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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
三話「外れた者の生きる道」
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「お、ようやく来た……って、なんで福ちゃんそんなにボロボロなわけ?」


 周介たちは待ち合わせをしていた鬼怒川と合流していた。


 校長に会っているとき、しきりにいらない発言をして笑わせようとしていた福島は全員によって攻撃され、かなりボロボロになっていた。


「いろいろありまして。で先輩、校内を案内してほしいんですけど」


「了解。一応ぐるーっと回っていこうか。この学校いくつか校舎があるから全部回ってるとかなり時間かかっちゃうけど」


 粋雲高校は生徒たちの教室がある第一校舎と、特殊な教室、理科室や音楽室といった広く、特殊な設備が必要な教室をまとめた第二校舎、そして職員室や会議室、客などが来た時の応接室などをまとめた第三校舎などがある。


 今周介たちがいるのは第三校舎と第一校舎の中間にある中庭の近くにある通路だった。


 一つ一つの設備を紹介していたのでは文字通り日が暮れるだろう。


 そんな中、一緒に行動していた誰かの腹が鳴る。


「あはは、腹減りか。じゃあ購買でなんか買って、紹介しながら食べていこう。この後授業もないんでしょ?」


「えぇ、この後は帰るだけですけど、お前らも予定はないよな?」


 寮に住んでいる人間であればこのまま寮に帰るだけなのだが、通ってきている人間はそうではない可能性もある。


 今日が学校自体が早く終わることを知っていて、何かしらの予定を組んでいる者もいるかもしれないという配慮だった。


「俺は特に何もないな」


「同じく」


「別にない」


「オッケー、じゃあ購買部から順に回っていこうか。部活やってる人とかもいるから注意ね。そのあたりは加奈ちゃんよろしく」


「わかりました」


 この中での索敵役を担っている桐谷は小さくブイサインする。桐谷の能力がいったいどのようなものなのかは詳しくわかっていないが、先輩である鬼怒川が信頼しているということからそれなりに高い精度を有しているのだろう。


「ところで鬼怒川先輩、他の先輩は?」


「あー、あいつらはダメダメ。後輩を可愛がってやるという気持ちが皆無だ!奴らに先輩面を期待したって無駄なんだ!うちのように優しくないからな!」


「まぁ、先輩はそういうとこ無頓着ですけど……優しい……?」


「ヘイてごっち、何か言いたいことがあるなら聞こうじゃないか」


「いえ、なんでもないっす」


 軽く首を絞められている手越を救出しながら、周介たちは購買部へと向かうことにしていた。


 一階部分にあるその場所には文房具だけではなくちょっとした食べ物なども販売している。具体的にはパンやカロリーメイトなどの食材だ。


 あまり栄養価的には良いとは言えないようなものだが、腹を満たすには十分すぎるラインナップだといえるだろう。


「そういえばさ、先輩以外に俺らと同類ってどれくらいいるんです?」


「ん?うち以外にも何人もいるよ。そのうちの何人かは、たぶん百枝君は会ったことあるんじゃないの?」


「え?俺が?」


 周介はあまり組織内の人間とかかわってきていない。まだ訓練段階にあるということもあるため、そこまで誰かと一緒に行動したこと自体がないのだ。


 だが会ったことがあるということは組織内ですれ違ったりしただろうかと首をかしげていた。


「あぁ、俺のチームの先輩な。ほれ、前の高速道路で会ってるだろ?」


「……あぁ!あの人たち先輩だったのか!なんて人なんだ?」


「てごっちのチームだと、小堤と大網か。あの二人も気難しいからなぁ」


「いい先輩ですよ?普通にしてりゃ」


「おいそれだとうちが普通じゃないみたいな言い方じゃないか」


 再び首を絞められる手越を救出しながら、周介はあの時の高速道路のことを思い出していた。


 高速道路にいた時に助けてもらった能力者、一番イメージしやすかったのは盾を持っていた能力者だ。


 警察などがもっているような長方形の盾。あの人物しか思い浮かべることはできなかったが、どちらにせよ顔などを隠していたためにそれ以上の特徴を思い出すのは難しかった。


 あの時にいた能力者二人がそのような名前であるということを知って周介は今度挨拶にでも行こうかなと考えた。


 だが学校内で関わりのない人間がいきなり挨拶に行くのもどうなのだろうかと首をかしげてしまう。


 寮の中に住んでいるというならば挨拶くらいはできるのだろうが、二人が寮に住んでいるかもわからないのだ。


「いい人だったら挨拶くらいはしたいよな。手越、その二人は寮にいるのか?」


「いいや、二人とも実家暮らしだとさ。放課後だと大抵組織の拠点にいると思うぞ?」


「やめとくんだ百枝君、奴らはこうして困っている後輩たちに手を差し伸べることもしないアイスハートの持ち主だ。挨拶してもシカトされるぜきっと」


「俺らの先輩を貶めるのやめてくれませんか?普通に良い人ですから」


 嫌な思い出でもあるのか、それとも単純に今日この場にいないのが気に食わないのか、鬼怒川は鼻息を荒くしながら食って掛かっていた。もっともその相手がこの場にいないのが少し複雑な気分でもあるが。


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