古物語 ぼっち王女の社交界デビュー
2話目です!
春休みがおわったら、投稿ペースは落ちると思います。それでも読んでいただけたら幸いです。
ニーナの、「出来ましたよ」という言葉にハッとして前を向くと、髪の毛と同じ真っ赤なドレスを身にまとった小さな少女が目に映った。
リリエッタは、小さくため息をつき、今日の夜会の情報を確認することにした。
夜会はごくごく小規模だが、各国の重要人が訪れる。まず、『リズ』からは、第一王子、第二王子、王様と王妃様の四名である。次に、『ロキ』からは、第一王子、第一王女、第二王女、第二王子、王様と王妃様の六名。最後に、我が国『ラビ』からは、兄三人と、父と義母、そして、本日社交界デビューのリリエッタの六名である。
ちなみに言っておこう。リリエッタ、今、9歳である。
ガヤガヤとした会場に入ると、リリエッタを見て、ざわついた。そりゃそうだよねー。と思いながら、自分の素性を話すリリエッタであった。
まあ、初めて見る王族の令嬢。しかも赤毛であれば、誰の子かと騒がれてもしかながない。
正直にいうと、今日の大ニュースは、リリエッタの登場だろうと、『ラビ』の王族と使用人達は考えていた。リリエッタも例外ではない。しかし、数分後には『ロキ』の隠し玉にもっと驚くこととなるのだった。
リリエッタの挨拶が終わった頃、とうとう国々の頂点に立つ六名が入場してきた。それをにこやかな拍手で迎える人々を見ながら、リリエッタは、
(お腹の狸は何を考えてんだろうね〜)
と、令嬢らしからぬことを考えていたが、それも、彼女の今までの生活を考えれば仕方がない。なにせ、トクベツなことがない限り外には出してもらえない監禁生活だったのだ。当然のように家族からは無視をされ続ければ、さすがに性格はひん曲がるというもの。
夜会も中盤、『ロキ』の王様と王妃様が出てくると、王様が威厳のある声で、
「みんなに、ぜひ、聞いてもらいたいことがあるのだ。酒の肴にでもしてくれ。私には、隠し子がいる!」
あたりは…ざわつかない。ほぼ全員が王族らしからぬ顔をしている。正確に言うと、ポカン、と口を開けた間抜け面である。それはもう、その顔をしていない、『ロキ』の王族と、ニーナと、リリエッタが吹き出すのを我慢するのに苦労する程度には。
これくらいでは驚かない、リリエッタである。そのリリエッタを面白そうに見ている二人には、吹き出すのを我慢しているリリエッタでは気づくことができなかった。
『ロキ』の王族の発表の後、登場した隠し子は、名前はヴィルレッド、もう少しで11才という、キュートボーイであった。女性達から、黄色い声が聞こえたのは、気のせいではないだろう。
初めての夜会で疲れたリリエッタは、テラスへ出て行った。一人で、である。家族は、彼女に、いっそ死んでくれ。と思っているし、ニーナは侍女のため、とても忙しいのだから。
ほんのすこしの一休み、のつもりが、先客がいたようだ。
「あら、これはこれは。ヴィルレッド様ではありませんこと。先程の登場、とても驚きましたわ。」
おほほほほほ、と笑いながらもリリエッタ、冷や汗ダラダラである。リリエッタとヴィルレッドの年の差は、約二才。
二人っきりでいるところを見られたら…。きっといらぬ誤解を招き、リリエッタには破滅の道しかなくなってしまう。そう考えて、やんわりと会場に戻ろうとすると、
「ほう。驚いていた…とな?それならば貴女は随分と表情に乏しいのだな。私には吹き出しそうに見えたが…。まさか、王女サマがそんな嘘なんかつくわけないよなぁー…。」
ヴィルレッドが余計なことを言い始めた。リリエッタはまずい、と感じた。これは話が長くなる。そう感じた彼女は、
「えぇ。そうなんですの。いつも損をしてばかりデスワー!それでは、ゴキゲンヨウ!」
やけに早口でところどころカタコトになりながらも立ち去ろうとすると、面白そうに鼻を鳴らしたヴィルレッドがリリエッタの顎をぐいっと掴むと、腰を引き寄せ、耳元で、
「貴女は、本当に面白い。ぜひ、我が国の、私の妃となり、生涯私を支えて下さい。」
と、やけに熱っぽく囁いた。先程からの豹変ぶりに驚くとともに、リリエッタは、その得体の知れない感覚に、背筋がぞわりとし、反射的に ゴンっと 頭突きを繰り出した。
ヴィルレッドは、かなりのイケメンである。きっと女に拒まれたこともなかったのだろう。顔を真っ赤にして、
「きっ、貴様っ!私は王族であるぞっ!こ、こんなことをしてっ、許されるとっ!思っているのかっ!」
と、わかりやすく取り乱し始めた。その様子を見たリリエッタの反応はと言うと、
「私も王族なんですけど…」
という、至極真っ当なものである。
その指摘を受けたヴィルレッドは、
「ぜっっったいに!お前を!落としてやるっ!」
と叫んで立ち去った。リリエッタは、なんか疲れたなぁ〜〜、と、呑気に考えていた。
今回登場したヴィルレッドは、黒髪にする予定です。まぁ、後々、自己紹介の回を作らせていただきますので、しばらくお待ちください。
そのうち、リリエッタ目線とかも作りたいと思っています。