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上昇~月光のイケメン

 「君って、いわゆる直情型よね」

 由香里にそう言われて僕はちょっと考えてしまった。

 「そうでもない」

 「そうよ絶対。考える前に行動しちゃう人」

 

 そういうところは、否定できない。

 実際亜里沙に手を出したマサキに突撃した時もそうだったし、佳澄にちょっかいを出した阿呆に一発お見舞いした時もそうだ。そもそも僕がイケメンを目指すきっかけになった事故だって、周りが見えていなかったからといえばそう。


 「なに考えてるの?」


 僕だって考えていないわけではない。しかし、考えが及ぶ前に慌てふためいてしまうところがあるらしい。これはなんとなく気づいていたことだが、まじまじと意識はしなかった。直情型と言えば聞こえは良いものの、つまるところ不器用なやり方をしてしまうのだ。


 「やっぱり、そうなのかな」

 「ちゃんと考えるの。作戦立てなきゃ」

 でも苦手ではある。そういう考え方のノウハウというのは、僕の手札にはあまりない。

 

 「そういうときは、そういう人を集めればいいの。大丈夫よ。君ならちゃんと、あっ――」


            ○


 由香里を送って行ったあと、少し冷える夜道を歩きながらまた考えた。

 僕も少しは忍耐を覚えたし、腕力には自信がついた。それに女の子とも付き合いが増えてきた。

 

 でも、先を見通せない。

 なにかしら実力が付けば、いろんなことが見えるようになるのではという期待があった。世の中実力次第で自在に渡れるようになる。そんな妄想があった。

 だからかつてはイケメンを見るにつけ、自在に世の楽しみを渡り歩いているようにも見えたものだ。


 それが、だ。

 今こうして人の評価を受けるようになってみて、それがすべてではないことに気付いてきた。力は力、イケメンはイケメン、ただの道具にすぎないのかもしれない。僕がマツダの件についてどうにもならない袋小路につまっている原因が、少しわかりかけてきた。

 

 月にかかる雲の静かに流れるのを眺め、僕は今何が必要なのか考えた。



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