『アイリス奪還作戦』
「何かいい策があるんですか?」
「ちょっとね〜」
そういい俺は、少し準備があると言ってこの場を後にした。
昼を迎えるにあたってだんだんと暖かくなって来ていた。この世界にも四季があるのだろうか。もしそうだったら今は春と言った感じだ。
「よっしゃ!休憩もここら辺にして集めるもん集めますかね!」
そういい俺は行動を再開した。今日の18時にはなんとしてでも間に合わせなければならない。タイムリミットは残り…5時間と言ったところだろうか、目標まで後半分くらい…なんとしてでも間に合わせる!
〜5時間後〜
「風牙さん…まだかな〜」
今現在の時刻は17時50分。約束の時間まで後10分である。その時俺はというと…
「ハーハー…やばいな〜後10分しかないぞ」
全力で走っています…目標の数値まで集めるのに思ったよりも時間がかかってしまい慌てて会場に向かっている。頼む!間に合ってくれ!そう願って全力で走る俺だった。
「さー!今からオークションをはじめまーす!」
「「いえーーーい!」」
会場は盛り上がっていた。見ていて気分が良くないと思うエルザとセルザと大きな不安を抱えるカリンだった。そして3人とも風牙が来ないことに一番の不安を抱いていたのだった。
「風牙はどこに居るのよ!約束忘れてんじゃないの?」
「そんなことないと思うんですが…」
その時3人はただ1つのことが風牙がくるまで起こらないことを祈っていた。が、現実はそれをさらっと裏切った。
「1人目は〜隣の国の美少女ーアイリス・クルーレ‼︎」
「「オー!」」
まさかの1人目にカリンの友人が出て来てしまったのだ。
「とうとうやばいよ〜どうしよう」
「ふうがさんは…まだかな」
「アイリス…」
当然のことながら願いが伝わることは無く、
「初期値100万ビルから…スタート‼︎」
「ひゃ、100万ビル‼︎高すぎるわよ!」
「私たちの持ち金じゃ足りないよ」
「…どうしよう」
考えている間にもオークションは進んでいっていた。
「150万」「260万」「400万」「800万」
どんどん上がっていく。もちろんエルザたちでは手も足も出ない金額である。そして、オークションは一気に動き出した。
「5000万‼︎」
まさかの金額に会場がどよめいた。そこから金額は動く雰囲気はなかった。
「もうだめですね…諦めましょうか」
そういったのはカリンだった。
「いいの⁈大切な友人でしょ!そんな簡単に諦めちゃだめでしょ!」
「でも、私たちには手を出せないですし」
「…それはそうだけど…」
その言葉にエルザとセルザは息を呑んだ。3人で諦めるという結果になった。その時だった。
「1億ビル‼︎‼︎」
ありえない金額の提示が会場を騒然とさせた。誰かと思い見てみると3人はびっくりした。
「「「風牙さん!」」」
「よかった〜なんとか間に合った」
俺は荒い息を整え、気持ちを落ち着かせた。
「でも、どうしてこんな大金を?」
カリンの疑問に他の2人も同感のようだった。俺は彼女らに全て話した。
カリンの友人であるアイリスを助けようと思った時、俺の中には2つの策が出てきた。
1つ目は、単純にオークションに勝つためにある程度の大金を集めることだ。アイリスを助ける確率は高くなるが、集める時間が限られている以上かなり困難になると考えた。
2つ目は、会場に強襲し力尽くで助け出す方法。準備する時間を短縮することができるが、その分リスクを伴う。それに相手が国なので俺たちがどうなるのかわかったもんじゃない。
その時俺は、確率として高いのは1つ目のあんなのでそっちを決行することにした。しかしタイムリミットが9時間しかないというのもあり、なかなか効率の良い方法が見つからなかった。手っ取り早く儲けるには、そこらのギャンブルに首をつっこむか、各店のレジの金を抜くしかないと思った。後者は100%捕まってしまうので止めるとして、ギャンブルしかないのかと考えた。ギャンブルもたかが確率、確率の高い方を選んでまたしても確率の問題…数学で出てきたら間違いなく正答率10%下回るだろう。そんなことに人の運命をかけて良いのか?そう思いながらこの国最大と言われる中央ギルドにやってきた、エルザに聞いておいて正解だった。
一つ一つ報酬とかかりそうな時間の効率を考えていたら、ある依頼を見つけた。
【終わりのない大掃除】
内容:無限に湧き続けるNEOスライムの討伐
報酬:NEOスライム10匹で10000ビル
NEOスライムというのは聞いてみたところそこまで強くないらしい。20秒に10匹倒せるそうだ。単純計算で1分で30000ビル、1時間で180万ビル、9時間で1620万ビルといったところだ。NEOスライムからドロップする『NEOオイル』は1つ売ると、5000ビルするそうだ。計算すると、9時間で約16200匹倒せるので単純計算で9時間で、8100万ビル溜まることになる。合わせて9720万ビル…十分だ!そう思い俺はひたすら狩り続け結局、討伐数は約20000匹、合計報酬は1億2000万ビルになった。取引やらなんやらに時間がかかり焦って走ってきたというわけである。
そして現在に至る
「そういうこと…相変わらず今朝といい無茶するわね〜」
「それが俺ってもんよ!」
そう威張って言い、今までの経緯について話を終えた。
無事にオークションも終わり1億ビルでアイリスを助けることに成功した。
「アイリス‼︎」
「……カリン⁉︎どうしてここに⁈」
「この風牙さんが助けるためにオークションに参加したの」
「私のために…」
そこで言葉を詰まらせ俺の顔をじっと見つめてきた。…なんか恥ずかしい。
「ありがとうございます…風牙さん」
「いえいえ、当たり前のことをしたまでだよ!」
そう言い俺は宿にみんなを連れて戻った。
『アイリス奪還作戦』大成功‼︎