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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
一話「蒼い光を宿すもの」
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 男たちが帰っていったあと、英二は周介の肩を掴んでいた。


「周介!何を考えている!お前があんな連中と一緒にいる必要は」


「父さん、さっきも言っただろ。あいつらは手段なんて選んでこないぞ。次は俺だけじゃない、麻耶や風太が危なくなることだってあり得るんだ。相手に警察がいる以上、警察だって味方をしてくれないかもしれない」


「それは……」


 英二も頭ではわかっていたことだろう。だがそれでも、自分の子供がどこの誰ともわからない連中に連れていかれるということは許容できないのだろう。


 しかし周介の言うように、相手側の勢力はおそらくかなり大きいと予想することができる。警察を名乗る者、そしてそれらに関係するようなことを言ってきたのだから。


「でも一応、そういう人が警察にいるかどうかの確認はしたほうがいいと思う。問い合わせれば確認はできるだろうし……でももしいたら、もう逃げられるだけの道はないと思ったほうがいい」


「……逃げられないのなら……そう考えて、あの条件を?」


「向こうの狙いが俺なら、そこまで分の悪い賭けでもなかったしね……それに、あの電車の暴走を止めようとしたやつの仲間ってことは、少なくとも悪い連中だとは思えない」


 あのおっさんはすごく嫌な感じだったけどと付け足しながら、周介は手元に残っている契約書類と高校のパンフレットを見る。


 周介が引き起こしたといっていたあの列車の暴走を止めるべく、あの黒ヘルメットの男がやってきて、周介をあの電車から降ろしたのだとして、そんなことをする人間が悪の方向に向いている組織にいるとは思えない。


 何かしらの理由があったにせよ、少なくとも状況から察するに秩序を維持するために存在する組織なのではということは想像できる。


「この高校……どこのだ……?」


「ちょっと待て、調べる」


 父親は自分の携帯でパンフレットにある高校を調べ始める。周介はパンフレットを見ながら、その高校がどのような場所なのかを把握しようとしていた。


 少なくとも自分が住んでいる場所からは通えそうにない。都心に近いが、周介の住んでいる場所から頑張っても二時間から三時間はかかるだろう。そんな場所から通える気はしなかった。


「わかったぞ。偏差値は六十九、昔からかなり有名な高校らしい。名門というよりは……何といえばいいかな、学習院とかに近いか」


「すっごい優等生が通う学校だってのはわかった。けど間違いなく俺の学力じゃ足りないだろ……」


 周介の学力は平均的だ。模試の偏差値も五十台ばかりで、偏差値が六十台後半に行くような学校など受けられるはずもない。


 だがあの男たちはそれを何とかできるような立場にあるのだろう。


「ここからじゃ通えなさそうだけど……どうなるんだ?」


「一応パンフレットには学生寮完備ってなってる。ここに入れってことなのかね……」


「こっちの書類に書いてあるんじゃないか?注意事項とかを載せてるって言ってただろ?」


 周介と英二はそれぞれ情報を集めながら、今自分たちが置かれている状況を正確に把握しようと努めていた。


 与えられた情報はすべて把握し、共有しなければ大変なことになりかねない。特に契約書関係は隅から隅まで、小さく表記されているようなものがないかまで事細かに確認していく必要がある。


 相手が用意したものなど、信用できるはずもないのだ。


「だけど周介、お前大丈夫なのか?」


「大丈夫なわけないじゃん。試験は受けられないしわけわかんないスカウトは来るし、頭の中ぐちゃぐちゃだよ」


 不安と緊張と怒りなどで、周介の頭は文字通りぐちゃぐちゃになっていた。腹の奥から湧き上がってくるこの感情がいったい何なのかわかっていないほどに、周介の感情は乱されていた。


「それはそうか……すまん」


「なんで父さんが謝るのさ。もとはといえば俺が変なことになったせいだろ……ってそうだ。あいつ、俺は超能力者になったって言ってたよな……」


 周介は思い出したように、中腰になって力をため始める。


 全力で全身に力を込めて両手を前に出して目の前にある飲み物の入ったコップに集中しだした。


「何やってるんだ?」


「超能力が使えないかがんばってる。目光ってる?」


「いいや全然。簡単に使えるものじゃないんじゃないのか?」


「そりゃそうだよなぁ……訓練もせずに使えるようなものじゃないのか。こんなに簡単になれたらそりゃ報道位されるよ……な……」


 簡単に超能力者になれて、簡単にスーパーマンのような活躍ができるようになれば苦労はない。


 そんな状態に簡単になれるのであれば、世の中にはもっと超能力者が増えていて、なおかつ世に認知されているということだろう。


 そしてそこまで考えて、超能力者に関するうわさや事実などが一切報道されていないことを思い出す。


 もしかしたら、周介をスカウトした組織の手はマスコミにも届いているのではないか。そんなことを考えて、周介はわずかに背筋が寒くなっていた。


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