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■ 熊本3・北 ■

相変わらず亀のようなペースで申し訳ありません。

 携帯ショップで貸してもらった電話から自分のスマートフォンに連絡を入れた太一であったが、残念ながら相手は電話に出てくれなかった。もう一度試してみようかと思ったが、少し時間を空けてから掛け直すことにして、太一は借りていた固定電話を店員の中塚さんに返した。店内で待っていても仕方がないので、中塚に会釈をした後、一旦店を出た太一がアーケードを見渡すと、すぐ目の前にある赤地に黄色いmの字が特徴的なハンバーガーショップの看板が目に付いた。そういえば、起きてからまだ何も口にしていなかったということを思い出し、店の外まで並ぶ行列の最後尾に並ぶことにした。流石は日曜日のお昼時ということもあって、なかなかの混雑を見せているが、レジの奥で忙しなく働き続ける店員たちのおかげで、行列は割とスムーズに進んでいった。十数分ほど待つと、ようやく太一の順番が回ってきた。

「いらっしゃいませ、店内でお召し上がりですか?」

「あ、はい。えっと……」

 並んでいる間は普通のハンバーガーを食べようと思っていた太一であったが、いざレジの前に立つと奥から漂ってくるポテトの良い匂いが食欲をそそり、もう少し豪華なハンバーガーが食べたいと思ってしまった。しばらく逡巡して、結局二段重ねのバーガーをセットで注文することにした。飲み物は、そうだな、コーラにしよう。

「六百九十円になります」

 提示された値段をみて、そういえば小さい時、ハンバーガーが異常に安い時期があったな、なんてことを思い出しながら、太一は千円札を財布から取り出して店員に差し出した。大森という名札を付けたメガネの女性店員が、ニコリと微笑み、それを受け取る。

「千円お預かり致します」

 いつの間にやらハンバーガーも高くなったな。そもそも、太一が購入したハンバーガーは昔から値段は高かったと思われるが。大森から渡された三百十円のお釣りを受取りながら太一が考えていると、程なくしてバーガーやポテト、飲み物がトレイの上に並べられた。大変お待たせいたしましたと、大して待ってもいないのに深々と頭を下げられながらトレイを受け取った太一は、ひとつ上の階に上がり空いている席に腰をおろした。トイレで入念に手を洗ってから席に戻り、冷めてしまう前に二段重ねのハンバーガーを太一はペロリと平らげる。うむ。久々に食べたがやはり美味い。続けざまにポテトを頬張りながら、ふと店の中にある時計を見ると、携帯ショップで太一が自分のスマートフォンに連絡をしてから三十分と少しが経過していた。そろそろ、もう一度電話をかけてみようか。しかし、電話を掛ける手段が今の太一にはない。この辺りに公衆電話はあっただろうかと考えを巡らせると、近くの百貨店の中には少なくともあったような記憶があったので、コーラを一滴残らず飲み干してから太一はハンバーガーショップを後にした。

 百貨店に入り、総合案内所で公衆電話の場所を尋ねると、横瀬という肩下まで伸ばした黒髪が綺麗な妙齢の女性はやはりニコリと笑って、太一の後ろ側を指さした。

「しばらく真っ直ぐお進み頂いて、中央玄関のすぐ近くに公衆電話がございます」

「ありがとうございます」

 太一がそうお礼を言って頭を下げると、横瀬もペコリと礼をした。彼女の言う通りにしばらく歩いていると、左手に中央玄関が見えてきた。出入り口の扉のすぐ近くに緑色の公衆電話が設置されているのを見つけ、太一はホッとして公衆電話の受話器を取った。十円玉を入れ、自分のスマートフォンの電話番号のボタンを押すと、程なくして呼び出し音が鳴り始める。今度は繋がるだろうかと不安に思いながら、四コール目くらいでプツリと呼び出し音が途切れた。

「もしもし……?」

 受話器の向こうから若い女性の声が聞こえてきたのを聞いて、太一は心の中で小さくガッツポーズをした。

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