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闘いたいお年頃

作者: aki o

 さて、私は今、とあるターミナル駅で列車が来るのを待っています。電車に飛び込んで英雄ずらするのも、それはそれで面白そうですが、そうすると、きっと地獄行きになるだろうから止めておきましょう。何事にも、TPOが大事。本当は死ぬのが怖いだけです。

 ターミナル駅というのは、折り返しの列車を待つことで、ほぼ確実に座ることが出来ます。十分、あるいは、十五分待てば確実でしょう。それなのに、皆さん混雑する列車にダイビングしたがる。僕と違って早く家に帰りたいんですね。最愛の奥さんとロマンスなひと時?あるいは、若いお姉さんとデート?


 どちらにしても、僕には縁遠い話。恋がどうとか、そんなことを語る資格はありません。僕は外見がホームレスのように汚く(風呂に入るのは週に一回)、顔が不細工なので誰も近寄りません。席の隣に座られる方には非常に申し訳なく思いますが、僕ではなく神様を恨んでください。

 さて、電車の中ですることと言えばなんでしょうか?僕はスマートフォンを持っていませんので、ゲームをやるとか、音楽を聴くとか、そう言った類のことは出来ません。一応大学生なのですが、ソーシャルネットワーキングサービスというものには疎く、そのお陰でしょっちゅう一人ぼっちなわけです。


 一人ぼっちって楽しいですね!(完全に強がり)

 良いですよ。僕は愛しのひよこを愛でますから。勿論、人形のことですよ。

 個人の時間を何に使おうと勝手ですから。公序良俗に反しない限りは。


 さて、僕は戦争が嫌いな平和主義者ですが、世の中には戦争の火種が数多く見受けられますね。僕の通う大学の近くには繁華街が多いので、一晩中喧嘩が絶えないでしょう。昨晩も誰かがナイフで串刺しになったとか。みんな、そんなことを平気で口にしますね。僕の同級生の中にも、そういう繁華街が好きな人がいます。勿論、個人の趣向をとやかく言うつもりはありませんから、口出しはしませんが、仮に僕が先生という立場で、彼らに接するとしたら、そんなところには行かないほうがいい、という所でしょうか。大学生は基本的に大人だから、誰かが何かを言っても、それに耳を傾けないでしょうが。でも、やっぱり注意くらいはした方がいいでしょうか?


 喧嘩するのは勝手ですが、無関係な人間を巻き込むことだけは止めてほしいと思います。僕は極度の怖がりで、飛行機にすら、乗る気がしないほどです。馬鹿にされますが、その方がましです。用心に越したことはない。用心しないと得られない利益って、恐らく、命よりも小さいはずですから。


 さて、今、僕の頭上を銃弾が行き交っています。勿論、言葉のですよ!本物だったら、僕は一体どうすればいいのやら……。

 言い争っている二人は、まさか僕が実況中継していることを知っていますでしょうか?恐らく知らないでしょう。知らないほうが良いですね。後で変な言いがかりをつけられるのが怖いので。

 あぁ、そうそう。それならば何でこんな物書いているんだ、と疑問に思われる方もいるでしょう。自分でも馬鹿らしくなりますね。でも、何か書いている方が楽なんです。僕には自由がありません。常に社会から監視され、電車に乗る時さえ、常に誰かの視線を感じる。お金なんて持っていませんから、何か物を買うことなんて出来ない。だって、スマートフォンすら持っていないのですから。

 しかしながら、言論の自由とかいうものは、僕にも与えられているようです。無論、このように意味不明な文章を書くと、すぐさま、中傷が飛んできますが。でも、僕はそれが嬉しいのです。自由を感じられる唯一の瞬間なのですから。心の中で、うざい、と思えますしね。涙でも流してみますか。誰か、一人くらいは同情してくれますかね?


 話を戻しましょう。言い争っているのは、二人の男女。原因はよく分かりませんが、どうも痴漢ではなさそうです。それというのも、女性は大部お年を召された方で、お世辞にも……とは言えません(最も僕には論評する資格など、ないのかもしれませんが)。

 女性は先程から、時折大きな声を上げていました。妄想、あるいは、発声練習でしょうか?中々綺麗な音なので、オペラ歌手かもしれません。それを横で聞いていた男性が遂に声を荒げて怒りました。早い話、五月蠅い、ということなのでしょう。その気持ち、残念ながら僕には理解できません。何と言っても、彼女の声は天下一品。いや、流石に、マリア・カラスとまではいきませんが、それなりだと思いますよ。だから、僕にとっては子守歌みたいなものなのです。そうですね、交響曲を幾つか頭の中で演奏してみました。彼女の美しいソプラノの旋律に合わせて。

 しかしながら、女性は男性に対して何ら反論することなく、すみません、とだけ言いました。僕にとっては少し残念でしたが、まぁ、仕方のないことです。これで一つ、貴重な才能が潰れなきゃいいのですが……。


 才能と言えば、人間は誰しも何がしかの才能を持っているものです。僕は……何もありませんね……。強いて言えば、早寝が得意、ということでしょうか?何も取り柄のない人間はいなくても同じ、と誰かが言いました。つまり、僕はロボット以下だ、ということです。ロボットに才能を加えたものが人間だとすれば、僕はロボット以下になってしまう。しかしながら厄介なのは、一応、民主主義とか、人権を謳っている国なので、僕を抹殺することが出来ない、ということです。

 

 知ってますよ。役に立たない人間は死んだほうが良いって、みんな思っています。だから、そうすると、僕はお荷物だから、死んだほうが良いと思われるでしょう。汚くておまけに馬鹿。


 馬鹿野郎って何回怒鳴られたことでしょう……。

 まぁ、事実だから返す言葉がないんですけど……。


 僕に残された選択肢と言えば、命尽きるまで物を書き続けることです。これだけは頼むから取り上げないでくださいね。皆さんがどう思うが、僕は書き続けるのです。


 人よりも多く絶望を感じると、もう何もする気が無くなりますね。一日一日を楽しいと感じる人は本当に幸せです。僕にはそれがありませんから。もう間もなく、絶望すら感じなくなるのでしょう。


 言論こそが最大の武器だと言われた時代がありました。今はどうだか知りませんが、まぁ、まんざらではないでしょうね。僕がこうして闘う理由にはわけがあります。それは何か?


 もし、崇高な理念を想像していた方には申し訳ないのですが、それは自分自身のためです。一つは、不安定な精神状態を安定に保つため。もう一つは、漠然とただ、有名になれたらいいな、って思うことでしょうか?


 ここまで読んでいただいた方には非常に申し訳なく思いますが、結局、それくらいしか頭に浮かびません。こればかりは、普通の社会人感覚と似ているのでしょうか?


 闘うとか格好つけた言い方してますけど、そこには正義何てものはありません。上っ面だけ、そう言うことにしておきますか。実際はそんなことどうでもいいんです。


 最後に一つだけ。闘うのなら是非言論で。銃弾を撃ち込まれたら、もはや、何の感情も抱けなくなってしまいます。世界中にこういった考えが広がると良い、などと、またまた大冗談なことを言いますが、こればかりは本当です。死ぬと有名になる、というのはある意味本当なのでしょうが(曝しものになるというのも含んで)、僕はとりあえず生きていたいので、そういうことは一切考えません。


 間もなく電車が終点に到着しようとしています。ここから乗り換えてあと二時間。今日も平和に終わりましたか?自宅に帰ったら、改めて一日を振り返ろうかと思います。


 

 

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