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■ 京都2・南 ■

10ヶ月ぶりの続きです。この次くらいまで書けているのでまた近い内に更新できると思います。

 日曜日でしかも春休みでもあるその日の京都駅は人で溢れていた。前を向いても、後ろを向いても、右も左も人、人、人。これがすべて人ではなく虫だったらとても気持ち悪いだろうななんて想像して、もしかしたら空から自分たちを眺めている神様は我々人類のことを岩陰で蠢く虫の大群のように不快に感じているのかもしれないなと思った。ホームから階段を上がり人混みを掻き分けるように進んでいると、改札口を見つけたので外に出る。何処で時間を潰そうかと考えて、ふと待ち合わせ場所を決めていなかったことに気が付いた。しまったな。まぁ、彼女もそのことにはすぐ気付くだろうし、何かあれば公衆電話などから連絡を入れてくれるだろう。あるいは、三十分程して連絡がなければこちらからもう一度電話を掛ければ良いだけの話である。ただ「市場」という場所から京都駅までどれくらいかかるのか分からないので、電話を掛けた時にまだ電車の中だったら申し訳ないな。もしも自分のスマートフォンがあれば、電車の時間を調べることもできるのだが。あるいは、和也の方が「市場」までの行き方を調べて向かうこともできたはずだ。それにしても、京都にも「市場」があるんだな。東京では来年にも閉鎖される築地市場や移転先の豊洲市場についてのニュースが日々報道されているため、「市場」というとマグロのセリなど魚介を扱う場面が連想されるのだが、はて、京都に海はあっただろうか。学生時代に教えられた朧気な日本地図を頭の中に描いてみると、京都の北の方、突起状の半島部分が日本海に面していたように思い出されるのだが、でも修学旅行なんかで京都を訪れても海を見た記憶は全くなく、むしろ四方を山に囲まれていたような気さえした。だから多分、少なくとも京都市には海が無いのだろう。和也の生まれ育った唯町というところも四方を山に囲まれた盆地だったので、和也は京都市になんとなく親近感を覚えた。なんて言うと、「あんさんとこみたいな田舎町と一緒にせんといて」と京都弁で罵られてしまうかもしれない。いや、あくまで想像であってそもそもこれが京都弁として正しいのかも分かっていないけれど、京都の女性はなんとなく冷たくて近寄りがたい印象がある。それこそ、偏見だとは思うけれど。いや、きっと京都の女性だって優しいと信じたい。

 不意に、ブーッとスマートフォンが振動した。表示されているのは、見覚えのない電話番号。東山さんかな、と思ったがすぐに違うと考えた。番号の始まりが携帯電話の番号から掛かっていたからだ。しかし、その考えもまた間違っていることに和也はすぐに気が付いた。「090」で始まっているかと思った電話番号をよく見ると、「096」で始まっていたのだ。これは一体何処の市外局番だろうか。東京が「03」、大阪が確か「06」だ。北から南に行くごとに数字が大きくなると考えると、仮に東山さんからの連絡であれば大阪の市外局番に近い番号になるのではないだろうか。関西の他の地区の市外局番を詳しく知らないが、少なくとも前後の「05」や「07」はありえても、「09」で始まることは考えにくい。ということは、さらに南の方──九州? しかも三桁目が「6」ということは、その中でも真ん中くらいに位置する、熊本か大分か、あるいは長崎か。

 そんなことを考えているうちに、電話は切れてしまった。しかしながらあの電話番号であれば少なくとも東山さんからの電話では無いだろうし、残念ながらパスコードが分からずロック解除ができないため掛け直すこともできない。仕方がないと諦めた和也は周囲を見渡して、何となく改札を出て右手側の方角へ歩いてみることにした。何処か時間が潰せる場所があれば良いのだが。

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