百聞は一見にしかず?
エルザについて行くこと5分と言ったところだろうか。宿屋『郡商』に着いた。
「ここです」
「わざわざありがとね」
「いえ!助けて貰ったのでお礼と言ってはなんですが...」
「助かったよ!」
「//////」
「ん?どしたのエルザ、顔が赤いよ?」
「い、いえ!なんでもありません!」
「そう?」
詳しくは関わらない方がいいのかもしれないと思ったところで俺は宿でチェックインを済ませた。
「あのー、どのくらいここにいる予定ですか?」
「一応1ヶ月間のチェックインで言ったからそのくらいかな」
「そうですか」
そんな、呑気な話をしていると宿の扉が勢いよく開いた。
「ただいまー!お?エルザ帰ってきてたの」
「お姉ちゃん。お疲れ様」
「なんのこれしき〜。ん?そちらは?」
「風牙さんだよ、オルガーに絡まれてるとこを倒して助けてくれたの」
「え?あのオルガーを倒したの?...あんたが?」
「えぇまぁ」
「妹を助けてくれてありがとね」
「いえいえ当たり前のことをしたまでだから」
「私はセルザ・サキュレット。セルザって呼んでね」
「宜しくねセルザ」
自己紹介も終わったところで俺はセルザが入ってきた時から気になって仕方がなかったことに触れてみる。
「そのー抱えてるものは何?」
「これ?これはウォーウルフの牙よ」
「牙?なんでそんなものを?」
「クエストよこの牙を20本集めてこないといけなかったの。まぁだいたい10体ってところだったかな」
(この人、もしかしてとんでもない人かもしれないぞ?)
恐怖を感じていた。
「じゃあセルザは戦闘系なのかな?」
「当たり前よ!私のジョブは『バーサーカー』だもの」
「ジョブ?バーサーカー?」
「あなた何も知らないの?」
「まぁ、文字も読めないです...」
「よくそんな人がオルガーを倒せたわね」
(あれはカミサマ効果って言うかなんというか...)
「まぁ、エルザを助けてくれたお礼で、色々教えてあげるよ」
「それは助かります…」
それからセルザの講習会が始まった。
「まずジョブについてね」
「うん」
「ジョブは主に3つあって『剣士』『魔法使い』『格闘家』の3つが基本になってるの」
「え?んじゃセルザの『バーサーカー』ってやつはなんなの?」
「『バーサーカー』は『格闘家』の上位版だよ。モンスター撃破時やクエストクリア時に獲得出来るSKLポイントでレベルを上げられるの。上げていくといくつか分岐できるんだけど、『バーサーカー』は1つの分岐の最上位なんだよ」
「さ、最上位!?」
「そ。ちなみにエルザは『ウィザード』なんだけど、『魔法使い』の最上位のひとつだよ」
(もしかして、俺今すごい人達の前にいるのでは?)
話を聞く限り、この姉妹がすごい人だとしか思えなくなり少し怖がってしまっていた。
「んじゃさ、『剣士』は剣が使える、『魔法使い』は魔法を使える、『格闘家』は近接物理が使えるってこと?」
「あながし間違いではないけど、別に『剣士』だって魔法使えるし。ただ適正にならないから威力が下がったりポイントの消費量がエグくなったりするんだよ」
「へーなるほどなー」
「風牙さんは先程その木刀を使っていたので『剣士』がおすすめだと...」
「まぁ、一理あるよな…」
俺は悩んでいた。おそらく、最初で最後のジョブ決めになるだろう。バランスの良い『剣士』にするか、魔法で後衛で活躍の『魔法使い』にするか、前衛抜群の『バーサーカー』にするか、悩みどころだった。だが、答えは割と早く決まった。
「んじゃ俺は『剣士』にするよ!」
「『剣士』か、まっ悪くないと思うよ」
「お似合いだと思います!」
「よし!決定だ!」
そう言いプロフィールからジョブを設定した。すると、注意書きが出てきた。
“本当に『剣士』でよろしいですか?”
(やっぱり1度きりのようだな...ん?したにもなにか書いてある?)
“ジョブは今後も変えられます”
「ーーーー」
なんなんだよーーーー!そう叫んでしまいそうな気持ちだった。
「次はスキルについて説明するね」
「...よろしく頼む」
「スキルもジョブ同様、SKLポイントでレベルアップや取得ができます」
「ジョブによってスキルが違ったりするのか?」
「そうじゃないわ。各分類に別れていて、『剣術』『体技』『魔法』『ステータス』『日常』の5つがあるの。でも歴史では人によって項目が増えたりするんだって」
「なんで増えるんだ?」
「言い伝えによると、この世界にある7種の神器のいずれかを手に入れ、神と契約すると増えるだか増えないだか…」
「7種の神器...どこにあるか分かるのか?」
「さぁね、武器の中ではトップクラスの強さを誇っている伝説の武器だから」
「なるほどね...」
「そんなことより、スキルスキル!なんかひとつ覚えてみるといいわ」
「そうだな...これかな?『剣術』の、んーなんて読むんだ?」
「文字読めないんだったね、これは『ライジング』よ。『剣術』スキルの初めに取得出来るスキルで、内容は近距離の敵に突進で攻撃だった気がするよ」
「なるほど!んじゃこれで」
選んでみると、体の周りに青い円が書かれた。そして次第に円は小さくなってきて体に溶け込んだ。
「これで取得完了ね」
「サンキューセルザ!助かったよ」
「なんのこれしき!」
「せっかく使ってみたいところだけどーーもう夜だし明日にしようかな」
「そうした方がいいかもしれないですね」
「そうだな。んじゃ明日またお願いな」
「いつでもどうぞ!あっ、あとこれ」
「なに?この紙」
「文字の基本と読み方が書いてあるから」
(フリガナも同じ文字で読めないんだけど)
[お困りかね?]
(この声は!?カミサマ!)
[いい加減漢字でお願いしたいが...そこはご愛嬌でいいだろう。字が読めないそうだな]
(声に出さなくても話せるのか?)
[そうだ。これもお前が成長したおかげだ]
(そうなんすかね)
[流石に字を読めないのは辛いだろうから何とかしてやろう]
(マジで!?サンキューカミサマ!)
[はぁ、もう少し...いやなんでもない]
その途端俺の頭の中に色々な情報が入ってきた。
(文字がいっぱいだ!)
結局3時間かけて基本を覚えたのだった。
[ったく、文字も読めれるようになっていなかったのか、これから先長そうだなー。ん?その剣は...もしや...間違いないな。こんなこともあるんだねーこれはこれは【創造神】も予想してなかったんじゃないかな〜?]