停滞~乱れる心とイケメン
僕はカラオケに来ていた。
今や由香里との関係にどっぷり浸かってしまっていた僕は、三日とあけずに彼女と会っていた。
「あ、ああん――――!!!」
肢体を絡め、躍動するこの瞬間だけが、僕を苦悩から解放してくれた。
〇
「顔色悪いですね」
セイヤが僕の顔を覗き込んで言う。
「あまり思いつめないほうが……」
「いや大丈夫だ」
懸案事項だけでなく、最近の不摂生もどうやら体を疲弊させているらしい。
そもそも僕には身に余る事態が多すぎるのだ。
今日は電脳部室での戦略会議だ。
僕とセイヤと佳澄、それにユウイチと、彼が引き連れてきた格闘技をたしなむという屈強な同級生数人が円座でケイトの到着を待っていた。
「みなさんおそろいですか」
ケイトは部室に入るなり僕らを見まわし、その面々に少し満足したようにうなずいて席に着いた。
「だいぶ体裁が整ってきたようですね」
ケイトはパソコンを開くと現在までの情報を確認し始めた。
「協力者は内外に広がりつつあります。いざ事を起こせば彼らが協力してくれるでしょう」
ユウイチとヒロさんのつてで仲間は着々と増えてきている。彼らは直接的な行動に出てくれる期待はないが、Gに関する情報をその内部の知り合いや関係者から横流ししたり、脱退させることで自然崩壊を促してくれている。
とはいえその効果もたかが知れている。不安要素は限りなく多い。
「そんなもんに期待していいんか」
ユウイチが愚痴る。
「そもそも勝手に行動させたら危ないんじゃないんか」
「そんなことは百も承知です」
ケイトが声高に言い返した。
「そこは信頼できる筋に限っているに決まっています。今はまず組織の体制を揺らがせることです」
ケイトの方針では、徹底的に揺さぶって組織の脆弱性を露呈させ、そののちにあらかじめあぶりだした中枢を一気に叩くというものらしい。
「焦ってはだめです。今はひたすらに我慢の攻めをするんです」
理屈ではなんとなく理解できる。
しかし、ユウイチは納得しない様子であった。
「時間がかかりすぎる!!その間に拉致られた連中がどうにかなっちまったらどうする!」
――不穏。
反りの合わない二人の溝は、この期に及んでもやはり埋まらないままだ。




