停滞~不幸せなイケメン
僕はトオルと例のスナックにいた。
やはり僕が一番相談できる相手はトオルだし、マツダを救出する話が進んでいてもどうしてもうまくいくとは思えない。
「格闘技をたしなんでいるような男を締め上げるようなやつらだ。たがが高校生の浅知恵でどうにかなるもんじゃないと思う」
僕はそう不安を漏らしてコーヒーに口を付けた。
トオルはウイスキーの入ったグラスを見つめて黙っている。
僕は続ける。
「だいたいマツダがいなくなったってのに警察はおろか学校側はどうしてこうも沈黙してるんだ。おかしいだろう。どうなってるんだこの社会は」
まくし立てる僕にトオルは相変わらず視線を落として黙りこくっている。
「なあ、どうしたらいいんだ。マツダやユウイチってやつの友達はどうやったら取り返せるんだ。俺たちじゃやっぱ無理だよ。現実的じゃない。これは高校生レベルのイベントじゃないだろ」
「なあ」
トオルが僕の愚痴を遮る。
「すまないんだが、俺はやっぱこの話は降りる」
「は?」
一瞬何を言っているかわからなかった。
「何言ってんだよ。どういうことだよ」
僕が詰め寄るとトオルは悲しそうな顔をして言った。
「こないだな、Gに拉致られた奴の一人が、まあ知らないやつなんだが、河原で見つかったよ。死体でな」
「……」
「俺はな、亜理紗が心配なんだ。俺があいつの報復に参加すれば、亜理紗にまた危害が加わるかもしれない。亜理紗はそもそも奴らに知られているしな」
「……」
僕は何を言ったらいいか、言葉を失った。
「……無責任じゃないか」
「すまない。俺はこれ以上手伝えない」
いつの間に日和ったんだよ。あのいつもの威勢は所詮お飾りだったのか。何を偉そうに言ってたくせにいざとなったら保身かよ。
「……ああ。わかった」
何も言えなかった。
僕はトオルに憤り以上に、恩が多すぎた。
トオルが帰った後、僕はしばらくぼーっと席でうなだれていた。




