目覚めは良きものか
「どちらにするのかな?」
「どちらに...」
「そのままの死後の世界か異世界への転生かどちらを選ぶ」
「...異世界で」
「よろしい...それでは楽しんでくれ、新しい人生を!」
「...ん〜?ここはどこだ?」
青く澄んだ空、広い草原、多彩な花、そういうところに俺は倒れていた。
「そうだ...ここは異世界...なんだよな」
信じられなかったが、今はあの話を信じた方がいいだろうと思った。
俺は、峯岸 風牙。ゲーム好きの普通の高校1年生だった。しかし、ある人を助けた代わりに自分の命を落とすという良かったのか悪かったのか分からない死に方をしてしまった。訳あって俺は今、異世界というところにいる。
〜10分前〜
「ん?ここは?」
「おう、目が覚めたか」
「見たことない場所だ...」
「そりゃそうだろう。ここは生死の狭間というところだ」
「せいしのはざま?」
「そうだ。死んだものが完全に死ぬ前に必ず通る場所になっている」
「そうなんですか...っていうことは僕も死んでしまったと」
「んまーそうなるな。ひかれそうになった女の子を命を犠牲にして守ったんだ悔いはないだろう?」
「まぁ、そこまで無いですね。強いて言うならもう少し生きてたかったですね成人までは」
「まぁ起こってしまったことは仕方がない」
「はぁ」
俺は色々と疑問があった。ここはどこにあるのか、目の前の人は誰なのか、今後どうなるのか、気になっていた。
「そういえばまだ名乗ってなかったな。まぁなんというか…神様みたいなものだ」
「?カミサマ?」
「そのように呼んでくれると楽だろう」
「わかりました」
「そして私がお前と話しているのは他でもない。今後のことについて選択肢を与えようと思う」
「今後の選択肢?」
「そうだ。君には2つの選択肢がある。1つはこのまま死後の世界に行くこと。そしてもう1つは、他の世界つまり異世界に転生することだ。」
「異世界?」
「そうだ。君が住んでいた地球や日本とは違う世界に値する所だ」
「詳しく教えてくれませんか?」
「詳しくは教えることは出来ない...が、元の世界との相違点だけは教えてやろう」
「お願いします」
「まず、違う点がほとんどだ。お金の単位や硬貨も違うし、法律やルールも違う。例えば、日本では男は18歳、女は16歳から結婚していいことになっているが、この世界では男は16歳、女は14歳からになっている」
「なんでだよ!」
「この世界を創った奴がそうしたんだ。他にも魔法が使えたりスキルなども使える」
「魔法?スキル?」
「んまーゲームのような世界だな」
「なるほど...」
「それに比べて同じ点といえば…全員に恋心がありしっかりとした人間らしい感情がある」
「はぁなるほど」
「さて、どちらにする?」
「どちらに...」
「そのままの死後の世界か異世界への転生かどちらを選ぶ?」
「...異世界で」
「よろしい...それでは楽しんでくれ、新しい人生を!」
ということだ。なので俺は現実世界で1度死んでまた違う世界で生き返ったということだ。なんという不思議なことだとずっと思っている。
[.....ん。....くん。..ぎしくん。峯岸くん]
「だれだ?」
[私だ]
「か、神様でしたか」
[これから旅をするにつれて最低限の必要なものはお前さんに渡しておいた見ておくんだぞ]
「どこに渡したんですか?」
[この世界はゲームに似ている。それがヒントかな。まっ、せいぜい頑張れ]
「あっちょっと〜!んまーいいか。多分指をこう開けば…」
フィン
「お!ストレージが開けた!すげーマジでゲームじゃん!んで中身は?...金と服?」
俺は神様から貰った服を着ることにした。
「これは〜初期装備ってやつかな?」
能力欄だと思われるところには『жф5%up』と、書いてあるから何かのステータスが5%増えたのだろう。値的に初期装備のような気がした。
「これがマップか!なになに〜?...道はわかるけど文字が読めねぇな〜まっ、とりあえず1番近いこの街に行ってみるか!」
そうして俺は異世界生活の第1歩を踏み始めたのだった。
[生まれ変わったんだ、楽しい人生を楽しく歩んでいくといい。そしていつか超えて見せろ…【創造神】ランドロスを!]
現実で言ったら5km程だろうか、近くの街に到着した。辺りを見渡してみると、見たことない文字だらけで頭がおかしくなりそうだった。
(まず最初にやらないといけないことは文字の読み書きだな...)
この世界で初めての街を眺めていた。景気は良さそうで安心できる場所だった。初めの間はここを拠点にしようと考えた。
ドスッ!
「?!痛ってぇなー!」
「す、すみません。わざとじゃないんです」
ガタイのいい男と、か弱そうな女の子がぶつかった。
「てめぇ目ついてんだろうな?ちゃんと前向いて歩けよ!」
「...」
「おら!なんか言えよ!」
男が女の子に殴りかかろうとしていた。これはヤバい!と思って、すかさず手を出しに行った。
パシッ!
「まぁそう怒らないで。悪気はないんだし許してあげなよ」
「はぁ?てめぇ誰だ!この俺様に楯突くっていうのか?」
男はすごい目で見てきた。
(おそらく、ターゲットを俺に変えたな...)
そんな時周りの声が聞こえてきた。
『あいつ馬鹿じゃないのか?』『みろ!“どつきのラルガー”だ!』『あの少年殺されるぞ』
(?!そんなにやばい相手なの?俺大丈夫かな〜?)
[これからの世界では、ステータスが必要不可欠になってくる。もちろん自分で上げていくのが普通なのだが、君の初期ステータスは恐ろしく強いだろう。余程なことがなければ最初は死なないだろう]
(んでも、カミサマは太鼓判を押してくれたからなー...信じてみるしかないか)
「やるならやりますよ?」
「ほほぅ。度胸だけは100点だな。だが、答えは0点だ!」
そう言い男は、顔めがけて右手で殴りかかろうとした。
(どうするどうするどうする!受け止めるしかないか!)
俺はその拳を右手で止めようとした。
バシッ!
見事にピタリと止めることが出来た。
「なっ、俺様の拳を...」
「ほい!」
最後まで聞かずに、そのまま投げ飛ばした。
ガッシャーン!
「悪いことは言いませんから降参してくださいよ」
(ちょっと調子乗りすぎたか?)
『あいつすげー』『誰だあいつ』
「ただの通り過ぎの旅人です」
『旅人バンザイ!』
そう言って俺のことを祝福してくれた。カミサマ効果と言えばそうなのかもしれないがなんかちょっぴり嬉しかった。しかし、そう思っていると男は飛ばされた瓦礫の中から起き上がってきた。
「てめぇ...良くもやってくれたな!今ここで殺してやる!」
(あそこまでされてまだ立つのかよ!)
俺はびっくりして1歩下がってしまった。それが凶となり、男が一瞬で目の前に移動してきた。
「はや...」
ドカーン!
最後まで言う前に相手の拳を腹部に食らっていた。
「ガハッ!」
そして瓦礫の中に飛ばされた。腹部がとにかく痛い、この世界でも痛みは変わらないようだ。
「こんな所でスキルを使う気はなかったんだけどな…相手が相手だからな」
「スキル...」
[魔法やスキルが使える]
(そんなこと言ってたっけな)
とにかくこの場をどうにかしないといけないと思った。瓦礫の中から出ようとしているとあるものを見つけた。
「...木刀?」
その見た目は木刀に似ていた。俺はそれを手に取って瓦礫の中から出た。
(とにかく武器になるものがあれば十分だろ!)
「ほぉー、そんな木刀ごときで俺様と戦おうと?ははは!随分舐められたものだな!」
「別に。舐めてはいませんよ?」
「俺様は“どつきのオルガー”だぞ!」
(いや知るかよ!)
心の中で突っ込みながらも相手に集中した。
おそらく、最初の殴り方を見てみる限り一撃で仕留めようとしてくるはずだ。だから、一撃目を受け流して、その勢いで殴る。そういう作戦で行こうと思った。
「舐めるなーーーーー!」
男が走ってきた。おそらく一撃目は今まで通り右で殴ってくると思っていた。俺はそれを右手の木刀で受け流してその流れで殴ろうとしていた。
シュッ!
(読み通り!右手で来た!)
予想が当たり作戦をすかさず実行する。
「はーーーー!」
「何!受け流しだと?!」
「トドメだーーー!」
ドカーン!
結果、見事にオルガーを倒すことが出来た。
『パチパチパチ!』
周りからは拍手が起こる。
(なんか恥ずかしいよ〜)
「あのー」
「ん?」
声をかけてきたのはあの女の子だった。
「助けてくださりありがとうございます」
「いやいや、当たり前のことをしたまでだよ」
「あなたは?」
「峯岸 風牙、あっ風牙が名前ね」
「風牙さん、本当にありがとうございます。なんとお礼をすればいいか」
「お礼はいいよ。その代わり近くの宿を教えてくれないかな?どうしても今日中に確保しておきたいんだ」
「それなら、私たちが泊まってる『郡商』に行きましょう」
「さんきサンキュー助かるよ…えっとー」
「エルザです。エルザ・サキュレットって言います」
「宜しくねエルザ」
「はい!」
そんなこんなで宿を教えてもらうことになった。