助走~失恋のイケメン
「タケシ君……なんか変わったね」
亜里沙は言った。
「ん、そうかな」
ハンバーガーをむさぼりながら僕は少し照れた。道場帰り、僕は今亜里沙と学校近くの喫茶店に来ている。
「そう思うだろ?もっと喜べよタケシよ!」
残念ながらトオルも一緒である。
あの事件から半年、亜里沙は少しは元気を取り戻したようだ。入院していたことで進級が危ぶまれたが、亜里沙も無事2年生だ。
「タケシ君は進級残念だったね……」
「仕方ないさ。もう一年優雅に学校生活を楽しませてもろうよ」
と強がってはみるもののやっぱり留年は身にこたえる。
それに、
「トオルもちゃんと友達守んなきゃ!」
「しょうがねえだろこいつが一人で突っ走ったんだよ……」
こいつら……
「ほんと見た目ほど頼りになんないのよねートオルは」
付き合ってるのだ。世の中ほんとに辛いものである。
「二人とも仲良くな」
がっかりしてないと言えば嘘だが、この二人ならいいかという気になっているのだ。
僕が入院している間、トオルは僕の見舞いにも亜里沙の方にも気を配って奔走してくれていた。そんななか、亜里沙から告白されたトオルを責めることは僕にはできない。
トオルはかなり悩んだようだが、僕は断固として付き合うことを勧めた。トオルが彼女を悪からず思っているのはわかっていた。
最終的に、彼女を不幸にするなら相手がトオルでも殴りこみをかけると僕は言いきってトオルを納得させた。
今でも複雑な思いはある。
しかし二人の楽しそうな顔を見ると、不思議と僕も顔がにやけてしまうのだ。