷になり得てしまう。悲しいかなそのあたりは普通の人間と何も変わらないのである。


「お前らが追い立てる間に、俺らが周りの人間をうまいこと散らしていくのが作戦の一つなんじゃないか?露払いくらいはしてやるよ」


「頼もしいな。けど平気なのか?相手は暴走族だぞ?」


「一般人にビビってられるか。こちとら能力者相手に何度も戦闘してきたんだぞ?それに別に倒す必要はないんだ。ちょっと引き離してやればいいんだから。そのあたりは俺らの部隊の得意分野だぜ」


 手越の所属する部隊、アイヴィー隊の得意分野は足止めだ。相手をその場に留めること、一定の場所での遅滞戦闘こそが彼らの本領である。


 別に相手を倒す必要などない。相手が走り続けているのであれば、少しだけ遅らせるだけでも十分戦力を削ぐ結果となる。


「それに相手が乗り物に乗ってるっていうならよ、それこそやりようによってはどうとでもなるぜ?簡単に分断だってできる。こっちにだって人数はいるんだ。やりようはあるだろ?」


「簡単に言うけどさ、そんなに簡単に行くか?相手は集団だぞ?」


「暴走してるって意味じゃ集団だけどな。相手が集団だろうとこっちは部隊だ。適当に集まっただけの集団と組織ってのは違うってこと。まぁそのあたりはやってみりゃわかるって」


 簡単にできるとは思えないのだが、そのあたり手越にはいくつか考えがあるようだった。


 だがそういう彼の目には、わずかながら不安というか迷いのようなものがあるように周介は感じられる。周介はその目を見て少しだけ不安になっていた。


「で、本気でそれがうまくいくと思ってる?」


「思わない!さっきも言ったけど思った通りに事が動くなんて十回に一回あるかないかだ。情報が足りない状態じゃどうやっても不確定要素が多すぎるんだよ。だからいくつも作戦作って柔軟に対応しなきゃいけないんだ」


 自分の頭の中で考えていることが常にうまくいくわけではない。その辺りを手越はよくわかっているようだった。


 今まで何度も実戦を行ってきて学んだ経験則からきていることなのだろう。うまくいくことなどほとんどない。たいていは失敗したり予想外のことが起きたりする。


 だがだからこそ作戦をいくつも立てるのだろう。何か一つが間違ってもどうにかなるように。


「今回で言えばさ、俺とお前の部隊に出動要請がかかってるけど、他の部隊にもかかってると思うんだよ。俺らだけじゃ対応できないってこともあり得るからな。それが待機部隊なのか出動部隊なのかはわからないけど」


「待機と出動じゃやっぱ意味が違うんだよな?」


「大違いだな。出動は当然作戦のメインになって動くチームだ。いくつかの部隊か、あるいは単独かは場合によるけど、そういう部隊で合同のチームになって行動して問題解決にあたる。対して待機部隊はメインの出動チームで対処できなくなった時の保険だ」


 保険という表現は独特だったが、実際に行動している部隊だけでどうしようもなくなった時の対策というのも必要なのだろう。


 周介は知らないことだが、あの高速道路の一件の時にも大太刀部隊が待機状態にあった。そういった保険をいくつも備えておくのは悪いことではないのだ。


「今回の場合、どういう部隊が待機状態になるんだ?」


「んー……俺ら小太刀部隊を出動部隊にしてるなら、小太刀部隊を追加で二部隊、大太刀部隊を一部隊ってところか?ただ、場所が首都高が多いってこともあって機動力がある部隊が選出されるとは思う。相手の能力者が一、無能力者多数だとこんな感じか」


「無能力者がいなくて能力者だけだったらどうなるんだ?」


「その場合は俺ら小太刀部隊だけ。んで、場合によっては大太刀一部隊ってところじゃないか?一人相手に割ける人員なんてそんなもんだろ」


「そういうもんか、なんか暇な人多そうな印象だけどな」


「実際暇してる大太刀部隊は多いと思うぜ?けど、強い力を持ってる人間ってのは動かしにくいんだよ。警察だっていきなり拳銃ぶっぱなしたりはしないだろ?最初は口で、次に警棒、拳銃は本当に最後の手段だ」


「なるほど、確かにそう言われればそういうもんか」



 警察を引き合いに出すあたり、自分たちの所属している組織が秩序の側にあるのだなというのを周介は実感していた。


 といっても、表立って行動できないという意味では警察とは似て非なるものなのだろうが。


 強い部隊を出すためにはそれだけ相手も強かったり面倒でなければいけないというのが、なかなかに面倒なところだ。


 だがこれも人間社会の上では仕方のないことなのだろう。


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