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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

血牙の貌

作者: G村 サトシ

こんにちは。高一で、妄想のみで小説を書いております。小説については、趣味でやっています。基本は紙に書いており、今回は、電子だと書きやすいかな?と思って投稿してみました。拙い文章ですが、ちょいと見て頂ければ嬉しいです。

ふと見ると、目の前のガラス窓の向こうに、奴の姿が見えた。返り血に顔じゅうを真っ赤に染め、汚れた悦びに満ちたその姿を!俺は見た!


ーー血牙……!


ーー血牙とは、静岡県H市中区で二年前に発生した、私立中学校児童殺害事件の犯人のことである。事件後、彼は県警察に逮捕され、現在は市内の少年院で保護されているはずだった。

私立専修中学校で女喰の宴が開かれたのは、一昨年の八月のことである。県内有数のエリート校である専修中学校では、高等学校入学を控えた第三学年全体に対し、学習ゼミが開かれていた。校舎3階に集まった生徒たちは、みな、新生活への不安や希望を胸に、勉強に勤しんでいた。輝く日光に照らされ、明るく楽しむその姿に、萌芽した草花の歓びが満ちていた。

事件が起こったのは二五日。丁度、ゼミの最終日であった。

その日の午後一時、昼食どきを迎えた生徒らは、校舎二階の食堂へと向かった。はじめに、すっかり腹を空かして

いる活発な男子どもが、堂内に突入。すると、そのなかには、ひとりの女子生徒の骸が、見るも無惨な姿で遺されていた。

彼女の名前は、白峰ユキ。男子たちの憧れの的で、才色兼備の少女だった。そのからだは絞られたようにねじれ、口元から吐瀉物が溢れ出ている。背中はバックリと引き裂かれ、なかの骨はすべて取り除かれていた。彼女の身に着けている紺青のセーラー服は、汚れた殺意の餌食となり、ドス黒い赤に染まっていた。

「ユキさんッ」

少年らのうちひとりが、遺体のもとに駆けつけた。

「なんで、なんで、なんで………!」

まわりの少年らも、目の前の惨状に戦慄し、かつ狼狽した。彼らはみな、恐怖を前にし、心の深淵から震えあがったのだ!全員のからだはゾッと毛を逆立て、ひとりひとりの顔に、驚愕の刻印が焼きつけられた。

「な、なにを、シインとしてやがる!はやく助けろよっ」

ユキの側に向かったひとりが、泣いているような声で、仲間に呼び掛ける。おう、と応えた彼らも、やはり怯えきっていた。彼らは、おそるおそる遺体のもとに近づくと、

ワッと叫んだ。ユキの開かれた背中の内を見たのだ。

そこには、一本の、獣牙が突き刺さっていた。その大きさはおとなの拳ほどで、ややずんぐりとしており、長さ二○センチほどのそれは、先端を鋭利に尖らせ、背中の肉の層を、抉るようにして貫通していた。そして、その身には甘ぐさい白液が粘り着いており、何本ものドロドロとした糸を、鮮紅色の破れ絨毯に垂れていた。

少年たちはそれを見て、慌てて食堂から飛び出した。

恐かったのだ。あの、無垢の百合に喰らいつく雄の昂りに、心臓を噛み砕かれる悪夢を、生々しく演出されたのだ。彼らは、冷徹な獣心に、総身を蹂躙されていた!

「……血牙」

閉ざされたドアに向かい、誰かがそう呟いた。簒奪のあとは、そのなかに、永遠に封印された……。そして、部屋のなかに息づく狂獣の姿を、少年たちは、ハッキリと感じていた。


ーー当時、ユキの傍らで咽び泣いていた俺は、今、あの恐怖の前に、再び立っていた。ほんの数歩先に、獣がいるのだ。片方の牙を失い、やがてくる殺戮を目の前に暗示した、マッドマンがーー。

「血牙……!」

俺は武者震いに襲われた。今日のために、俺は泣きながら日々を過ごした。哀しみになぶり倒されてきた。復讐のために、毎日、毎日、包丁を研ぎ、鳥を斬って殺害の練習をした。

ーー俺の心にもまた、いつしか獣が棲んでいたのだ。

……窓ガラスが、ピシッと叩かれた。それを合図に、俺は窓へと突進した。

ーーヴァガリャンッ!

ガラス片が飛び散り、俺のからだは、屋外へと踊り出た。その刹那、宵闇の町に、野太い咆哮が轟いた……。

ーー数日後、俺は県警察に捕まった。家の前を通りかかった少女を殺していたのだ。そして彼女は、かつての同級生だった。あの日は俺の誕生日で、彼女は、菓子包みを脇に抱えたまま、腹部を突き刺されて絶命したのだ。俺は、そのとき、なぜか、サディスティックな快感に、身を震わせていた……。




俺は、話をひと通りし終えると、刑事さんのほうを見た。

「……これで以上や。おもろい話だったら?へへへ……」

力なく言い終えると、ガックリとうなだれる。

「全部、きみがやったんやな……きみが」

刑事さんは缶コーヒーを飲みながら、諦めたような、かなしい表情で呟いた。

「そう。俺がふたり、殺った」

俺は言った。そして、右腕を見る。今まで繰り返してきた薬物投与のあとが、青アザとなってのこっていた。

「なあ、きみ……人間ってのは、そんなクスリで牙を剥くんかな」

警察さんが、窓の外を見ながら、言った。

「どうして、獣になっちまう?」

「……満ちていたいから」

そう返した。欲しいものを欲しいだけ手に入れる……それが人間の本性なのだ。ーー刑事さんは、相変わらず暗い表情を浮かべながら、やがて面談室から出ていった。


少年院に、夜がきた。女のからだを、喰うのだ。肉の簒奪がはじまる!

満たしたいのだ。俺はまだまだ、このからだを満たしい。

「……女子寮、どこだっけなあ……」

俺は、自分用の部屋を抜け出し、暗黒の廊下へと歩んだ。

ーー背徳の闇夜に、涙の絶叫がとび交った。(完)

へたくそな短編(もはや短編というより掌編)をお読み頂き、ありがとうございました。また作品を投稿してみようと思います。今度は、原稿に書いておいたもの、かな?

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